看護師の過去問
第106回
午後 問233

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問題

看護師国家試験 第106回 午後 問233 (訂正依頼・報告はこちら)

Aさん(23歳、男性)は、マラソンの途中で嘔吐し、意識混濁状態となり救急車で搬送された。来院時、体温39.5℃で、熱中症( heatillness )と診断された。気管挿管と人工呼吸器管理が実施された。膀胱留置カテーテルを挿入後に輸液療法を開始して、ICUに入室した。表面冷却と血管内冷却によって体温は37℃台に下降した。
 既往歴:特記すべきことはない。
 身体所見:ICU入室時、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-20。体温37.8℃、呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧94/74mmHg。暗赤色尿を1時間で20mL認めた。
 検査所見:Hb16.8g/dL、Ht48.6%、Na130mEq/L、K6.5mEq/L、Cl100mEq/L、クレアチンキナーゼ〈CK〉48,000IU/L、尿素窒素60mg/dL、クレアチニン2.4mg/dL、AST〈GOT〉70IU/L、ALT〈GPT〉88IU/L。尿一般検査でミオグロビン陽性。胸部エックス線写真および頭部CTで異常所見なし。心電図でSTの変化はなく、洞性頻脈を認めた。

このときのAさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。2つ選べ。
  • 貧血である。
  • 筋肉が傷害されている。
  • 致死性不整脈が出現しやすい。
  • 心原性ショックを起こしている。
  • 利尿薬の使用が必要な状態である。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は2、3です。

1.誤り。設問の事例のヘモグロビン値、ヘマトクリット値は定値であり、貧血ではありません。

2.正解。暗赤色尿、尿中ミオグロビン陽性、クレアチニンキナーゼ値から判断します。ミオグロビンおよびクレアチニンキナーゼは心筋や骨格筋中に含まれる蛋白質であり、筋肉が傷害を受けると血中に流出し、尿中に排泄されます。
これらの情報から、A氏は熱中症による横紋筋融解症を呈している状態であると考えられます。

3.正解。血清カリウム値は3.6〜4.9mEq/Lが正常であり、事例は高カリウム血症であると考えられます。高カリウム血症が重篤となると、致死性の不整脈を呈します。

4.誤り。心原性ショックは心筋梗塞など心臓のポンプ機能が低下したことによるショックの状態です。ショック状態には意識レベルの低下に加え、血圧低下、時間尿量20ml以下などの診断基準があります。
事例は洞性頻脈はありますが、STの変化はないことから、限りなく危険な状態ではありますが、まだ心原性ショックを起こしてはいない状態であると考えられます。

5.誤り。熱中症による脱水および横紋筋融解症を呈している状態であり、早期に大量輸液を行う必要があります。現時点では利尿剤使用の選択は適切ではありません。

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02

Aさんは、熱中症による横紋筋融解症をきたしていると考えられます。高温により体温調節機構が破綻し、深部体温が40℃を越えた場合、骨格筋の変性や壊死が起こります。そして筋細胞からは蛋白や電解質などの成分が血液中へ流出し、四肢の脱力やしびれ,筋肉の痛み,硬直,腫脹などの症状がみられます。さらに筋肉中に含まれるカリウムイオンが血液中へ流出すれば、致死性不整脈をきたす可能性もあります。また、筋肉にはミオグロビンという蛋白質が含まれますが、ミオグロビンは分子量が比較的小さいため、腎臓の尿細管に詰まりやすく、無尿となり腎不全が進行してしまいます。また、暗赤色尿(ミオグロビン尿)の出現がみられます。

1 Hb値、Ht値は正常範囲内です。貧血とはいえません。1は不正解です。
2 筋肉が障害されると、筋骨格に多く存在する酵素であるクレアチニンキナーゼ、ASTが上昇します。ここでは「クレアチニンキナーゼ48000IU/L、AST70IU/ml」と高値でみられます。またミオグロビン尿もみられることから、筋肉が障害されていると考えます。したがって2が正解です。
3 K6.5mEq/L、高カリウム血症です。筋肉が障害されることで、筋肉中に多く存在するカリウムが血中に流出していると考えられます。 高カリウム血症は、心臓の伝導に影響を与え、致死性不整脈を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。したがって、3が正解です。
4 心疾患によって心拍出量の低下が起こることが原因となるショックを心原性ショックと言います。ショックの判断基準として「収縮期血圧90mmHg以下」「頻脈・徐脈」「爪先の毛細血管のrefilling遅延」「意識障害」「乏尿・無尿」「皮膚蒼白・冷や汗または39℃以上の発熱」などがありますが、Aさんの場合、収縮期血圧94mmHg、尿量流出もあります。したがって、心原性ショックとはいえません。4は不正解です。
5 横紋筋融解症によって、ミオグロビン尿が出現しているため、無尿の状態が進んでいると考えられます。まずは補液による対応が優先です。利尿剤を使用する場合は、心不全などで、体内に過剰な水分貯留がある場合ですので、今回第一選択とはなりません。5は不正解です。

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正解2.筋肉が傷害されている
  3.致死性不整脈が出現しやすい


熱中症

大量の発汗で体内の水分が奪われ、水や電解質の補給が十分に行われず脱水状態を呈しています。
組織や細胞が傷害されるだけでなく、熱ショック反応、急性炎症反応、凝固系の過剰亢進などを引き起こし重篤な状態につながります。
重症度分類Ⅲ度は、集中治療が必要な状態です。
①中枢神経症状
  意識障害、小脳症状、けいれん発作
②肝・腎機能障害
  AST、ALT、BUN、Creの上昇
③血液凝固異常
  急性期DIC基準にてDICと診断

循環器系の症状として、低血圧・心機能障害・心電図異常(ST-Tの異常、上室性頻拍)があります。
重症化すると、血液中のカリウムやカルシウムなどに異常がみられます。血液中のカリウムが上昇すると致死的不整脈が起こる可能性があります。

2.骨格筋細胞の壊死や融解によって筋細胞内成分が血液中に流出した状態を横紋筋融解症といいます。
流出したミオグロビンが尿細管を閉塞して腎障害を起こすことが多いです。
Aさんは、クレアチンキナーゼ(CK)が48000IU/Lと高値であり、暗赤色尿がみられミオグロビン陽性となっており、筋肉が傷害された状態になっています。尿素窒素60mg/dl、クレアチニン2.4mg/dlと上昇しており腎臓への影響も起こしています。

3.血液検査でK6.5mEq/lと高値を示しており、致死的不整脈を起こす可能性があり早急な対応が必要になります。



1.血液検査結果で、Hb16.8g/dl、Ht48.6%と低値を示していないので貧血は考えにくいです。脱水状態で血液の濃縮が考えられるので引き続き注意は必要です。


4.心原性ショックは、心ポンプ機能の低下により全身の循環不全が生じた状態です。心筋そのものの収縮力の低下、不整脈、弁疾患、シャント性心疾患などにより起こります。
診断基準として、収縮期血圧90mmHg未満または通常の血圧より30mmHg以上の低下、尿量20ml/時未満、意識障害、末梢血管収縮(四肢冷感、冷汗)があります。
Aさんは、既往歴に特記すべきことがなく、血圧と尿量も基準以下になっていないので心原生ショックとはいえません。

5.利尿剤の使用が必要な状態は、体内水分過多の状態です。胸部エックス線上も異常所見がなく、熱中症による脱水の状態であると考えられるので、血液検査結果に注意しながら輸液を行う治療が行われます。利尿剤使用が必要な状態ではありません。

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