公認心理師の過去問
第3回(2020年)
午前 問58
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問題
公認心理師試験 第3回(2020年) 午前 問58 (訂正依頼・報告はこちら)
公認心理師を養成するための実習で学ぶ際に重視すべき事項として、適切なものを2つ選べ。
- 自らの訓練や経験の範囲を超えたクライエントも積極的に引き受けるようにする。
- 実習で実際のクライエントに援助を提供する場合には、スーパービジョンを受ける。
- 実習で担当したクライエントに魅力を感じた場合には、それを認識して対処するように努める。
- 業務に関する理解や書類作成の方法を学ぶことよりも、クライエントへの援助技法の習得に集中する。
- クライエントとのラポール形成が重要であるため、多職種との連携や地域の援助資源の活用に注目することは控える。
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この過去問の解説 (2件)
01
正答は2と3です。
1 公認心理師の養成に当たって、実践を通して経験やスキルを身に付けることは重要です。ただし、カウンセラーのスキルや経験、相談内容やクライエントの状態などから判断して対応が難しいと考えられる場合は、引き受けずにリファーをすることも重要です。
範囲を超えたクライエントを引き受けてしまうと、問題解決に結びつかず、かえって悪化させてしまうことも懸念されます。そのため、対応可能な限界を把握しておくことが重要となり、「積極的に引き受ける」といった記述は誤りとなります。
2 記述のとおりです。スーパービジョンとは、熟達した指導者(スーパーバイザー)から教育を受ける過程のことを表します。スーパービジョンによって、スーパーバイザーからアセスメントや技法を学ぶことができることは勿論、助言を受けることでケースに対応することへの不安が軽減され、安定して取り組めるといった効果も期待されます。これからのことから、スーパービジョンを受けることは必要です。
3 記述のとおりです。カウンセラーがクライエントに向ける感情、思い入れを抱くことを「逆転移」と言います(クライエントからカウンセラーに向けられるものを「転移」と言います)。ここで重要となるのは、逆転移が生じた背景への理解を通して、ケースやクライエントの理解に役立てていくことにあります。
なお、逆転移は無意識に向けられる感情と言われており、自身では気付きにくい場合も多分にあるため、スーパービジョンによって客観的な視点を得ることが大切となります。
4 実習において、援助技法の取得は肝要です。ただし、公認心理師の役割は、クライエントへの心理的支援だけでなく、関係者への援助、心の健康に関する教育や情報提供も含まれます。また、多職種連携として他領域の専門家と協働していくことも求められます。
そうした観点から、援助技法以外の業務への理解や書類作成などの実務を学ぶことも重要です。したがって、記述は誤りとなります。
5 クライエントとのラポール形成は勿論重要なことでありますが、上述したように、多職種連携や地域援助も同じく重要な役割です。したがって、「控える」という記述は誤りとなります。
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02
正答は2と3です。
厚生労働省「公認心理師のカリキュラム等について」では、 公認心理師を養成するための大学院における実習内容を以下のように明記しています。
(ア) 心理に関する支援を要する者等に関する知識及び技能の修得
(イ) 要支援者等の理解とニーズの把握及び支援計画の作成
(ウ) 要支援者へのチームアプローチ
(エ) 多職種連携及び地域連携
(オ) 公認心理師としての職業倫理及び法的義務への理解
出典:厚生労働省 公認心理師のカリキュラム等について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000174192.pdf
1 .公認心理師としての重要な職業倫理には、以下のようなものが挙げられます。
・秘密保持
・相手を利己的に利用することの禁止
・専門的能力の範囲内における援助
・インフォームド・コンセント
「専門的能力の範囲内における援助」について、公認心理師は、十分な教育訓練によって習得した専門的能力の範囲内において援助を行うことが求められており、範囲外の事柄については、それについて適切に対応できる人にリファー(紹介)しなければなりません。
よって、選択肢1は誤りです。
2 .スーパービジョンとは、経験の浅い臨床家であるスーパーバイジーが、経験豊かな臨床家であるスーパーバイザーに、自分の担当する事例についての指導や助言を受けることです。
公認心理師を養成するための実習など、イニシャル・ケース(初めてクライエントを受けもつ面接)では、同一のスーパーバイザーに継続的にスーパービジョンを受けることが望ましいとされています。
よって、選択肢2は正しいです。
3 .「実習で担当したクライエントに魅力を感じた」とは、心理療法における、治療者からクライエントに向けられた逆転移の感情だと考えられます。
かつては逆転移は治療の妨げになるとして排除されてきましたが、現在では逆転移は少なからず生じるものであり、治療者はその逆転移感情を認識し、クライエントの理解と支援に役立てていくという考え方が一般的です。
よって、選択肢3は正しいです。
4 .上述した公認心理師を養成するための実習内容では、クライエントへの援助技法の習得以外にも、「支援計画の作成」や「要支援者へのチームアプローチ」、そして「多職種連携及び地域連携」などが含まれています。
クライエントへの援助技法の習得と並行して、業務に関する理解や書類作成の方法も学ぶことで、多職種との連携や地域の援助資源の有効活用など、要支援者へのチームアプローチを円滑に進めていくことが求められています。
よって、選択肢4は誤りです。
5 .公認心理師の義務として、公認心理師法第42条では「連携」について明記されています。
(連携等)
第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。
出典:公認心理師法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=427AC1000000068
また、上述した公認心理師を養成するための実習内容にも、「(エ) 多職種連携及び地域連携」は明記されており、「クライエントとのラポール形成」とともに重要であることがわかります。
よって、選択肢5は誤りです。
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