大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和5年度(2023年度)追・再試験
問85 (地理B(第4問) 問2)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和5年度(2023年度)追・再試験 問85(地理B(第4問) 問2) (訂正依頼・報告はこちら)

地中海を囲む北アフリカ、西アジア、ヨーロッパは、経済や歴史・文化など、様々な面で結びついている。地中海周辺の地域に関する次の問いに答えよ。

地中海周辺の地域の自然と社会に関する次の問いに答えよ。

北アフリカの農業には、ヨーロッパとの結びつきがみられる。次の図2は、モロッコにおけるトマトの栽培面積と、生産量、輸出量、EU諸国向け輸出量*の推移を示したものである。図2に関することがらについて述べた文章中の下線部①~④のうちから、適当でないものを一つ選べ。
*各年におけるEU加盟国の合計値。2011年はデータなし。

モロッコは、世界有数のトマトの輸出国であり、アルプス以北のヨーロッパ諸国に多くの生鮮トマトを輸出している。その背景には、輸出先との気温や日照時間の違いをいかして、トマトが生産されてきた点があげられる。特に、1990年代以降にEUやヨーロッパ諸国との経済連携協定の締結が進むと、国外からの投資が増加し、2000年代後半以降に輸出量が増えた
1994年と2019年を比較すると、モロッコでは、トマト生産における土地生産性が向上した。また、輸出量全体に対して、EU諸国向けの輸出の割合が高まったことがわかる。
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この過去問の解説 (2件)

01

正答は「④EU諸国向けの輸出の割合が高まった」で、間違った説明です。

 

モロッコはアフリカ大陸の北西部に位置し、ジブラルタル海峡を挟んでスペインの対岸にあります。

サハラ砂漠の北端に位置し、比較的乾燥した地中海性気候下にあります。

選択肢1. ①

正しい記述です。

 

モロッコはヨーロッパ諸国より赤道に近く、日照時間が長いこと、気候が温暖なことにより、トマト栽培にヨーロッパより有利です。

選択肢2. ②

正しい記述です。

 

ヨーロッパをはじめとした先進国がアフリカ諸国にODA援助を進め、高収量種の品種や灌漑施設、化学肥料の普及を推し進めてきました。

こうした支援によりモロッコをはじめとするアフリカ諸国では「緑の革命」という農業生産力の向上を経験しました。

選択肢3. ③

正しい記述です。

 

緑の革命を経て、収穫高の高い品種を栽培することが出来るようになった結果、トマトの作付面積は減少しているのにも関わらず、その生産量は増加しています。

選択肢4. ④

誤った記述で、④が正答です。

 

1994年にはトマトの輸出先は全てEU諸国へ輸出されていますが、2019年時点ではおよそ10万トンほどがEU諸国以外へと輸出されています。

EUではスペインとポルトガルがトマトの生産地として確固とした地位をすでに築いており、そのEU諸国への輸出だけに頼った貿易構造からの脱却をモロッコは目指すようになりました。その結果、モロッコは中央アフリカや中東アラブ諸国への輸出を模索しています。

まとめ

グラフを注意深く読み解くことにより、④の記述がおかしいことに気づくことが出来ます。

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02

適当でないのは、

「④EU諸国向けの輸出の割合が高まった」とする記述です。

 

1994年と2019年を比べると、輸出量そのものは大きく増えましたが、EU向け輸出は全体の伸びに追いつかず、むしろ割合はやや低下しています。

選択肢1. ①

モロッコは冬でも温暖で日照に恵まれ、寒冷なヨーロッパ北部の需要期に新鮮なトマトを供給できます。

この説明は妥当です。

選択肢2. ②

図では2005年ごろから輸出量が着実に上昇しています。

温室施設や物流などへの海外資本の導入と一致し、内容は適当です。

選択肢3. ③

1994年は栽培面積が約2.4万ha、生産量は約100万t、2019年は面積が縮小気味でも生産量は約140万tです。

面積当たり収量が大きく伸びており、土地生産性向上の説明は正しいです。

選択肢4. ④

1990年代には輸出量の大部分がEU向けでしたが、2010年代は輸出全体が増える一方でEU向けは伸びが緩やかです。

割合はむしろ下がっているため、この記述が不適当です。

まとめ

輸出量の増加は温室技術の導入やEUとの協定が後押ししました。

土地生産性の向上は施設園芸の発達や品種改良の成果です。

販路の多角化が進み、ロシアや中東などEU以外への出荷が目立つようになりました。

これがEU向け割合の低下につながっています。


図を読むときは、「量の増減」だけでなく「構成比の変化」にも注目すると、輸出先の広がりや市場戦略の変化が見えてきます。

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