公認心理師の過去問
第1回(2018年)
午後 問125
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問題
公認心理師試験 第1回(2018年) 午後 問125 (訂正依頼・報告はこちら)
高齢期の心理学的適応について、正しいものを2つ選べ。
- ソーシャルコンボイを維持又は補償できるかということは適応を左右する要因の1つである。
- 退職後は以前の高い活動性や社会的関係から、いかに速やかに離脱できるかによって左右される。
- 能力低下への補償として、活動領域を選択的に限定し、従来とは異なる代替方略を用いることが有効である。
- 未来志向的に自身のこれからを熟考させることが、自身の過去への関心を促し回想させるよりも有効とされている。
- 適応が不安定になる1つの要因として、高齢期になると流動性知能に比べて結晶性知能が著しく低下することが挙げられる。
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この過去問の解説 (3件)
01
正答は1と3です。
高齢期に生じやすい心理的な変化として、身体的機能、脳の老化により精神機能や認知機能が低下し、以前は出来たことが思うようにできなくなることへの不安やストレスが挙げられます。加えて、定年退職や子の独立などによる役割の喪失、配偶者や友人などの死別などの体験(ライフイベント)によって孤独感を抱くことなどが考えられます。
1 ソーシャルコンボイとは、個人の、家族・友人など周囲の人との社会的なつながりを表しているものです。個人が自身を取り巻く様々な人との繋がりに守られながら、人生の課題を乗り越えていく様子を護送船団(コンボイ)に例えたものです。
コンボイモデルにおいては、個人を中心に、様々な人(成員)が関係性・親密さの程度によって、三層分けて取り囲んでいると整理され、内側ほど親密度が高くなります。
社会的な孤立を防ぐため、人との交流を保つことが心理学的適応においては重要です。現在のコンボイを維持すること、新たなつながりを作って補償することが肝要であり、記述のとおりです。
2 退職により、これまでの高い活動性や社会的関係からの離脱は起こり得るものですが、喪失感を伴うものでもあります。「いかに速やかに離脱できるか」ではなく、喪失した役割や社会的関係を補償していけるかが重要であると考えられます。したがって記述は誤りです。
3 記述のとおりです。加齢に伴い喪失した機能・能力を補うために、以前よりも狭い領域や特定の目標に絞り(選択)、それに対する機能低下を補う新たな手段や方法を獲得し(補償)、適応の機会を増やす(最適化)といった、「補償を伴う選択的最適化」を用いることが有効です。
4 高齢期においては、自身の過去への関心を促し、回想させることも有効であり、高齢者に用いられることが多い心理的ケアとして「回想法」があります。
回想法とは、過去の体験を誰かに語ったり、誰かと語り合ったりする手法で、その中で、不安や孤独感が和らぎ精神的に安定することや、脳が活性化され、認知症の進行を穏やかにすることが期待されています。したがって、記述は誤りとなります。
5 「流動性知能」とは、暗記力、計算力、直観力など新しい情報を獲得し、処理・加工・操作する知能を表します。他方、「結晶性知能」とは、知識や語彙、判断力、問題解決能力など、経験とともに培われ、蓄積される知能を表します。
流動性知能は20代辺りをピークに加齢によって低下する一方、結晶性知能は30代辺りでピークを迎えるものの、比較的加齢の影響を受けにくいとされています。したがって、流動性知能に比べて結晶性知能が著しく低下するという記述は誤りとなります。
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02
正解は1、3です。
高齢期の心理的特徴とは、高齢期になると、配偶者や友人との死別、子世代が独立することにより独居となり孤独を感じることです。
各選択肢については、以下の通りです。
1.コンボイ(convoy)とは「護衛艦」を意味し、ソーシャルコンボイとは、地域社会において一人ひとりが高齢者の護衛艦のような存在となって支援することです。 よって、選択肢の内容は、正しいです。
2.高齢期は配偶者との死別や社会的役割からの離脱を通し、喪失体験をし、円熟するものと考えられています。よって、選択肢の内容は、誤りです。
3.できることできないことを取捨選択して、できることを生かしながら生きがいを見つけていきます。よって、選択肢の内容は、正しいです。
4.回想法を用いることによって、精力的に活動していた時期を思い起こし、自己有用性を見出すことができます。よって、選択肢の内容は、誤りです。
5.結晶性知能とは、学習や経験に基づく知識のことで、加齢による影響を受けにくいとされています。流動性知能は新しいことを覚える知能のことで、加齢に伴い低下しやすいとされています。よって、選択肢の内容は、誤りです。
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03
各選択肢については、以下の通りです。
1→ソーシャルコンボイとは、動的なソーシャルサポートのネットワークのことを言います。
高齢期は、ソーシャルコンボイが機能していることは重要となります。
よって選択肢の内容は、正しいです。
2→いかに速やかに離脱するかではなく、活動性や社会的関係からの離脱は自然で避けられないものととらえます。
よって選択肢の内容は、誤りです。
3→高齢期には、選択的最適化と補償の視点が重要です。
よって選択肢の内容は、正しいです。
4→心理療法の1つに回想法があるように、過去を振り返ることは有効です。
よって選択肢の内容は、誤りです。
5→高齢期になると、結晶性知能より流動性知能の低下が目立ちます。
よって選択肢の内容は、誤りです。
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