大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問56 (倫理(第4問) 問2)
問題文
F:昨日の新聞で詳しく知ったんだけど、アメリカでは入試のときに白人以外の人たちを優遇している大学もあるんだね。でも、そうすると白人に不利益になることもあるよね。それってa 差別なんじゃないの?
G:いや、差別ってb 偏見を持って人を見るといった、差別する人の心の問題でしょ?集団に対するc ステレオタイプに基づいて他人を貶(おとし)めたり、相手を個人として尊重しないのが差別だよ。アメリカの入試の場合は、偏見に基づいていないから差別じゃないでしょ。むしろ、差別の解消が目的だよ。
F:でも、偏見がなくても差別になることもあるよね。差別をする人って「差別しているつもりはなかった」ってよく言うでしょ。差別は、d 自由に選択できない特徴に基づいて個人に不利益を与えるから悪いんじゃないの?
G:偏見がない差別ってどんなのがあるの?
F:例えば、どこかの店主が、e 排他的な社会の風潮や客の好みを考慮して、仕方なく外国人を店員として雇わない、とかは?この場合、必ずしも当の店主自身には偏見があるとは言えないかもしれないよね。だとすれば、やっぱり差別が悪いのは、特定の人に不利益を与えるからじゃない?特に、選択できない生まれに基づく差別の場合、その被害はより深刻になると思う。
G:「選択できない生まれ」って具体的にはどういうこと?
F:誰のf 子として生まれるかとか、どの人種や民族、国に生まれるか、とか。
G:確かに、自分ではどうしようもないことに基づいて不利益を受けるのはおかしいね。そういえば、g 生殖技術の発展がそういう不利益をさらに助長するっていう指摘もあったな。でも、本当に不利益だけが問題なのかな。偏見に満ちた社会が残っていたらダメなんじゃない?性差別はその典型だよね。
F:だからやっぱり、偏見が問題なのは、それが不利益に結び付くからでしょ?
G:でも、白人以外の人を優遇する入試と、例えば、黒人やh 女性を蔑視するような黒人差別や女性差別とでは全然違うでしょ。
F:そう言われると、そうだなあ。でも、何が違うんだろう。
下線部bに関して、次の文章は、オルポートの著作『偏見の心理』からの引用である。その内容の説明として最も適当なものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
偏見とは、ある集団に属している人に対して向けられる嫌悪の態度、または敵対的な態度である。そしてそれは、単にその人がその集団に属しているから、その集団が持っているとされる好ましくない特質をその人も持っているだろう、といった理由に基づいている。……過度のカテゴリー化*はおそらく、人間の精神の持つ最も一般的な習慣である。……ただ、過度の一般化の全てが偏見であるのではない。いくつかのものは単なる思い違いにすぎない。……新しい証拠に基づいて自分の誤った判断を修正できるならば、その人は偏見に染まってはいない。予断は、新しい知識が現れても改められない場合にのみ偏見となる。単なる思い違いとは異なり、偏見は、自分に合わない証拠は全て進んで拒絶する。人は、自分の偏見が矛盾を突かれて崩れそうになると、感情的になりがちである。……偏見とは、誤った、柔軟性のない一般化に基づいた反感である。
*カテゴリー化:この文脈では文章中の一般化と同じ意味
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問56(倫理(第4問) 問2) (訂正依頼・報告はこちら)
F:昨日の新聞で詳しく知ったんだけど、アメリカでは入試のときに白人以外の人たちを優遇している大学もあるんだね。でも、そうすると白人に不利益になることもあるよね。それってa 差別なんじゃないの?
G:いや、差別ってb 偏見を持って人を見るといった、差別する人の心の問題でしょ?集団に対するc ステレオタイプに基づいて他人を貶(おとし)めたり、相手を個人として尊重しないのが差別だよ。アメリカの入試の場合は、偏見に基づいていないから差別じゃないでしょ。むしろ、差別の解消が目的だよ。
F:でも、偏見がなくても差別になることもあるよね。差別をする人って「差別しているつもりはなかった」ってよく言うでしょ。差別は、d 自由に選択できない特徴に基づいて個人に不利益を与えるから悪いんじゃないの?
G:偏見がない差別ってどんなのがあるの?
F:例えば、どこかの店主が、e 排他的な社会の風潮や客の好みを考慮して、仕方なく外国人を店員として雇わない、とかは?この場合、必ずしも当の店主自身には偏見があるとは言えないかもしれないよね。だとすれば、やっぱり差別が悪いのは、特定の人に不利益を与えるからじゃない?特に、選択できない生まれに基づく差別の場合、その被害はより深刻になると思う。
G:「選択できない生まれ」って具体的にはどういうこと?
F:誰のf 子として生まれるかとか、どの人種や民族、国に生まれるか、とか。
G:確かに、自分ではどうしようもないことに基づいて不利益を受けるのはおかしいね。そういえば、g 生殖技術の発展がそういう不利益をさらに助長するっていう指摘もあったな。でも、本当に不利益だけが問題なのかな。偏見に満ちた社会が残っていたらダメなんじゃない?性差別はその典型だよね。
F:だからやっぱり、偏見が問題なのは、それが不利益に結び付くからでしょ?
G:でも、白人以外の人を優遇する入試と、例えば、黒人やh 女性を蔑視するような黒人差別や女性差別とでは全然違うでしょ。
F:そう言われると、そうだなあ。でも、何が違うんだろう。
下線部bに関して、次の文章は、オルポートの著作『偏見の心理』からの引用である。その内容の説明として最も適当なものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
偏見とは、ある集団に属している人に対して向けられる嫌悪の態度、または敵対的な態度である。そしてそれは、単にその人がその集団に属しているから、その集団が持っているとされる好ましくない特質をその人も持っているだろう、といった理由に基づいている。……過度のカテゴリー化*はおそらく、人間の精神の持つ最も一般的な習慣である。……ただ、過度の一般化の全てが偏見であるのではない。いくつかのものは単なる思い違いにすぎない。……新しい証拠に基づいて自分の誤った判断を修正できるならば、その人は偏見に染まってはいない。予断は、新しい知識が現れても改められない場合にのみ偏見となる。単なる思い違いとは異なり、偏見は、自分に合わない証拠は全て進んで拒絶する。人は、自分の偏見が矛盾を突かれて崩れそうになると、感情的になりがちである。……偏見とは、誤った、柔軟性のない一般化に基づいた反感である。
*カテゴリー化:この文脈では文章中の一般化と同じ意味
- 偏見は、過度の一般化に必然的に伴うものであり、個人と集団に対する嫌悪や敵対的な態度も含んでいる。
- 偏見は、個人と集団についての過度の一般化に基づく誤った判断であるが、嫌悪や敵対的な態度を含まない点で、単なる予断とは異なる。
- 偏見は、人間の精神の習慣であるカテゴリー化に基づくが、判断を修正するような証拠が与えられれば、改められるものである。
- 偏見は、自分の誤った思い込みを修正するような情報が与えられたとしても、誤りを認めずに、反発する傾向を伴う。
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