公認心理師の過去問 第1回(2018年) 午後 問89
この過去問の解説 (2件)
正解は5です。
J.Piagetの発達段階論は、子どもの発達段階を以下のように分類しました。
1) 感覚運動期(0~2歳):言葉を使えないため、五感で物事を把握しようとする時期です。
生後6ヶ月くらいになると、「対象の永続性」(「いないいないばあ」のように手や布で覆う等して物が見えなくなっても、物がその場所に存在していると理解できるようになる)を獲得します。生後8ヶ月くらいには、「模倣行動」(自分が見たり聞いたりする相手の手の動きや発声をまねできるようになる)を身につけます。
2)前操作期(2~7歳):「自己中心性」と「中心化」が特徴です。「自己中心性」とは、世界を自分の視点のみから見て、相手の立場で想像できないこと、「中心化」とは、目立つ部分にばかり意識がいくこと、をそれぞれ指します。
また、2歳頃から、言葉を話し始めると、「象徴機能の獲得」という特徴も出てきます。思い浮かべたもの(表象したもの)を、言葉という別のもので表すこと(象徴すること)ができるようになります。そのことによって、ものを何かに見立てたり、何かの「ふりをする」ことができるようになります。つまり、「ふり遊び」「ごっこ遊び」ができるようになります。
3) 具体的操作期(7~11歳):実際に手を動かさなくても、頭の中で情報処理を行えるようになる時期です。具体的操作期の特徴として「保存の概念」(同じ量の水を背の低い、あるいは背の高いコップに入れて見た目が変わっても、コップの水の量は変わらないということがわかる)「数の保存」(見た目が変わっても数が変わるわけではない)ができるという特徴があります。
4) 形式的操作期(11歳以降):この時期になると、「形式的演繹」(直接的な観察をしなくても、想定した判断で結論を導き出すことができる)や「抽象的・仮定的な推理」ができるようになります。そのことで、科学や哲学に関する問題も考えられるようになります。
(ピアジェの発達段階とは?知っておくべき4つのステージ
https://kodomo-manabi-labo.net/piaget-developmental-stages 参照)
1.→外界に合わせてシェマ(情報処理の枠組み)を改変する過程を「調節」と言います。新しい情報を既存のシェマで処理できないときは、認知のやり方を変えます。よって、1は誤りです。
2.→「具体的操作期」には、まだ速度、距離、時間など変数間の数量的な関係を理解するのは難しいです。そのあとの「形式的操作期」に入り、変数間の数量の関係が理解できるようになります。よって、2は誤りです。
3.→「自己中心性」とは、世界を自分の視点のみから見て、相手の立場で想像できないことを指します。利己的、愛他心の弱さを指す言葉ではありません。よって、3は誤りです。
4.→「ふり遊び」「ごっこ遊び」は、2歳ごろから出現するとJ.Piagetは述べています。前操作期の「象徴機能の獲得」に関係してきます。よって、4は誤りです。
5.→幼児期の子どもにはまだ具体的操作期の「保存の概念」が存在しておらず、水を元のコップよりも細長いコップに入れ替えて液面が高くなった場合、「水の量自体も変化した」と考えてしまいます。よって、5は正しいです。
ピアジェの認知発達理論においては、感覚運動期―前操作期―具体的操作期―形式的操作期それぞれの該当年齢や、キーワードを押さえるようにしましょう。
この記述は、“調節”の説明です。
なお、シェマとは手足を動かすような基本的な行動様式のことです。
従って、シェマの調節とは、例えば壁を手でたたいた時の「痛み」という感覚により、それ以降、力を加減するようになるということを指します。
速度や距離などは目に見える具体的なものではなく、抽象的なものです。
この記述は形式的操作期の説明です。
これはいわゆる“ジコチュー”のことですから誤りです。
ピアジェの理論における自己中心性とは他者の視点を理解できないことを指し、それを獲得できているかを確認する課題として「三つ山課題」が代表例です。
「ふり遊び」は、前操作期に見られます。
記述通りです。
なお、これは「保存の未獲得」と呼ばれています。
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