大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問14 (現代社会(第2問) 問6)
問題文
次の問いに答えよ。
違憲審査の実例として、先生とサトウさんたちは次の会話文のように、尊属殺重罰規定違憲判決を検討した。後のA~Cは、同判決および関連する判決の一部を抜粋したカードである。会話文中の(ア)・(イ)に入るA~Cの組合せとして最も適当なものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
会話文
先生:日本で初めて法律を違憲としたのが、尊属殺重罰規定違憲判決です。
サトウ:父母などを殺すと罪が重くなることが問題になったのですよね。この法律の何がいけなかったんでしょうか。
先生:そこは重要なところですね。最高裁の多数意見は、刑法200条の尊属殺重罰規定の目的、つまり尊属を尊重するという目的については一応正当だとしています。しかし、その目的達成の手段としての刑罰が、死刑または無期懲役に限られていることが重すぎるとして、違憲と判断しています。この多数意見を抜粋したのが、( ア )のカードです。
サトウ:なるほど、刑罰が重すぎるのがいけないのですね。ただうまく言えませんが、この規定には別の問題もあるように思います。私が親を尊敬しているのは、法律で決まっているからではありません。
先生:そういった違和感というのは、学びを深めていく上でとても大切です。最高裁の判決には、個々の裁判官が、自分の意見を付すことがあります。この判決では、田中二郎裁判官が、多数意見とは異なる意見を付しています。多数意見とは違って、田中意見では、尊属殺重罰規定の目的そのものが違憲だとされています。
サトウ:田中意見は、( イ )のカードですよね。
先生:そのとおり。結論は同じでも、その理由づけは一つではありません。
サトウ:高校の教科書で結論を知るだけではなくて、その理由づけの違いについて考えることも、大学で法学を学ぶ上では重要なのですね。
A
刑法200条は、憲法14条に違反するものでないことは、……明らかである。尤(もっと)も、刑法200条が、その法定刑として「死刑又は無期懲役」のみを規定していることは、厳(げん)に失(しつ)するの憾(うら)みがないではないが、これとても、……いかなる限度にまで減刑を認めるべきかというがごとき、所詮は、立法の当否の問題に帰するものである。
(注)判決文の表現は一部変えている。以下の抜粋も同様。
B
普通殺人と区別して尊属殺人に関する規定を設け、尊属殺人なるがゆえに差別的取扱いを認めること自体が、法の下の平等を定めた憲法14条項に違反するものと解すべきである。
C
刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限っている点において、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺に関する刑法199条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法14条項に違反する。
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問14(現代社会(第2問) 問6) (訂正依頼・報告はこちら)
次の問いに答えよ。
違憲審査の実例として、先生とサトウさんたちは次の会話文のように、尊属殺重罰規定違憲判決を検討した。後のA~Cは、同判決および関連する判決の一部を抜粋したカードである。会話文中の(ア)・(イ)に入るA~Cの組合せとして最も適当なものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
会話文
先生:日本で初めて法律を違憲としたのが、尊属殺重罰規定違憲判決です。
サトウ:父母などを殺すと罪が重くなることが問題になったのですよね。この法律の何がいけなかったんでしょうか。
先生:そこは重要なところですね。最高裁の多数意見は、刑法200条の尊属殺重罰規定の目的、つまり尊属を尊重するという目的については一応正当だとしています。しかし、その目的達成の手段としての刑罰が、死刑または無期懲役に限られていることが重すぎるとして、違憲と判断しています。この多数意見を抜粋したのが、( ア )のカードです。
サトウ:なるほど、刑罰が重すぎるのがいけないのですね。ただうまく言えませんが、この規定には別の問題もあるように思います。私が親を尊敬しているのは、法律で決まっているからではありません。
先生:そういった違和感というのは、学びを深めていく上でとても大切です。最高裁の判決には、個々の裁判官が、自分の意見を付すことがあります。この判決では、田中二郎裁判官が、多数意見とは異なる意見を付しています。多数意見とは違って、田中意見では、尊属殺重罰規定の目的そのものが違憲だとされています。
サトウ:田中意見は、( イ )のカードですよね。
先生:そのとおり。結論は同じでも、その理由づけは一つではありません。
サトウ:高校の教科書で結論を知るだけではなくて、その理由づけの違いについて考えることも、大学で法学を学ぶ上では重要なのですね。
A
刑法200条は、憲法14条に違反するものでないことは、……明らかである。尤(もっと)も、刑法200条が、その法定刑として「死刑又は無期懲役」のみを規定していることは、厳(げん)に失(しつ)するの憾(うら)みがないではないが、これとても、……いかなる限度にまで減刑を認めるべきかというがごとき、所詮は、立法の当否の問題に帰するものである。
(注)判決文の表現は一部変えている。以下の抜粋も同様。
B
普通殺人と区別して尊属殺人に関する規定を設け、尊属殺人なるがゆえに差別的取扱いを認めること自体が、法の下の平等を定めた憲法14条項に違反するものと解すべきである。
C
刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限っている点において、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺に関する刑法199条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法14条項に違反する。
- ア ― A イ ― B
- ア ― A イ ― C
- ア ― B イ ― A
- ア ― B イ ― C
- ア ― C イ ― A
- ア ― C イ ― B
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この過去問の解説 (1件)
01
この問題では、尊属殺重罰規定違憲判決についての基礎的知識と文章を読み取る能力が必要となってきます。
尊属殺重罰規定違憲判決とは、1973年に日本で初めて法律を違憲とした判決になります。この判決のもとになった事件は1968年に栃木県で起こった事件で、ある女性が自身の実父を殺害した事件であり、父母などを殺すと死刑または無期懲役刑に限定されていることは普通殺に比べて罪が重くなることが問題になりました。
憲法14条では「法の下の平等」を保障しており「すべて国民は、法の下の平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と記されています。
不適切
A ×
B 〇
不適切
A ×
C ×
不適切
B ×
A ×
不適切
B ×
C ×
不適切
C ×
A ×
適切
C 〇
本文より『最高裁の多数意見は、刑法200条の尊属殺重罰規定の目的、つまり尊属を尊重するという目的については一応正当だとしています。しかし、その目的達成の手段としての刑罰が、死刑または無期懲役に限られていることが重すぎるとして、違憲と判断しています。』とあるため、Cの内容と一致します。
B 〇
本文より『田中二郎裁判官が、多数意見とは異なる意見を付しています。多数意見とは違って、田中意見では、尊属殺重罰規定の目的そのものが違憲だとされています。』とあるため、Bの内容と一致します。
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