大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和5年度(2023年度)追・再試験
問54 (日本史B(第4問) 問5)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和5年度(2023年度)追・再試験 問54(日本史B(第4問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

高校生のチカさんとノブさんは、日本史の授業で、江戸時代の文芸や演劇と歴史的な出来事との関連をテーマとする発表を行うことになった。事前学習の内容をまとめた次のメモと、二人の会話を読み、後の問いに答えよ。(史料は、一部省略したり、書き改めたりしたところもある。)

メモ

評判になった文芸や演劇
1688年:浮世草子『日本永代蔵』が刊行される。
関連する歴史的な出来事
1673年:三井高利が江戸に呉服店を開く。まもなく両替店も開く。

評判になった文芸や演劇
1715年:大坂で人形浄瑠璃『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』が初めて上演される。
関連する歴史的な出来事
1661年:清に抵抗していた鄭成功が台湾に拠点を置く。

評判になった文芸や演劇
1748年:大坂で人形浄瑠璃『仮名手本忠臣蔵』が初めて上演される。
関連する歴史的な出来事
1702年:赤穂浪士(旧赤穂藩主浅野家の遺臣)たちが、主君のかたきである吉良義央を討ち取る。

チカ:現代の漫画やドラマは世相を映し出すって言われるけど、江戸時代の文芸や演劇の中にも、歴史的な出来事にヒントを得て作られたものがたくさんあるね。『日本永代蔵』には三井家の新商法が描かれているよ。
ノブ:『国性爺合戦』は、日本人を母に持つ和藤内(わとうない)が中国に渡って大活躍する物語だけど、この人物も鄭成功をモデルにしているよね。
チカ:歴史的な出来事が長い時間をかけて文芸や演劇になっていく現象にも注目する必要があると思うんだ。百姓一揆の代表者といわれるa 佐倉惣五郎を題材とした歌舞伎『東山桜荘子(ひがしやまさくらそうし)』もその例と考えられそうだね。初めて上演されたのは1851年のことだよ。
ノブ:江戸幕府はb 出版物や思想の統制も行ったから、最新の事件を作品や演劇にすると、弾圧を受ける可能性もあったようだね。
チカ:なるほど。赤穂浪士の討ち入り事件にヒントを得て作られた『仮名手本忠臣蔵』は、室町時代の出来事としてc 時代の設定を移しているけど、それは弾圧を逃れようとする工夫だったのかな。
ノブ:d 読者の側も、作者の工夫や意図を自由に受け止めて楽しんでいたと思うよ。そういうメディアの成長は現代にも通じるものがあるよね。

下線部dに関連して、次の史料2・3は柳亭種彦『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』に関する評判を記したものである。『偐紫田舎源氏』と史料2・3に関して述べた後の文a~dについて、最も適当なものの組合せを、後の選択肢のうちから一つ選べ。

史料2
『田舎源氏』という合巻冊子、世評噪(さわ)がしきまでに行わる。(中略)この人(注1)させる学力はなけれども、狂才(注2)は自余の作者の白眉たること、世の婦幼の評す所也。(中略)おもうに、元禄年間より『源氏物語』を無下(むげ)に俗文に綴(つづ)り更(あらため)て(注3)、婦幼の玩(もてあそ)び物とせしも多かり。(中略)『田舎源氏』は窃(ひそか)にこれらを父母として作り設けたるなるべし。
(曲亭馬琴『近世物之本江戸作者部類』、1834年頃)
(注1)この人:柳亭種彦。
(注2)狂才:一風変わった才能。
(注3)無下に俗文に綴り更て:全く読みやすい文章に書き改めて。

史料3
海舟翁(注4)が去年、予(注5)に語られたる談話の中にも「(中略)あの評判の田舎源氏な、あれは大奥の事を書いたもので、その頃の大御所様は妾(てかけ)(注6)の四十人もあって、子が六十人もあった程の豪奢(ごうしや)な方であった(中略)その事情が精(くわ)しく判(わか)るから面白い。書いたものが皆(み)な活動して居る」とありし如(ごと)く、風刺頗(すこぶ)る巧みにして(中略)天保十三年の改革(注7)にて、種彦其(その)人すら殆(ほとん)ど罰せられんとして、僅(わず)かに免れたる位なりしかば暫(しばら)く斯(この)篇の筆を絶ち居る中、その年の秋、病みて身まかりたり(注8)(後略)
(『校訂偐紫田舎源氏』の「解題」、1898年)
(注4)海舟翁:勝海舟(義邦)のこと。
(注5)予:明治時代の小説家・評論家である大橋乙羽のこと。
(注6)妾:側室。
(注7)天保十三年の改革:この改革は、正確には1841(天保12)年に開始された。
(注8)身まかりたり:死亡した。

a  史料2によれば、『偐紫田舎源氏』は、父母が写して子どもに読み聞かせたことが分かる。
b  史料2によれば、『偐紫田舎源氏』は非常に評判となり、柳亭種彦の著作は女性や子どもにも読まれたことが分かる。
c  『偐紫田舎源氏』が刊行され始めた時期には、幕府が品位を落とした貨幣を大量に流通させて貨幣経済が活発になり、大奥の生活も華美になっていた。
d  『偐紫田舎源氏』が刊行され始めた時期には、大御所徳川家慶の子女の縁組費用や大奥の出費がかさんで幕府の財政がひっ迫していた。
  • a・c
  • a・d
  • b・c
  • b・d

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