大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和6年度(2024年度)追・再試験
問91 (政治・経済(第4問) 問3)
問題文
図内下線部cに関連して、生徒Xは、2002年の道路運送法の改正とその影響、関連する法律について調べることで、各産業における健全な競争のあり方やそれへの政府の介入の仕方について考えることとし、次のメモを作成した。後の記述ア〜ウのうち、メモから読みとれる内容として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の回答選択肢のうちから一つ選べ。
1 道路運送法について
道路運送法は、道路運送の分野における事業を規制し、輸送の安全を確保し、利用者の利益の確保を図っている。同法が規制対象とする事業の一つである旅客自動車運送事業とは、他人の求めに応じて、有償で、自動車を使用して乗客を運送する事業である。これには、ルートとダイヤが固定されて乗客が乗り合う乗合バス事業や、乗客が契約して自動車を貸し切って運送されるタクシー事業などが含まれる。
2 各事業の従来の規制と2002年道路運送法改正
改正前の道路運送法では、乗合バス事業は路線ごと、タクシー事業は事業区域ごとの免許制であった。この免許を与えるにあたっては、「当該事業の開始によって当該路線又は事業区域に係る供給輸送力が輸送需要量に対し不均衡とならないものであること」という要件など(需給調整要件)があり、これにより既存事業者は保護されていた。2002年の改正は需給調整要件を撤廃し、事業者ごとに安全な運行をする能力があるかを判断して事業を行う許可を与えることとした。そして、路線や事業区域においてどのくらい増車するかは各事業者が判断し、届出をすればよいこととなった。
3 2002年道路運送法改正後の展開
(1)乗合バス事業
乗合バス事業は全体的に赤字構造にあり、とくに地方部においては厳しい経営状況にある。地方公共団体は地方交付税などの支援を受けつつ、事業者に補助金を交付するなどして乗合バス事業を支えている。
このような厳しい経営状況を受け、2020年独占禁止法特例法が制定された。この法律は、乗合バス事業が「国民生活および経済活動の基盤となるもの」であることから、地方部での乗合バス事業者の合併や共同経営について、企業の合併を規制する独占禁止法の適用を除外するものである。
(2)タクシー事業
タクシー事業については、2002年道路運送法改正後、事業者数が増加し、運賃やサービス内容が多様化したものの、乗客数は増えなかった。このためタクシー事業の経営は厳しい状況にあり、安全性やサービスの質の低下が懸念された。そこで、2013年タクシー適正化・活性化法改正により、供給が過剰な「特定地域」としての指定がなされた場合には、その地域での事業者の新規参入および既存業者のタクシー台数の増車が一律禁止され、タクシーの運賃が一定の額を下回るときには国土交通大臣等による運賃変更命令が出されるようになった。
ア 2002年改正前の道路運送法の下では、ある個人がタクシー事業を始めようとした場合に、その個人に安全に事業を行う能力があったとしても、ある事業区域においてタクシー事業を行うことができない可能性があった。
イ 乗合バス事業については、2002年道路運送法改正により規制緩和がなされた後も、一定の地域では収支が厳しい路線であっても存続が求められる事業であることが政策からみてとれる。
ウ 2013年タクシー適正化・活性化法改正後のタクシー事業については、過剰な競争による安全性の低下やサービスの質の低下への対処は、利用者がそうした事業者を選択しないという市場による解決に委ねられており、行政は介入しない。

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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和6年度(2024年度)追・再試験 問91(政治・経済(第4問) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)
図内下線部cに関連して、生徒Xは、2002年の道路運送法の改正とその影響、関連する法律について調べることで、各産業における健全な競争のあり方やそれへの政府の介入の仕方について考えることとし、次のメモを作成した。後の記述ア〜ウのうち、メモから読みとれる内容として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の回答選択肢のうちから一つ選べ。
1 道路運送法について
道路運送法は、道路運送の分野における事業を規制し、輸送の安全を確保し、利用者の利益の確保を図っている。同法が規制対象とする事業の一つである旅客自動車運送事業とは、他人の求めに応じて、有償で、自動車を使用して乗客を運送する事業である。これには、ルートとダイヤが固定されて乗客が乗り合う乗合バス事業や、乗客が契約して自動車を貸し切って運送されるタクシー事業などが含まれる。
2 各事業の従来の規制と2002年道路運送法改正
改正前の道路運送法では、乗合バス事業は路線ごと、タクシー事業は事業区域ごとの免許制であった。この免許を与えるにあたっては、「当該事業の開始によって当該路線又は事業区域に係る供給輸送力が輸送需要量に対し不均衡とならないものであること」という要件など(需給調整要件)があり、これにより既存事業者は保護されていた。2002年の改正は需給調整要件を撤廃し、事業者ごとに安全な運行をする能力があるかを判断して事業を行う許可を与えることとした。そして、路線や事業区域においてどのくらい増車するかは各事業者が判断し、届出をすればよいこととなった。
3 2002年道路運送法改正後の展開
(1)乗合バス事業
乗合バス事業は全体的に赤字構造にあり、とくに地方部においては厳しい経営状況にある。地方公共団体は地方交付税などの支援を受けつつ、事業者に補助金を交付するなどして乗合バス事業を支えている。
このような厳しい経営状況を受け、2020年独占禁止法特例法が制定された。この法律は、乗合バス事業が「国民生活および経済活動の基盤となるもの」であることから、地方部での乗合バス事業者の合併や共同経営について、企業の合併を規制する独占禁止法の適用を除外するものである。
(2)タクシー事業
タクシー事業については、2002年道路運送法改正後、事業者数が増加し、運賃やサービス内容が多様化したものの、乗客数は増えなかった。このためタクシー事業の経営は厳しい状況にあり、安全性やサービスの質の低下が懸念された。そこで、2013年タクシー適正化・活性化法改正により、供給が過剰な「特定地域」としての指定がなされた場合には、その地域での事業者の新規参入および既存業者のタクシー台数の増車が一律禁止され、タクシーの運賃が一定の額を下回るときには国土交通大臣等による運賃変更命令が出されるようになった。
ア 2002年改正前の道路運送法の下では、ある個人がタクシー事業を始めようとした場合に、その個人に安全に事業を行う能力があったとしても、ある事業区域においてタクシー事業を行うことができない可能性があった。
イ 乗合バス事業については、2002年道路運送法改正により規制緩和がなされた後も、一定の地域では収支が厳しい路線であっても存続が求められる事業であることが政策からみてとれる。
ウ 2013年タクシー適正化・活性化法改正後のタクシー事業については、過剰な競争による安全性の低下やサービスの質の低下への対処は、利用者がそうした事業者を選択しないという市場による解決に委ねられており、行政は介入しない。

- ア
- イ
- ウ
- アとイ
- アとウ
- イとウ
- アとイとウ
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