公認心理師の過去問
第3回(2020年)
午前 問21
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問題
公認心理師試験 第3回(2020年) 午前 問21 (訂正依頼・報告はこちら)
T.Kitwoodの提唱した認知症に関するパーソンセンタード・ケアの考え方について、最も適切なものを1つ選べ。
- 問題行動を示したときは、効率的に管理しなければならない。
- ケアで重要なことは、介護者自身の不安や弱さなどは考慮せず、理性的に行うことである。
- 認知症の治療薬が開発されるまで、専門家として認知症の人にできることはほとんどない。
- 認知症は、第一の視点として、中枢神経系の病気としてよりも障害としてみるべきである。
- ケアは、安全な環境を提供し、基本的ニーズを満たし、身体的ケアを与えることが中心となる。
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この過去問の解説 (2件)
01
正解は4です。
パーソンセンタード・ケアを提唱したT. Kitwoodは、認知症には、脳の障害、身体の健康状態、生活歴、性格傾向、社会心理がそれぞれ複雑にかかわりあっていると唱えました。そこから、認知症をもつ人を一人の「人」として尊重し、その人の立場に立って考え、ケアを行うことが大切であると説きました。これを「パーソンセンタード・ケア」といいます。
各選択肢については以下の通りです。
1.徘徊や暴言などという認知症の問題行動は様々な要因により引き起こされるものであり、画一的なものではなく、対応方法も様々です。よって効率的に管理することは不可能であるので、選択肢は不適切です。
2.パーソンセンタード・ケアの概念に合致しないため、不適切です。
しかし、介護者も人間であり、なかなか終わりが見えにくい認知症ケアのなかで、不安や弱さなどを感じることもありますので、公認心理師として介護者に寄り添う態度も必要になってくるかと思います。
3.パーソンセンタード・ケアの概念に合致しないため、不適切です。
しかし、治療薬での根本的な治療は期待できなくても、声掛けや関わりなどで症状を緩和できるなど、できることはあります。
4.中枢神経系の病気から由来して、様々な問題行動や不安行動、うつ症状や意欲の低下などの障害が引き起こされます。それらの要因はそれぞれによって異なるため、それらに注目をして1人1人に関わることが大切です。よって、パーソンセンタード・ケアの概念に合致しているため、適切です。
5.安全な環境を提供し、基本的ニーズを満たすことはパーソンセンタード・ケアの概念に合致していますが、認知症ケアは必ずしも身体的ケアを与えることが中心とは言えません。よって、選択肢の内容は不適切です。
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02
正答は4です。
パーソンセンタード・ケアとは、認知症の方を一人の人間とて尊重し、その人の立場に立ってケアを行うといった、認知症ケアにおける考え方を指します。認知症の方の心理的ニーズを理解し、その人を中心としたケアをことなうことが重要であるとされています。
1 パーソンセンタード・ケアの考え方によると、問題行動の背景にある心理的ニーズ(本人が何を必要としているのか、何を求めているのか等)を理解し、寄り添って対応することが望ましいと言えます。効率的な管理が最適であるとは言い難いです。したがって、不適切となります。
2 認知症の方を一人の人間として尊重してケアを行うことと同様に、介護者の不安や弱さなどネガティブな感情も、自然な反応であるとして尊重することが大切であると考えられています。したがって、不適切となります。
3 認知症においては、薬物療法以外のアプローチ(非薬物療法)が存在します。
回想法(過去の体験を誰かに語ったり、誰かと語り合ったりすること)や運動療法、音楽療法などは、認知症の方への心理療法として用いられるほか、ユマニチュード(認知症の方の尊厳を守りながらケアする技法)やパーソンセンタード・ケアなどのケア技法によりケアの質を向上することも有効となると考えられます。これらを含め、薬物療法以外においても「専門家として取り組めることがない」との記述は、適切とは言えません。
4 パーソンセンタード・ケアの考え方においては、ケアの質が症状に影響を与えると考えられています。認知症の方を一人の人間として尊重した上で心理的ニーズを理解し、困っていることへのアプローチを行う中で、本人らしさを引き出し、本来の活動ができるようにケアしていくことを大切にしているものと考えられます。これらのことから、病気というよりも障害として見ていく視点が窺えるため、適切です。
5 記述の通り、パーソンセンタード・ケアにおいては、心理的ニーズを理解してケアを行うことが重要とされているため、「身体的ケアが中心となる」との記載は適切ではありません。
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