大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問67 (政治・経済(第1問) 問4)
問題文
a 国の法制度やb 地方自治に関心がある生徒Xと生徒Yは、自分たちが住むJ市のまちづくりの取組みについて調べている。
かつてc K寺の門前町として栄えたJ市には、多くの観光客が訪れており、K寺はJ市の重要な観光資源となっている。市の中心市街地は、駅からK寺へ至る表参道としての中央通りを中心に発展してきた。駅前には大型店舗が集まり、表参道には個人商店が軒を並べている。また、K寺の門前にはd 空き家などをリノベーションした店舗やカフェが多数立地し、e 地元の農産物を加工した食品を販売している。
生徒たちがJ市のWebページを調べたところ、市が「市街地活性化プラン」を策定し、次のような事業を展開していることがわかった。
<空き家等活用事業>
空き家等を活用し、店舗やカフェ、民泊などの施設として利用する場合に、改修費や設備費を補助するとともに、長期的な安定経営をめざし、経営指導員による継続的指導を行う。
<歴史的街なみ整備事業>
K寺周辺地区の歴史ある街なみを保全し、伝統と文化が感じられる景観を形成することを目的に、まちづくり協定で規定する範囲の景観の整備に対する助成を行うとともに、道路の美装化を進める。
生徒たちはとくに空き家などの活用に関心をもち、空き家やf 民泊に関するg 法律についても、h 立法過程を含め、調べてみることにした。
下線部dについて、生徒Xは、国土交通省のWebページで「空家(あきや)等対策の推進に関する特別措置法」(以下、「空家法」という)の内容を調べ、次のメモを作成した。Xは生徒Yと、メモをみながら後の会話をしている。後の会話文中の空欄( ア )・( イ )に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後のうちから一つ選べ。
1.「空家等」(空家法第2条第1項)
・建築物やそれに附属する工作物で居住等のために使用されていないことが常態であるもの、および、その敷地。
2.「特定空家等」:次の状態にある空家等(空家法第2条第2項)
(a)倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(b)著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(c)適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
(d)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
3.特定空家等に対する措置(空家法第14条)
・特定空家等の所有者等に対しては、市町村長は、特定空家等を取り除いたり、修繕したりするなど、必要な措置をとるよう助言や指導、勧告、命令をすることができる。
・上記(a)または(b)の状態にない特定空家等については、建築物を取り除くよう助言や指導、勧告、命令をすることはできない。
X:空家法によると、市町村長は、所有者に対し建築物を取り除くよう命令し、従わない場合は代わりに建築物を取り除くこともできるみたいだよ。
Y:そうなんだ。でも、市町村長が勝手に私人の所有する建築物を取り除いてしまってもよいのかな。
X:所有権といえども、絶対的なものとはいえないよ。日本国憲法第29条でも、財産権の内容は「( ア )」に適合するように法律で定められるものとされているね。空家法は所有権を尊重して、所有者に対し必要な措置をとるよう助言や指導、それから勧告をすることを原則としているし、建築物を取り除くよう命令できる場合を限定もしているよ。でも、空家法が定めているように、( イ )には、所有者は、建築物を取り除かれることになっても仕方ないんじゃないかな。
Y:所有権には所有物を適切に管理する責任が伴うということだね。
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問67(政治・経済(第1問) 問4) (訂正依頼・報告はこちら)
a 国の法制度やb 地方自治に関心がある生徒Xと生徒Yは、自分たちが住むJ市のまちづくりの取組みについて調べている。
かつてc K寺の門前町として栄えたJ市には、多くの観光客が訪れており、K寺はJ市の重要な観光資源となっている。市の中心市街地は、駅からK寺へ至る表参道としての中央通りを中心に発展してきた。駅前には大型店舗が集まり、表参道には個人商店が軒を並べている。また、K寺の門前にはd 空き家などをリノベーションした店舗やカフェが多数立地し、e 地元の農産物を加工した食品を販売している。
生徒たちがJ市のWebページを調べたところ、市が「市街地活性化プラン」を策定し、次のような事業を展開していることがわかった。
<空き家等活用事業>
空き家等を活用し、店舗やカフェ、民泊などの施設として利用する場合に、改修費や設備費を補助するとともに、長期的な安定経営をめざし、経営指導員による継続的指導を行う。
<歴史的街なみ整備事業>
K寺周辺地区の歴史ある街なみを保全し、伝統と文化が感じられる景観を形成することを目的に、まちづくり協定で規定する範囲の景観の整備に対する助成を行うとともに、道路の美装化を進める。
生徒たちはとくに空き家などの活用に関心をもち、空き家やf 民泊に関するg 法律についても、h 立法過程を含め、調べてみることにした。
下線部dについて、生徒Xは、国土交通省のWebページで「空家(あきや)等対策の推進に関する特別措置法」(以下、「空家法」という)の内容を調べ、次のメモを作成した。Xは生徒Yと、メモをみながら後の会話をしている。後の会話文中の空欄( ア )・( イ )に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後のうちから一つ選べ。
1.「空家等」(空家法第2条第1項)
・建築物やそれに附属する工作物で居住等のために使用されていないことが常態であるもの、および、その敷地。
2.「特定空家等」:次の状態にある空家等(空家法第2条第2項)
(a)倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(b)著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(c)適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
(d)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
3.特定空家等に対する措置(空家法第14条)
・特定空家等の所有者等に対しては、市町村長は、特定空家等を取り除いたり、修繕したりするなど、必要な措置をとるよう助言や指導、勧告、命令をすることができる。
・上記(a)または(b)の状態にない特定空家等については、建築物を取り除くよう助言や指導、勧告、命令をすることはできない。
X:空家法によると、市町村長は、所有者に対し建築物を取り除くよう命令し、従わない場合は代わりに建築物を取り除くこともできるみたいだよ。
Y:そうなんだ。でも、市町村長が勝手に私人の所有する建築物を取り除いてしまってもよいのかな。
X:所有権といえども、絶対的なものとはいえないよ。日本国憲法第29条でも、財産権の内容は「( ア )」に適合するように法律で定められるものとされているね。空家法は所有権を尊重して、所有者に対し必要な措置をとるよう助言や指導、それから勧告をすることを原則としているし、建築物を取り除くよう命令できる場合を限定もしているよ。でも、空家法が定めているように、( イ )には、所有者は、建築物を取り除かれることになっても仕方ないんじゃないかな。
Y:所有権には所有物を適切に管理する責任が伴うということだね。
- ア:公共の福祉 イ:周辺住民の生命や身体に対する危険がある場合
- ア:公共の福祉 イ:周辺の景観を著しく損なっている場合
- ア:公共の福祉 イ:土地の有効利用のための必要性がある場合
- ア:公序良俗 イ:周辺住民の生命や身体に対する危険がある場合
- ア:公序良俗 イ:周辺の景観を著しく損なっている場合
- ア:公序良俗 イ:土地の有効利用のための必要性がある場合
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この過去問の解説 (2件)
01
この問題では、公共の福祉による制約があげられています。
経済の自由には、住居・移転および職業選択の自由(第22条)と財産権の保障(第29条)の規定があり、
これらには、公共の福祉による制約があります。
今回の問題では財産権の保障が扱われています。
問題文に出ている空家法では(a)倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、
(b)著しく衛生上有害となるおそれのある状態のときに建築物を取り除くことができるとされています。
問題文の定義に従うことで解くことができます。
適切
公共の福祉 〇
周辺住民の生命や身体に対する危険がある場合 〇
不適切
公共の福祉 〇
周辺の景観を著しく損なっている場合 ×
問題文に出ている空家法では、建築物を取り除くことができないとされています。
不適切
公共の福祉 〇
土地の有効利用のための必要性がある場合 ×
問題文に出ている空家法では、建築物を取り除くことができないとされています。
不適切
公序良俗 ×
周辺住民の生命や身体に対する危険がある場合 〇
不適切
公序良俗 ×
周辺の景観を著しく損なっている場合 ×
問題文に出ている空家法では、建築物を取り除くことができないとされています。
不適切
公序良俗 ×
土地の有効利用のための必要性がある場合 ×
問題文に出ている空家法では、建築物を取り除くことができないとされています。
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02
この問題で押さえるべきキーワードは公共の福祉と公序良俗です。
まず、公共の福祉については日本国憲法第12条、第13条、第22条、第29条で登場することを押さえます。
本問題では財産権に関する第29条について触れています。
第29条 財産権は、これを侵してはならない。
②財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
③私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
とされています。
公共の福祉が社会全体に共通する利益であることに対して、
公序良俗は一般的な秩序や一般的な道徳的考えを指します。
適切
公共の福祉 〇
問題文記載の「空家法」より、
「『倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態』『著しく衛生上有害となるおそれのある状態』
上記2つの状態にない特定空家等については、建築物を取り除くよう助言や指導、勧告、命令をすることはできない。」ことがわかります。
すなわち、周辺住民の生命や身体に対する危険がある場合には、所有者は、建築物を取り除かれることになる可能性があることがわかります。
不適切
公共の福祉 〇
問題文記載の「空家法」より、
「『倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態』『著しく衛生上有害となるおそれのある状態』
上記2つの状態にない特定空家等については、建築物を取り除くよう助言や指導、勧告、命令をすることはできない。」ことがわかります。
すなわち、周辺の景観を著しく損なっている場合は、これに該当しないことがわかります。
不適切
公共の福祉 〇
問題文記載の「空家法」より、
「『倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態』『著しく衛生上有害となるおそれのある状態』
上記2つの状態にない特定空家等については、建築物を取り除くよう助言や指導、勧告、命令をすることはできない。」ことがわかります。
すなわち、土地の有効利用のための必要性がある場合は、これに該当しません。
不適切
公序良俗 ×
問題文記載の「空家法」より、
「『倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態』『著しく衛生上有害となるおそれのある状態』
上記2つの状態にない特定空家等については、建築物を取り除くよう助言や指導、勧告、命令をすることはできない。」ことがわかります。
すなわち、周辺住民の生命や身体に対する危険がある場合は、これに該当します。
不適切
公序良俗 ×
問題文記載の「空家法」より、
「『倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態』『著しく衛生上有害となるおそれのある状態』
上記2つの状態にない特定空家等については、建築物を取り除くよう助言や指導、勧告、命令をすることはできない。」ことがわかります。
すなわち、周辺の景観を著しく損なっている場合は、これに該当しません。
不適切
公序良俗 ×
問題文記載の「空家法」より、
「『倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態』『著しく衛生上有害となるおそれのある状態』
上記2つの状態にない特定空家等については、建築物を取り除くよう助言や指導、勧告、命令をすることはできない。」ことがわかります。
すなわち、土地の有効利用のための必要性がある場合は、これに該当しません。
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