公認心理師の過去問
第1回(2018年)
午前 問71

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問題

公認心理師試験 第1回(2018年) 午前 問71 (訂正依頼・報告はこちら)

15歳の男子A、中学3年生。Aは非行傾向があり、中学校内で窃盗事件を起こし、学校の指導でスクールカウンセラーと面接した。両親は離婚しており、Aと二人暮らしの実父とは関係が悪く居場所がないことなど、自分から家庭の事情を素直に話した。Aとスクールカウンセラーとのラポールはスムーズに形成できたと考えられた。スクールカウンセラーは父親との関係がAの非行の背景にあると考え、継続面接の必要性を感じ週1回の面接を打診したところ、Aは快諾した。しかし、翌週Aは相談室に来なかった。担任教師の話では、Aは「あんな面接には二度と行かない」と話しているとのことだった。
Aへの対応として、最も適切なものを1つ選べ。
  • 独自の判断で家庭訪問をする。
  • 児童虐待を疑い、実母に連絡する。
  • Aには伝えず父親を学校に呼び出す。
  • Aの対人不信に留意し、面接の枠組みをしっかり保つよう工夫する。
  • Aをよく知るクラスメイトに事情を話し、Aを面接に連れて来てもらう。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は4です。

学校での相談活動は、スクールカウンセラー1人で行うものではなく、教員、管理職、他の専門職(養護教諭、スクールソーシャルワーカー等)と一緒にチームを組んで、連携して行っていくことで効果が期待されます(「チーム学校」の考え方です)。

これを踏まえて考えますと、

1.→Aは担任の先生に対して言っていることとスクールカウンセラーに対して言っていることが違うため、まずは担任の先生との話のすり合わせが必要になります。そして、担任の先生とスクールカウンセラーで連携し、支援にあたる必要があります。スクールカウンセラー独自の判断で家庭訪問をするのは「チーム学校」の考えに反しますし、担任の先生と対立することにもなりかねません。よって、1は誤りです。

2.→「実父と関係が悪く、居場所がない」という訴えだけでは児童虐待につながるかどうかはわかりません。実際にAが本当のことを言っているかどうかもわかりません。また、実母との関係も良好かどうかわかりません。まずは、担任の先生と情報交換をし、Aの家族関係をしっかりアセスメントしてから児童虐待の疑いがあるかどうかを判断する必要があります。よって、2は誤りです。

3.→Aに伝えず父親を学校に呼び出すということは、Aとスクールカウンセラーの関係をますます悪化させることにつながりかねません。また、父親を呼び出したことで、父親がAに対して叱ることがあれば、場合によっては父親とAの関係も悪化させることにもなりかねません。よって、3は誤りです。

4.→中学校で窃盗事件を起こし、担任の指導でスクールカウンセラーと面談しているということは、「Aの対人不信に留意し、面接の枠組みをしっかり保つよう工夫する」ということが必要です。Aはスクールカウンセラーにはいい顔をしようとして自分の家庭の事情を素直に話したとも考えられます。まずは、スクールカウンセラーは担任とは違う役割であり、いい子にしなくてもスクールカウンセラーはAを受容する立場であることを明確にする、一定の時間内で、面接室では(暴言や暴力は許容できないが)どんなことを話しても良いということを明確にする、など、面接の枠組みをしっかり保つようにすることが大事です。よって、4は正しいです。

5.→Aをよく知るクラスメイトに頼んでAを面接に連れてきてもらうということは、守秘義務にも反しますし、守秘義務に反することでAとの信頼関係が築けなくなります。よって、5は誤りです。

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02

継続面接を快諾したにもかかわらず、翌週来談しなかったケースです。

基本的にSCは教職員、特に担任と連携してケースに当たりますから、その観点からみると、4以外は全てSCの独断であるため、不適切であると言えます(5については、守秘義務の観点からも不適切です。)。

学校現場においては、チームで対応することが原則です。

参考になった数30

03

以下に解説します。

選択肢1. 独自の判断で家庭訪問をする。

独自に家庭訪問をすることは、Aのプライバシーや信頼関係に影響を与える可能性があります。家庭訪問は、事前にAとの合意がある場合に限るべきです。

 

選択肢2. 児童虐待を疑い、実母に連絡する。

現時点でAが家庭内の虐待を訴えているわけではなく、家庭訪問を通じての評価も行っていないため、即座に児童虐待を疑い実母に連絡するのは早急です。

選択肢3. Aには伝えず父親を学校に呼び出す。

Aに伝えずに父親を学校に呼び出すと、Aとの信頼関係を損なう可能性があります。Aが拒否感を示している状況で、父親との関係について独自に動く前に、Aの気持ちや状況を尊重し、まずはAと対話を重ねることが大切です。

選択肢4. Aの対人不信に留意し、面接の枠組みをしっかり保つよう工夫する。

適切です。

Aがカウンセリングに対して抵抗感を示している状況では、Aの対人不信や不安を理解し、面接の枠組みをしっかり保ちながら工夫することが重要です。Aがリラックスできる環境を整えたり、信頼関係を再構築する努力をすることで、Aがカウンセリングに戻る可能性を高めることができます。

選択肢5. Aをよく知るクラスメイトに事情を話し、Aを面接に連れて来てもらう。

クラスメイトに事情を話し、Aを面接に連れて来てもらうことは、Aのプライバシーや自主性を尊重していないため、Aの信頼をさらに損なう可能性があります。Aが自分で面接に来る意欲を持つような支援が望ましいです。

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