公認心理師の過去問
第3回(2020年)
午前 問72
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問題
公認心理師試験 第3回(2020年) 午前 問72 (訂正依頼・報告はこちら)
8歳の男児A、小学2年生。授業についていけないという保護者からの主訴で、児童精神科クリニックを受診した。家庭生活では問題なく、勉強も家で教えればできるとのことであった。田中ビネー知能検査ではIQ69、Vineland−Ⅱでは、各下位領域のv評価点は9〜11であった。
Aの評価として、最も適切なものを1つ選べ。
Aの評価として、最も適切なものを1つ選べ。
- 知的機能が低く、適応行動の評価点も低いため、知的能力障害の可能性が高い。
- 知的機能は低いが、適応行動の評価点は平均的であるため、知的能力障害の可能性は低い。
- 保護者によると、家庭生活では問題ないとのことであるが、授業についていけないため、学習障害の可能性が高い。
- 保護者によると、勉強も家で教えればできるとのことであるが、授業についていけないため、学校の教授法に問題がある可能性が高い。
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この過去問の解説 (3件)
01
正答は1です。
田中ビネー知能検査の特徴は、以下のとおりです。
年齢ごとに並べられた課題に取り組み、その成績と実年齢を比較して知能指数(IQ)を算出します。
知能指数(IQ)= 精神年齢(何歳程度の知的能力があるか)÷ 生活年齢(実年齢)×100 で算出し、年齢相応の知能水準であれば IQ = 100 となります。
IQの平均は100、標準偏差は15あるいは16です。
IQ69とは、平均よりも2標準偏差ほど低い数値であると言え、軽度知的障害(IQ50~69)の範囲にも該当します。
Vineland−Ⅱ(行動適応尺度)とは、適応行動(日常生活の遂行に必要な能力)を把握する検査です。対象者の様子をよく知っている保護者などに半構造化面接を行います。各下位領域でv 評価点と呼ばれるスコアが算出され、平均は15、標準偏差は3とされています。
v評価点9〜11とは、平均よりも1~2標準偏差ほど低い数値であり、適応行動の能力が低いと解釈できます。
1 記述のとおりです。検査結果から評価すると、いずれの能力も低いと言えます。したがって、記述は適切であると考えられます。
2 適応行動の評価点は平均よりも低いため、記述は誤りとなります。
3 学習障害とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、読み書きや計算などの習得や発揮に困難が生じる障害を指します。
Aの田中ビネー知能検査の結果を見ると、知的発達に遅れがある可能性が少なからず考えられるため、記述は適切とは言えません。
4 保護者が継続的にサポートすることで、家庭においては教えれば出来るということもあり得るとは考えられます。しかし、2つの検査結果という客観的な指標から見ると、Aが授業についていけない要因として、やはりAの能力的な要因は否定できず、「学校の教授法に問題がある可能性が高い」とまでは言い難いと考えられます。
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02
正答は1です。
〈田中ビネー知能検査〉
対象年齢は2歳から成人です。
検査は、2〜13歳と成人級(14歳以上)に分かれており、全113問の問題で構成されています。
結果の算出方法は、2〜13歳までは精神年齢を算出し、知能指数(IQ)で示します。知能指数の計算式は以下の通りです。
知能指数(IQ)= 精神年齢 ÷ 生活年齢(実年齢)×100
IQの平均値は100、標準偏差は15です。
成人(14歳以上)は精神年齢を算出せず、偏差知能指数(DIQ)を使用します。
知能をより詳しく領域ごとに分けて評価する領域別評価(結晶性領域、流動性領域、記憶領域、論理推理領域の4領域)によって、領域別DIQと総合DIQを算出し、プロフィールなどで特徴を示します。
〈Vineland-Ⅱ (適応行動尺度 第2版)〉
対象年齢は0歳〜92歳で、全般的な適応行動をアセスメントする心理検査です。
対象者の様子をよく知る保護者や近親者などに半構造化面接を行います。
2つの構成に分けられており、 一つは個人の適応行動のレベルを領域ごとに測定する 「適応行動評価」、もう一つは、個人の社会生活に関して問題となるような行動を測定する 「不適応行動評価」です。それぞれがより詳細な領域によって構成されています。
「適応行動評価」 では、「コミュニケー ション」「日常生活スキル」「社会性」「運動 スキル」 の各領域と、それらを総合した「適応行動総合点」(ともに平均100、標準偏差15の標準得点)によって、対象者の適応行動の全体的な発達水準が分かります。
また、各領域を構成する下位領域では、 v 評価点と呼ばれる標準スコア(平均15,標準偏差3の標準得点)が算出され、領域内における発達の凹凸が分かります。
「不適応行動評価」 では、「内在化問題」「外在化問題」 およびそれらを総合した 「不適応行動指標」 でそれぞれ v 評価点が得られます。
「知的能力障害」とは、知的障害や精神遅滞のDSM-5における名称です。
DSM-5(2013)では、「知的能力障害は発達期における知的機能と適応機能両面の欠陥を含む障害」と診断基準が変更されました。
そのため、知能指数(IQ)70以下(標準偏差2つ分以下)というだけでなく、適応行動の面からも困難が認められる場合に「知的能力障害」と診断されるよう変更されました。
1 .Aは田中ビネー知能検査ではIQ69と70以下である為、軽度知的障害に該当する水準です。
そして、適応行動をアセスメントするVineland-Ⅱでは、各下位領域のv評価点は9〜11と平均15より−2SDないしは−1SDに位置する低い得点となっています。
よって、選択肢1がAの評価として適切だと判断できます。
2 .適応行動をアセスメントするVineland-Ⅱでは、評価点は9〜11と平均15より−2SDないしは−1SD低い得点となっており、平均的ではありません。
よって、選択肢2は、不適切です。
3 .学習障害の定義は以下の通りです。
・基本的には全般的な知的発達に遅れはない。
・聞く、話す、読む、書く、計算するまたは推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す。
・その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
Aは田中ビネー知能検査ではIQ69と知的機能の低さが示されており、知的発達に遅れはないとする学習障害には当てはまりません。
よって、選択肢3は、不適切です。
4 .知的機能が低くても、その子に合った適切な指導で学習ができる場合は多々あります。
しかし、田中ビネー知能検査ではIQ69と知的機能の低さが客観的な数値として示されている為、Aが「授業についていけない」ことを「学校の教授法に問題がある可能性」と判断するのには無理があるでしょう。
よって、選択肢4は、不適切です。
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03
正答は1です。
8歳男児Aの事例で、知的能力障害のアセスメントについて問われています。
田中ビネー知能検査と、Vineland-Ⅱの結果の読み取りについて理解しておく必要があります。
〇田中ビネー知能検査
IQ70を目安に知的能力障害を診断する基準があります。
AはIQ69ですので、「知的機能が低く」という記述は、正しいです。
〇Vineland-Ⅱ
Vineland-Ⅱは、発達障害や知的能力障害のコミュニケーション、社会性など子どもの適応に関する検査です。
行動や情緒の特性傾向を把握するものです。
v評価点が平均15、標準偏差3に標準化されている検査です。
Aはv評価点が9~11ということですので、「低い」と考えられます。
したがって、「知的機能が低く、適応行動の評価点も低い」と記述されている1が適切です。
2.「適応行動の評価点は平均的」と書かれていますので、不適切です。
3.「学習障害の可能性が高い」と書かれていますが、児童精神科クリニックを受診した際にアセスメントで用いた田中ビネー知能検査およびVineland-Ⅱから、学習障害の可能性を示唆する情報は得られていませんので、不適切です。
4.「学習の教授法に問題がある可能性が高い」と書かれていますが、その理由や根拠が、問題文の事例からは読み取れませんので、不適切です。
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