大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問46 (倫理(第2問) 問8)
問題文
Ⅰ 次の会話は、日本思想に関する倫理の授業後に、高校生CとDが交わしたものである。
C:a 理想という言葉について調べることになったんだけど、困ったなあ。そもそも理想って何だろう?
D:改めて聞かれると難しいよね。ある本で理想の意味を調べてみたら、「現実があるがままの姿を指すのに対して、人および物事のb あるべき姿を指し示す言葉」だと書いてあったよ。
C:ということは、c 仏教者や儒者など、日本の先人たちがあるべき姿をどのように考えてきたかを調べてみたらいいのかな?
D:そうだね、一緒に調べてみよう!
Ⅱ 次の会話は、「理想」について調べていたCとDが、日本の近世の思想について先生と交わしたものである。
C:近世ではどんな理想が思い描かれていたんだろう?
D:例えば、伊藤仁斎は、日常において道が実現されることを重視して、日々の生活における人と人との和合が大切だと説いていたね。
C:本居宣長の説いたd 真心も、一つの理想と捉えて良いのかな?
先生:いずれも人間のあるべき姿を追求したものと捉えて良いでしょう。あるべき姿について考えることは、e 日々の生活や、自分の心のあり方を見つめ直すことにつながりますね。
Ⅲ 次の会話は、Ⅱの会話の翌日に、「理想」をめぐる日本の近代の思想について、C、D、先生が交わしたものである。
D:大正時代には、現実をありのままに肯定する自然主義に対して、文学や思想の分野で理想主義が唱えられました。今ある現実を超えてあるべき姿を追い求め、f 理想と現実の間で葛藤した人々の姿が印象的でした。
先生:大事な点に気が付きましたね。実は「理想」という日本語は、近代になってからドイツ語のIdeal(イデアール)を訳して作られたものなのです。
C:Idealの語源はイデアでしょうか?永遠に変わることのないイデアを踏まえて、理想という言葉が作られたのですね。
先生:そのとおりです。西洋の思想を取り入れる中で、g 現実の自己をより深く見つめ、あるべき姿を探求した人もいました。
次の資料は、近代における「理想」の捉え方に関して先生が示したものである。資料を踏まえて交わされたCとDの会話を読み、会話中の( a )に入る記述として最も適当なものを、後のうちから一つ選べ。
資料
理想の理想たる所以(ゆえん)は、それが常に現実の上にかかる力として現実を高め浄(きよ)むる力として、現実を指導して行くところにある。ゆえに理想が理想たるかぎりはそれは現実と矛盾する。理想は現実を歩一歩(ほいつぽ)*に浄化してこれをおのれに近接せしめながら、しかも常に現実と一歩の間隔を保って行く。・・・・・・理想は何物かを否定する、何物をも否定せざる理想は理想ではない。もとよりここにいう否定とは存在を絶滅することにあらずして存在の意義を、存在の原理を更新することである。
(阿部次郎『三太郎の日記』より)
*歩一歩:一歩ずつ
C:理想って、実現できない彼方(かなた)のものだと思ってたけど、資料に「現実の上にかかる力」とあるように、現実に働きかけてくるものなんだね。
D:でもさ、理想が現実を浄化するって、どういうことだろう?
C:それは、理想が( a )ということだと思うよ。
D:なるほど…。「理想」という言葉の捉え方が豊かになった気がするよ。理想について考えることで、私も現実の自分を見つめ直すことができそう。
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問46(倫理(第2問) 問8) (訂正依頼・報告はこちら)
Ⅰ 次の会話は、日本思想に関する倫理の授業後に、高校生CとDが交わしたものである。
C:a 理想という言葉について調べることになったんだけど、困ったなあ。そもそも理想って何だろう?
D:改めて聞かれると難しいよね。ある本で理想の意味を調べてみたら、「現実があるがままの姿を指すのに対して、人および物事のb あるべき姿を指し示す言葉」だと書いてあったよ。
C:ということは、c 仏教者や儒者など、日本の先人たちがあるべき姿をどのように考えてきたかを調べてみたらいいのかな?
D:そうだね、一緒に調べてみよう!
Ⅱ 次の会話は、「理想」について調べていたCとDが、日本の近世の思想について先生と交わしたものである。
C:近世ではどんな理想が思い描かれていたんだろう?
D:例えば、伊藤仁斎は、日常において道が実現されることを重視して、日々の生活における人と人との和合が大切だと説いていたね。
C:本居宣長の説いたd 真心も、一つの理想と捉えて良いのかな?
先生:いずれも人間のあるべき姿を追求したものと捉えて良いでしょう。あるべき姿について考えることは、e 日々の生活や、自分の心のあり方を見つめ直すことにつながりますね。
Ⅲ 次の会話は、Ⅱの会話の翌日に、「理想」をめぐる日本の近代の思想について、C、D、先生が交わしたものである。
D:大正時代には、現実をありのままに肯定する自然主義に対して、文学や思想の分野で理想主義が唱えられました。今ある現実を超えてあるべき姿を追い求め、f 理想と現実の間で葛藤した人々の姿が印象的でした。
先生:大事な点に気が付きましたね。実は「理想」という日本語は、近代になってからドイツ語のIdeal(イデアール)を訳して作られたものなのです。
C:Idealの語源はイデアでしょうか?永遠に変わることのないイデアを踏まえて、理想という言葉が作られたのですね。
先生:そのとおりです。西洋の思想を取り入れる中で、g 現実の自己をより深く見つめ、あるべき姿を探求した人もいました。
次の資料は、近代における「理想」の捉え方に関して先生が示したものである。資料を踏まえて交わされたCとDの会話を読み、会話中の( a )に入る記述として最も適当なものを、後のうちから一つ選べ。
資料
理想の理想たる所以(ゆえん)は、それが常に現実の上にかかる力として現実を高め浄(きよ)むる力として、現実を指導して行くところにある。ゆえに理想が理想たるかぎりはそれは現実と矛盾する。理想は現実を歩一歩(ほいつぽ)*に浄化してこれをおのれに近接せしめながら、しかも常に現実と一歩の間隔を保って行く。・・・・・・理想は何物かを否定する、何物をも否定せざる理想は理想ではない。もとよりここにいう否定とは存在を絶滅することにあらずして存在の意義を、存在の原理を更新することである。
(阿部次郎『三太郎の日記』より)
*歩一歩:一歩ずつ
C:理想って、実現できない彼方(かなた)のものだと思ってたけど、資料に「現実の上にかかる力」とあるように、現実に働きかけてくるものなんだね。
D:でもさ、理想が現実を浄化するって、どういうことだろう?
C:それは、理想が( a )ということだと思うよ。
D:なるほど…。「理想」という言葉の捉え方が豊かになった気がするよ。理想について考えることで、私も現実の自分を見つめ直すことができそう。
- 今ある現実を無条件に肯定することで、日常の苦しみを解消してくれる
- いつでも現実と齟齬(そご)なく合致して、今ある現実の意義を保証してくれる
- 現実のありようを一方的に否定して、現実そのものを消し去ろうとする
- 現実と理想の隔たりを浮かび上がらせ、現実を向上させる原動力となる
正解!素晴らしいです
残念...
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