公認心理師の過去問
第2回(2019年)
午後 問141
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問題
公認心理師試験 第2回(2019年) 午後 問141 (訂正依頼・報告はこちら)
19歳の男性A、大学1年生。Aは将来に希望が持てないと学生相談室に来室した。「目指していた大学は全て不合格だったので、一浪で不本意ながらこの大学に入学した。この大学を卒業しても、名の知れた企業には入れないし、就職できてもずっと平社員で結婚もできない。自分の将来に絶望している」と述べた。
Aに対する社会構成主義的立場からのアプローチとして、最も適切なものを1つ選べ。
Aに対する社会構成主義的立場からのアプローチとして、最も適切なものを1つ選べ。
- 不本意な入学と挫折の心理について心理教育を行う。
- Aの将来への絶望について無知の姿勢で教えてもらう。
- Aの劣等感がどのように作り出されたのかを探索させる。
- 学歴社会の弊害とエリート主義の社会的背景について説明する。
- Aの思考のパターンがどのように悲観的な感情を作り出すのかを指摘する。
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この過去問の解説 (2件)
01
社会構成主義的立場とは、ナラティブ・セラピーを代表するような立場です。「社会のさまざまな事象は人々の頭の中で作り上げられたもの(認知)であり、それを離れて社会は存在しない」とする社会学の立場のことです。
さまざまな事象が人の頭の中で作り上げられたもの(認知)であるということは、「その人の考え方や認知は、その人に聞かないとわからない」という立場に立ったものであるともいえます。セラピストは、決まった答えを聞く質問ではなく、「無知の姿勢で」質問するという専門性を発揮するという考えにもとづいています。
そして、対話を通して「カウンセリングはその場でその人とともに」進みます。
この立場から考えると、「心理教育」や、何かをセラピスト側から「説明したり」「指摘する」ことは、社会構成主義的立場からのアプローチにはつながりません。
また、劣等感がどう作られたか「探索させる」のではなく、対話を通して「クライエントとセラピストで創造する」のが社会構成主義的立場からのアプローチになります。
よって、2が正しいです。
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02
【正解:2】
社会構成主義とは、“社会に存在する現実は、個人から独立して存在するのではなく、会話を通じで現実と個人とが相互に影響を与え合う循環的な関係である”という考え方です。
社会構成主義の考えを基盤とした心理療法に、ナラティブセラピーがあります。ナラティブセラピーにおいては、事実と虚構が交錯した経験をその個人が意義付けするために物語(ナラティブ)にしたものに対して働きかけます。
つまり、社会構成主義的なアプローチとは、クライアントの語り、物語に着目したアプローチと言えます。
よって、言うなればカウンセラーが語ってしまっている1,4,5は誤りとなります。
また、3も“探索させる”が誤りです。
残る2が正解です。無知の姿勢とは、ナラティブセラピーにおける態度のことで、“クライアントこそ自身の問題の専門家であり、カウンセラーは、クライアントに教えを乞うべきだ”という態度のことです。
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