看護師の過去問
第104回
午前 問113

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

看護師国家試験 第104回 午前 問113 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文を読み、問いに答えよ。

Aさん(20歳、男性、大学生)は、皆が自分を嫌っていると言い、昨年から大学を休学し、1人暮らしのアパートで引きこもるようになった。先週、アパートで夜中に大声で叫ぶ日が続いたため、アパートの管理人から両親へ連絡があった。Aさんの両親がAさんの部屋に入ってみると、窓は新聞紙で覆われていた。Aさんは「1日中誰かに見張られている。あなたは親じゃない」と叫び続けるため、精神科病院に入院した。Aさんは、統合失調症(schizophrenia)と診断され非定型抗精神病薬による治療が開始された。

入院後1か月。Aさんは体重が3kg増加した。バイタルサインに異常はない。血液検査データは空腹時血糖200mg/dL、HbA1c5.2%である。入院時の空腹時血糖は80mg/dLであった。Aさんと両親に特記すべき既往歴はない。Aさんにみられる非定型抗精神病薬の副作用(有害事象)で最も考えられるのはどれか。
  • 水中毒(water intoxication)
  • 拘禁反応
  • 悪性症候群(malignant syndrome)
  • 耐糖能の異常

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

正解は「4」です。
統合失調症の薬物治療の援助について押さえておくことがポイントです。

1 . ×
統合失調症患者には、精神病そのものの影響から多量の水を飲むことがあり、その結果水中毒を引き起こす可能性があります。水中毒は、低ナトリウム血症、脳浮腫、傾眠、昏睡、けいれん等の症状を引き起こします。よって設問とは異なるため×となります。

2 . ×
拘禁反応とは、強制的に自由を抑圧される環境に置かれた人が表す人格の変化を指し、設問とは異なるため×となります。

3 . ×
バイタルサインに異常がなく、悪性症候群の症状が設問に記載されていないため×となります。
悪性症候群とは、主に抗精神病薬の副作用であり、37.5℃以上の発熱と意識障害などの精神症状、その他の神経症状、発汗や頻脈などの自律神経症状を特徴とする重篤な症候群です。

4 . 〇
統合失調症の治療薬の副作用として血糖値上昇があげられます。Aさんは空腹時血糖200mg/dlと血糖値が上昇していることから、薬の副作用と考えられます。

参考になった数1

02

バイタルサインに異常値がないことから、悪性症候群は否定されます。

血糖値の上昇が認められているため、耐糖異常が起きていると考えます。

よって4.が適切です。

問題の文面から多飲もなく、訴えの表現もないため、水中毒や拘禁反応を示す情報がないことから、選択から除外されます。

参考になった数1

03

正解は 4 です


1:×
水中毒とは、過剰な飲水によって引き起こされる諸症状のことです。主に、精神疾患や糖尿病患者に多く見られます。

本来、人間は脳からの指令によって喉の渇きを自覚し、飲水の行動をとります。
糖尿病を発症している人(特に初期)は、糖を排出するため多尿の傾向があり、尿で排出された分を補おうと口渇が生じ、多飲となります。


しかし、精神疾患の対象はこういった尿の量や水分量にかかわらず、多飲が現れることがあります。
考えられる原因としては、
①向精神薬(特に定型抗精神病薬)の副作用による口渇
②精神疾患自体による症状(不安、焦燥、幻覚、幻聴、妄想等)による過剰な飲水
③向精神薬の長期使用により、口渇中枢を刺激する受容体が活性化される上、抗利尿ホルモンの分泌が促進されて、体内に水分が貯留する
などがあります。


過剰な飲水と体内への水分の貯留により、血中の電解質のバランスが崩れ、低ナトリウム血症を引き起こします。
軽度の場合は疲労感の出現程度で済みますが、さらに低くなるにつれて、頭痛や嘔吐、錯乱等の精神症状、痙攣、昏睡、呼吸困難などに至ります。

予防や治療としては、軽症の場合は本人の腎機能に問題がなければ、水分制限のみで解消しますが、既に症状が現れている場合には輸液によって、ナトリウムを補充します。
ただし、急速な塩分の補正は脳細胞に樹徳なダメージを与える可能性もあり、緩やかな補正が必要です。


設問中では血中の糖についての詳細なデータはありますが、ナトリウム量について、全く言及がありませんので、該当しません。

水中毒とは - 公益財団法人福岡県薬剤師会 質疑応答
https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html?mode=0&classId=0&blockId=40312&dbMode=article&searchTitle=&searchClassId=-1&searchAbstract=&searchSelectKeyword=&searchKeyword=&searchMainText=


2:×
拘禁反応とは、強制収容所や捕虜収容所などの監禁施設、刑務所や拘置所等の刑事施設、精神科の閉鎖病棟等、強制的に自由を抑圧される環境に置かれた人が示す人格の変化を指す、精神医学や心理学における術語です。

日常生活では経験することのなかった監禁状態という特殊な状況下による強いストレスにより、異常な精神状態に陥り、様々な症状を呈します。


具体的には混迷、妄想、強い不安の訴え、抑うつ、的外れ応答、原子反応(爆発反応・短絡反応・解離状態)などです。

拘禁反応は拘禁状態が解かれたり、判決が確定し、その後の見通しが立ちやすくなると、改善することが多いです。


設問中には「薬の副作用として考えられるのは何か」と記載されています。拘禁反応は入院状態という”環境”がもたらす副作用ですし、Aさんの発語内容など、拘禁反応に該当する症状の記載も見られませんので、これも該当しません。


拘禁反応 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%98%E7%A6%81%E5%8F%8D%E5%BF%9C


3:×
悪性症候群とは、主に向精神薬の開始や中断・再開などによって高熱、意識障害、筋強直、横紋筋融解などをきたす症候群のことです。
薬剤による副作用のうち、重篤なものとして、まず名前が挙げられる有名なものです。

原因については様々論議されていますが、未だはっきりとした機序は解明されていません。

診断は大症状(発熱・筋強直・CK値の上昇)と小症状(頻脈・頻呼吸・血圧異常・意識変容・発汗・白血球増多)のうち大症状が3つ、または大症状2つ+小症状4つ以上と、その他の臨床検査値を参考に診断します。

設問中には発熱や血中CK値の記載はないため、該当しませんが、様々な薬剤の副作用として最も注意すべき症状のひとつですので、症状や特徴について覚えておきましょう。


医学用語解説集 悪性症候群 - 日本救急医学会
http://www.jaam.jp/html/dictionary/dictionary/word/0103.htm


4:○
統合失調症の治療に使用されるリスペリドン、オランザピエン(ジプレキサ)、クエチアピンなどの非定型抗精神病薬は、従来の定型向精神薬と比較して、副作用である手の震えや運動障害などの錐体外路症状が起こりにくいという特徴がありますが、反対に耐糖能障害による高血糖状態が起こりやすいという報告が寄せられています(原因や作用機序については未だ解明されていません)。
そのため、定期的な測定により、血糖値のチェックが必要です。

参考になった数0