大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問66 (政治・経済(第1問) 問3)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問66(政治・経済(第1問) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章を読み、後の問いに答えよ。

a 国の法制度b 地方自治に関心がある生徒Xと生徒Yは、自分たちが住むJ市のまちづくりの取組みについて調べている。
かつてc K寺の門前町として栄えたJ市には、多くの観光客が訪れており、K寺はJ市の重要な観光資源となっている。市の中心市街地は、駅からK寺へ至る表参道としての中央通りを中心に発展してきた。駅前には大型店舗が集まり、表参道には個人商店が軒を並べている。また、K寺の門前にはd 空き家などをリノベーションした店舗やカフェが多数立地し、e 地元の農産物を加工した食品を販売している。
生徒たちがJ市のWebページを調べたところ、市が「市街地活性化プラン」を策定し、次のような事業を展開していることがわかった。

<空き家等活用事業>
空き家等を活用し、店舗やカフェ、民泊などの施設として利用する場合に、改修費や設備費を補助するとともに、長期的な安定経営をめざし、経営指導員による継続的指導を行う。

<歴史的街なみ整備事業>
K寺周辺地区の歴史ある街なみを保全し、伝統と文化が感じられる景観を形成することを目的に、まちづくり協定で規定する範囲の景観の整備に対する助成を行うとともに、道路の美装化を進める。

生徒たちはとくに空き家などの活用に関心をもち、空き家やf 民泊に関するg 法律についても、h 立法過程を含め、調べてみることにした。

下線部cに関連して、J市とK寺のかかわり合いに関心がある生徒Yは、「政治・経済」の授業で学習した政教分離原則のことを思い出し、政教分離原則に関する最高裁判所の判例について調べてみた。最高裁判所の判例に関する次の記述ア~ウのうち、正しいものはどれか。当てはまる記述をすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後のうちから一つ選べ。

ア  津地鎮祭訴訟の最高裁判決では、市が体育館の起工に際して神社神道固有の祭式にのっとり地鎮祭を行ったことは、憲法が禁止する宗教的活動にあたるとされた。
イ  愛媛玉ぐし料訴訟の最高裁判決では、県が神社に対して公金から玉ぐし料を支出したことは、憲法が禁止する公金の支出にあたるとされた。
ウ  空知太(そらちぶと)神社訴訟の最高裁判決では、市が神社に市有地を無償で使用させていたことは、憲法が禁止する宗教団体に対する特権の付与にあたるとされた。
  • アとイ
  • アとウ
  • イとウ
  • アとイとウ

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この過去問の解説 (3件)

01

まず前提として、

「政教分離原則」は以下の憲法条文に基づいています。

第20条

国およびその機関は、いかなる宗教団体にも特権を与えてはならない。また宗教的活動をしてはならない。

第89条

公の財産は、宗教団体に対して支出または利用してはならない。

 

この問題、いかにも細かい判例知識の暗記問題のように見えますが、

ポイントは「その宗教的な行為が、国家による宗教支援とみなせるかどうか」という線引きにあります。

 

たとえば、地鎮祭みたいに昔からの習わしとして行っている儀式の場合は、あくまで「形式的」「慣習的」として、宗教的というよりは「建築前の安全祈願的な行事」と見られることがあります。

 

逆に、靖国神社への玉ぐし料のように、特定の宗教施設・宗教的意味合いが強い儀式に対してお金を出したり、土地をタダで使わせたりしていると、「これは国家が特定の宗教を応援してるよね?」と見なされるわけです。

 

政教分離の原則って、冷たい線引きのようにも思えますが、

実は「宗教の自由」を守るために、国家があまり介入しすぎないようにするための仕組みでもあるのです。

 

それを踏まえて、各選択肢をみていくと、

 

津地鎮祭訴訟

市が体育館の起工に際して神社神道固有の祭式にのっとり地鎮祭を行ったことは、憲法が禁止する宗教的活動にあたるとされた。→ 誤り

これは、1977年(昭和52年)の「津地鎮祭訴訟」に関する記述ですが、最高裁は合憲と判断しました。

市が地鎮祭に公費を支出したことは、「宗教的行事にはあたるが、宗教活動を助長・促進するものではない」として、憲法が禁止する宗教的活動にはあたらないと判断されました。つまり、地鎮祭が伝統的・慣習的な性質を持ち、世俗的な目的で行われていたという点が重視されたわけです。

 

愛媛玉ぐし料訴訟

県が神社に対して公金から玉ぐし料を支出したことは、憲法が禁止する公金の支出にあたるとされた。

→ 正しい

これは、1997年(平成9年)の「愛媛玉ぐし料訴訟」についての記述です。最高裁は、県が靖国神社や護国神社に対して玉ぐし料を支出したことは違憲と判断しました。

理由は、明確に宗教的意味を持つ儀式に対し、公金を支出するのは宗教に対する支援にあたると考えられたからです。

 

空知太神社訴訟

市が神社に市有地を無償で使用させていたことは、憲法が禁止する宗教団体に対する特権の付与にあたるとされた。→ 正しい

 

この裁判は、2001年(平成13年)の「空知太神社訴訟」です。北海道砂川市が、市有地を空知太神社に無償貸与していたことが問題となりました。

最高裁はこれを、宗教団体に対する特権の付与として違憲と判断しました。公有地を宗教目的に無料で使わせることは、実質的に宗教団体を公的に援助していると見なされたのです。

 

ということからこの問題は、

津地鎮祭訴訟   ⇒ 間違い

愛媛玉ぐし料訴訟 ⇒ 正しい

空知太神社訴訟  ⇒ 正しい

をあらわしている選択肢が正答です。

選択肢1. ア

冒頭の解説より、

誤答です。

選択肢2. イ

冒頭の解説より、

誤答です。

選択肢3. ウ

冒頭の解説より、

誤答です。

選択肢4. アとイ

冒頭の解説より、

誤答です。

選択肢5. アとウ

冒頭の解説より、

誤答です。

選択肢6. イとウ

冒頭の解説より、

正答です。

選択肢7. アとイとウ

冒頭の解説より、

誤答です。

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02

この問題では、政教分離の原則また、判例について聞いてきており、

よく出題される範囲です。

 

政教分離の原則とは、第二次世界大戦前、国家神道が国教的な地位になったことを反省し、

日本国憲法では、国およびその機関の宗教活動の禁止や宗教団体への公金支出の禁止などが定められています。

 

最高裁判所が下した政教分離の原則に関する違憲判決はつぎの3つのみです。

愛媛玉串料訴訟、砂川政教分離訴訟、孔子廟政教分離訴訟(空知太(そらちぶと)神社訴訟)

 

津地地鎮祭は、最高裁判所が習慣的行為と判断したため、

違憲判決を受けていません。

選択肢1. ア

不適切

 

津地地鎮祭は違憲判決を受けていません。

 

選択肢2. イ

不適切

 

空知太(そらちぶと)神社訴訟も違憲判決を受けています。

 

 

選択肢3. ウ

不適切

 

愛媛玉ぐし料訴訟も違憲判決を受けています。

選択肢4. アとイ

不適切

 

津地地鎮祭は違憲判決を受けていません。

 

 

選択肢5. アとウ

不適切

 

津地地鎮祭は違憲判決を受けていません。

 

選択肢6. イとウ

適切

 

この選択肢は過不足なく選べているため正解です。

選択肢7. アとイとウ

不適切

 

津地地鎮祭は違憲判決を受けていません。

 

参考になった数0

03

この問題でまず抑えるべきキーワードは「政教分離の原則」です。

政教分離の原則は国家と宗教を分離し、国家が宗教に干渉しないことを定めた原則を言います。

 

また、以下に3つの最高裁判決の判例をまとめていきます。

 

津地鎮祭訴訟では、津市が行った地鎮祭は、目的自体が世俗的なものであり、その祭の効果は、神道を援助や助成、促進するものではないとして、宗教的活動にはあたらないとされました。

 

愛媛玉ぐし料訴訟では、愛媛県が神社に公金支出した玉ぐし料は、社会的儀礼としてではなく、特定の宗教団体に対して援助、助長、促進する対象になるとして違憲とされました。

 

空知太(そらちぶと)神社訴訟では、北海道の砂川市が市の市有地を神社に無償で使用させていたことは、特定の宗教への特別な援助にあたるとしして違憲とされました。

 

選択肢1. ア

不適切

 

文中の 宗教的活動にあたる が不適切になります。

選択肢2. イ

不適切

 

愛媛玉ぐし料訴訟と空知太訴訟のどちらも違憲とされました。

選択肢3. ウ

不適切

 

愛媛玉ぐし料訴訟と空知太訴訟のどちらも違憲とされました。

選択肢4. アとイ

不適切

 

津地鎮祭訴訟では、宗教的活動にあたらないとされました。

 

 

選択肢5. アとウ

不適切

 

津地鎮祭訴訟では、宗教的活動にあたらないとされました。

 

選択肢6. イとウ

適切

 

愛媛玉ぐし料訴訟と空知太訴訟のどちらも違憲とされました。

選択肢7. アとイとウ

不適切

 

津地鎮祭訴訟では、宗教的活動にあたらないとされました。

 

 

まとめ

この政教分離の原則の問題は、頻出問題のうちの一つです。

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