公認心理師の過去問
第3回(2020年)
午前 問71

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問題

公認心理師試験 第3回(2020年) 午前 問71 (訂正依頼・報告はこちら)

22歳の男性A、大学4年生。Aは12月頃、就職活動も卒業研究もうまくいっていないという主訴で学生相談室に来室した。面接では、気分が沈んでいる様子で、ポツリポツリと言葉を絞り出すような話し方であった。「就職活動がうまくいかず、この時期になっても1つも内定が取れていない。卒業研究も手につかず、もうどうしようもない」と思い詰めた表情で語っていた。指導教員からも、日々の様子からとても心配しているという連絡があった。
Aの自殺のリスクを評価する際に優先的に行うこととして、不適切なものを1つ選べ。
  • 絶望感や喪失感などがあるかどうかを確認する。
  • 就職活動の方向性が適切であったかどうかを確認する。
  • 現在と過去の自殺の念慮や企図があるかどうかを確認する。
  • 抑うつ状態や睡眠の様子など、精神的・身体的な状況を確認する。
  • 就職活動や卒業研究の現状を、家族や友人、指導教員に相談できているかどうかを確認する。

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この過去問の解説 (3件)

01

正答は2です。

1 就職活動や卒業研究がうまくいかず思い詰めているとの記述から、将来への希望が持てなかったり、これまで自分のやってきたことが失われたと感じたりしている様子が窺えます。こうした絶望感や喪失感が高まると、生きていても仕方がないとの思いに至り、自殺につながりやすいと考えられます。よって、記述の対応は適切であると考えられます。

2 就職活動の方向性を確認することは、就職活動がうまくいかない状況を改善する上では手掛かりとなります。しかし、Aの状況は就職活動のみが要因であるとは言えないほか、これは直接的に自殺リスクを評定できる質問でもないため、適しているとは言えません。

3 実行の可能性を判断する上で、自殺念慮(自殺しようする意思)や自殺企図の有無や程度を確認することは、リスク評価において必要です。

4 抑うつなど精神的な不調がある場合や睡眠に不調がある場合も自殺のリスクが高まると言われており、Aの心身の状態を把握することは重要です。

5 サポート資源は自殺リスクを低下させることにつながるため、Aのサポート資源を確認することも必要です。

参考になった数40

02

正答は2です。

日本では1998年に年間の自殺者数が3万人を超え、2006年に自殺対策基本法が施行されました。翌年には政府の推進すべき自殺対策の指針である自殺総合対策大綱が定められました。

自殺念慮があり、実際に自殺企図する人は「死にたい願望」と「助けられたい願望」が共存していると言われています。実際、自殺者の多くは、生前何らかの形で誰かに相談しているということがわかっています。

自殺念慮を告白された場合の対応は、「受容と共感をもって傾聴する」→「アセスメントを行う」→「連携による継続的な支援」が基本となります。

詳しくは、以下を参照してください。

『日常臨床における自殺予防の手引き 日本精神神経学会 精神保健に関する委員会編著 平成25年3月版』

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/journal/suicide_prevention_guide_booklet.pdf

自殺念慮のあるクライエントを支援する際には、必要に応じて守秘義務を超え、家族や医療機関等と連携をとることが大切です。様々な社会資源を活用しながら、継続的に支援していくことが求められます。

1 .適切な対応です。

自殺の危険因子として、自殺に繋がりやすい心理状態(不安焦燥、衝動性、絶望感、攻撃性など)かどうかを確認するのは適切です。

問題文でAは「気分が沈んでいる様子で、ポツリポツリと言葉を絞り出すような話し方」や、面接内での『就職活動がうまくいかず、この時期になっても1つも内定が取れていない。卒業研究も手につかず、どうしようもない』という発言からも、Aの抑うつ的な様子がうかがえ、就職活動がうまくいかず絶望的な気持ちに陥り、不安や焦燥で卒業研究も手につかず、どうしようもないと投げやりとも受け取れるような発言をしていることが伺えます。

2 .不適切な対応です。

Aが大学4年生の12月頃という時期に学生相談室を訪れ、言葉を絞り出して、就職活動がうまくいかない絶望的な気持ちを吐露しているのに、公認心理師が「就職活動の方向性が適切であったかどうかを確認する」対応は、Aに就職活動のやり方の何がダメだったのかと批判的とも捉えられやすい対応となり、さらにAの気持ちを追い詰めることになりかねない対応です。

問題を一緒に考えることで自殺のリスクを減じる対応とは、「何がだめだったのか」ではなく、「これから問題をどのように解決していくか」という視点で一緒に問題を考えていくことです。

3 .適切な対応です。

現在の自殺念慮の有無、具体的計画性、出現時期・持続性、強度、客観的観察、他害の可能性を評価し、いずれか一つでも存在する場合はリスクが高いと考えます。

過去の自殺企図歴は最も強い危険因子です。また、自傷行為を行う者にはしばしば自殺念慮を認め、自傷行為の後に重篤な自殺企図を行う場合があります。

4 .適切な対応です。

重要な自殺の危険因子に精神疾患があります。自殺既遂者の精神疾患のうち最も多いのが気分障害です。

うつ病患者における自殺の危険性の増大と関連する特徴としては、持続的な不眠、自己への無関心、精神病症状を伴ううつ病、記憶の障害、焦燥、パニック発作などが挙げられます。

うつ病患者の自殺の危険を増大させる要因としては、25歳以下の男性、発症が早期であること、アルコール等の乱用、双極性障害のうつ病相、混合状態(躁状態・抑うつ状態)、精神病症状を伴う躁病などが挙げられます。また、身体疾患の罹患やそれらに対する悩みも自殺の危険因子の一つです。

Aが身体的にどこか不安や苦痛な点がないかを確認する必要もあるでしょう。

抑うつ状態や継続的な不眠などの精神症状、何らかの身体疾患の可能性がある場合は、医療機関の受診を勧めることが適切でしょう。

5 .適切な対応です。

 「ソーシャルサポートの欠如」は自殺のリスクを高めます。自殺の保護因子として「家族やコミュニティの支援に対する強い結びつき」があり、現状の悩みを相談できる家族や友人、先生などの存在は自殺を予防する保護因子となります。

参考になった数30

03

正答は2です。

22歳の男性Aは、就職活動も卒業研究もうまくいかず、気分が沈んでいます。思いつめた表情で、絞り出すようにぽつりぽつりと「もうどうしようもない」と気持ちを語っています。指導教員からも、Aを心配しているという連絡が入っています。

このような場合には、学生相談室の相談員として、自殺のリスクを評価することが、最優先事項となります。

Aの自殺のリスクを評価する際に、就職活動の方向性が適切であったかどうかの確認は、直接的なリスク評価とはなりません。

もし継続カウンセリングを行うのであれば、就職活動の方向性は、カウンセリングの中で扱う内容になるかもしれませんが、現時点では優先的に行うこととして、適切な確認内容とはいえません。

1.絶望感や喪失感は、自殺の高リスク因子です。

2.上記の解説の通りです。

3.実際に自殺念慮があったかどうか、自殺企図があるかどうかの確認は、必要です。

さまざまな確認方法がありますが、実際に言葉で「死にたいと思ったりもされますか?」などと確認することもあります。

自殺のリスクを高めるものとして、

・自殺念慮に具体的な計画が伴うこと

・家族や身近な人に自殺者がいること

・自殺手段や自殺が生じた場所についての報道を頻繁に目にすること

が挙げられます。

これらについても、確認が必要です。

4.抑うつ状態は、自殺のリスクが高いです。

また、不眠もリスクとなりますので、睡眠や食事などの日常生活の様子や身体的な状況を聞き取ることは必要です。

5.相談できる人がいるかどうかを確認することは必要です。

親しい人に相談できているようであれば、自殺のリスクは低くなります。

厚生労働省が発行している『誰でもゲートキーパー手帳』には、自殺予防の十か条が書かれています。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000168751.pdf

これによると、抑うつ状態や自殺念慮、自殺企図に加えて、

・酒量が増す

・原因不明の身体の不調が長引く

・重症の身体の病気にかかる

・安全や健康が保てない

といったものも、自殺予防の項目となりますので、確認することが必要です。

参考になった数21