司法書士 過去問
令和6年度
問10 (午前の部 問10)

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問題

司法書士試験 令和6年度 問10(午前の部 問10) (訂正依頼・報告はこちら)

地役権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

ア  A所有の甲土地にB所有の乙土地のための地役権が設定され、その後、BがCに乙土地を売却し、その旨の登記がされた場合には、Cは、Aに対し、甲土地の地役権を主張することができる。
イ  A所有の甲土地にB所有の乙土地のための通行地役権が設定され、その後、AがCに甲土地を売却した場合において、その売却の時に、甲土地がBによって継続的に使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、Cがそのことを認識することが可能であったとしても、Cが通行地役権が設定されていることを知らなかったときは、Bは、地役権の設定の登記がなければ、Cに対し、甲土地の通行地役権を主張することができない。
ウ  A所有の甲土地に、B、C及びDが共有する乙土地のための地役権が設定されている場合には、Bは、乙土地の自己の持分につき、当該地役権を消滅させることができない。
エ  A所有の甲土地にB所有の乙土地上の丙建物からの眺望を確保するための地役権が設定されている場合において、Bが乙土地のうち丙建物が存しない部分をCに譲渡したときは、当該地役権は、Cが取得した土地のためにも存続する。
オ  Aが、B所有の甲土地の地中に通された送水管を使用して、外形上認識し得ない形でA所有の乙土地への引水を継続して行っていた場合には、Aは、乙土地のための甲土地の引水地役権を時効によって取得することができない。
  • アイ
  • アウ
  • イエ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題では、地役権に関する記述のうち、判例の趣旨に照らして誤っている組合せを選びます。

選択肢3. イエ

ア.A所有の甲土地にB所有の乙土地のための地役権が設定され、その後、BがCに乙土地を売却し、その旨の登記がされた場合には、Cは、Aに対し、甲土地の地役権を主張することができる。
地役権は「要役地」(利益を受ける土地)と結びついているため、要役地が譲渡された場合でも、地役権は新しい所有者に承継されます(民法第280条)。
この記述は正しいです。

 

イ.A所有の甲土地にB所有の乙土地のための通行地役権が設定され、その後、AがCに甲土地を売却した場合において、その売却の時に、甲土地がBによって継続的に使用されていることが物理的状況から明らかであり、Cがそのことを認識できたとしても、Cが通行地役権が設定されていることを知らなかったときは、Bは、地役権の登記がなければ、Cに対し、甲土地の通行地役権を主張することができない。
判例では、地役権の存在が外形上明らかであり、新所有者もその存在を認識可能であれば、地役権の登記がなくても第三者に対抗できるとされています(最判昭和58年1月20日)。
この記述は誤りです。

 

ウ.A所有の甲土地に、B、C及びDが共有する乙土地のための地役権が設定されている場合には、Bは、乙土地の自己の持分につき、当該地役権を消滅させることができない。

地役権は要役地(利益を受ける土地)に設定されるため、共有者の一人が単独でその持分に対して地役権を消滅させることはできません。
この記述は正しいです。

 

エ.A所有の甲土地にB所有の乙土地上の丙建物からの眺望を確保するための地役権が設定されている場合において、Bが乙土地のうち丙建物が存しない部分をCに譲渡したときは、当該地役権は、Cが取得した土地のためにも存続する。
地役権は通常、特定の目的のために設定されるため、その利益を受ける土地の一部が譲渡された場合、地役権の効力が新しい所有者に及ぶとは限りません。特に、眺望権のような性質の地役権は、その目的からして、元の建物に依存するものと解されるため、Cが取得した土地には存続しない可能性が高いです
この記述は誤りです。

 

オ.Aが、B所有の甲土地の地中に通された送水管を使用して、外形上認識し得ない形でA所有の乙土地への引水を継続して行っていた場合には、Aは、乙土地のための甲土地の引水地役権を時効によって取得することができない。
地役権を時効取得するためには、その存在が外形上認識できる必要があります(最判昭和59年10月18日)。地中の送水管のように外部から認識できない場合、地役権の時効取得は認められません
この記述は正しいです。

 

まとめ

以下のポイントを押さえておきましょう。

 

・地役権は要役地に結びつくため、要役地の所有者が変わっても新しい所有者に承継されます

・地役権が外形的に認識できる場合、登記がなくても第三者に対抗できます

・共有地の地役権は、共有者の一人だけでは消滅させられません

・眺望のための地役権は、眺望を必要とする建物に依存します

・地役権の時効取得には、外形的に認識できることが必要です

 

 

 

 

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02

地役権については、民法第280条~293条に規定されています。

他の権利と比較して特徴的な点も多いので、総体的に覚えましょう。

選択肢3. イエ

A所有の甲土地にB所有の乙土地のための地役権が設定され、その後、BがCに乙土地を売却し、その旨の登記がされた場合には、Cは、Aに対し、甲土地の地役権を主張することができる。

 

地役権は要役地(B所有の乙土地)の所有権に従たるものであり、その所有権とともに移転する(民法281条)ので、所有権の移転の登記をすれば地役権の移転も対抗することができます

よって、本肢は正しいです。

 

 

A所有の甲土地にB所有の乙土地のための通行地役権が設定され、その後、AがCに甲土地を売却した場合において、その売却の時に、甲土地がBによって継続的に使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、Cがそのことを認識することが可能であったとしても、Cが通行地役権が設定されていることを知らなかったときは、Bは、地役権の設定の登記がなければ、Cに対し、甲土地の通行地役権を主張することができない。

 

判例は、「通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者(B)によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人(C)がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、(略)地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。」としています(最判平10.2.13)。

よって、本肢は誤りです。

 

 

A所有の甲土地に、B、C及びDが共有する乙土地のための地役権が設定されている場合には、Bは、乙土地の自己の持分につき、当該地役権を消滅させることができない。

 

土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができません(民法282条)。

(そもそも地役権は「人のため」ではなく「土地のため」に存在するので、属人的な所有権持分とは無関係です。)

よって、本肢は正しいです。

 

 

A所有の甲土地にB所有の乙土地上の丙建物からの眺望を確保するための地役権が設定されている場合において、Bが乙土地のうち丙建物が存しない部分をCに譲渡したときは、当該地役権は、Cが取得した土地のためにも存続する。

 

眺望を確保するための地役権(眺望地役権)は、特定のある場所からの眺望を確保する権利であり、本肢の場合、丙建物からの眺望のみの確保を目的としています。

そして、地役権の登記では、「地役権の範囲」が登記されているため、眺望地役権がどの範囲に設定されているのかは登記記録を見れば明らかです

よって、本肢においてCが取得した丙建物が存しない部分に地役権の負担がないことは明らかなので、本肢は誤りです。

 

 

Aが、B所有の甲土地の地中に通された送水管を使用して、外形上認識し得ない形でA所有の乙土地への引水を継続して行っていた場合には、Aは、乙土地のための甲土地の引水地役権を時効によって取得することができない。

 

地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができます(民法283条)。

(目で見ただけでわからないものに時効取得を認めてしまうと、取得される側にとって不利になってしまいます。)

よって、本肢は正しいです。

まとめ

眺望地役権や引水地役権はマイナーですが、その結論に至る理由は地役権の基本から導き出せるので、理屈を覚えるようにしましょう。

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