公認心理師の過去問
第3回(2020年)
午前 問74

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問題

公認心理師試験 第3回(2020年) 午前 問74 (訂正依頼・報告はこちら)

21歳の男性A、大学3年生。Aは将来の不安を訴えて、学生相談室を訪れ、公認心理師Bと面談した。Aは、平日は大学の授業、週末はボクシング部の選手として試合に出るなど、忙しい日々を送っていた。3か月前にボクシングの試合で脳震とうを起こしたことがあったが、直後の脳画像検査では特に異常は認められなかった。1か月前から、就職活動のためにOBを訪問したり説明会に出たりするようになり、日常生活がさらに慌ただしくなった。その頃から、約束の時間を忘れて就職採用面接を受けられなかったり、勉強に集中できずいくつかの単位を落としてしまったりするなど、失敗が多くなった。
BのAへの初期の対応として、不適切なものを1つ選べ。
  • 高次脳機能障害の有無と特徴を評価する。
  • 医師による診察や神経学的な検査を勧める。
  • 不安症状に対して、系統的脱感作の手法を試みる。
  • 現在悩んでいることを共感的に聴取し、問題の経過を理解する。

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この過去問の解説 (3件)

01

正答は3です。

1 高次脳機能障害とは、怪我や病気によって脳が損傷し、日常生活や社会生活に支障をきたす症状が生じている状態を指します。主な症状としては、記憶障害や注意障害(ぼーっとしてミスが多い、一度に2つのことを同時に行うと混乱する等)、機能遂行障害(自分で計画を立てること・実行することが困難、時間を守れなくなる等)、社会行動障害(感情や行動がコントロールできなくなる等)が挙げられます。

本文には1か月前から「約束の時間を忘れて就職採用面接を受けられなかったり、勉強に集中できずいくつかの単位を落としてしまったりするなど、失敗が多くなった」との記述があり、注意や機能遂行などにおいて問題が生じている点が窺えます。

これらは、ボクシングで脳震盪を起こした後の出来事であり、直後に異常が見られなかったとしても後になって症状が生じることもあり得ます。そのため、外傷による障害の可能性は否定できず、高次脳機能障害の有無や特徴を評価することは、適切であると考えられます。

2 (1)に記述したように、高次脳機能障害の可能性が考えられるため、医師による診察や神経学的な検査を勧めることは必要です。

3 一般的な見立ての流れとして、脳や身体の外傷や疾患(外因)から検討していき、該当しない場合に内因、心因と検討していきます。

この場合、Aは将来が不安であるとの主訴で来談していますが、失敗が多くなったことの要因として脳の損傷が疑われる状態です。つまり外因性の可能性を優先して検討することが一般的であるため、初期対応としては不適切となります。

4 Aが悩んでいることを傾聴し、共感的理解を示すことは治療関係の構築において重要な対応であり、このケースに限らず初期の対応としては望ましいと考えられます。

さらに、こうした対応によってAに起こった出来事やその経緯をより詳しく理解することが可能になり、見立てを行う上で役立ちます。

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02

正答は3です。

「高次脳機能障害」とは、頭の怪我や病気による脳の損傷によって、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害が生じ、日常生活や社会生活に支障をきたしている状態のことです。

1 .Aは3ヶ月前にボクシングの試合で脳震とうを起こしてから2ヶ月経った頃に、「約束の時間を忘れて就職採用面接を受けられなかった」という遂行機能障害や、「勉強に集中できずいくつかの単位を落としてしまった」という注意障害などの認知障害が生じています。

そのため、高次脳機能障害の可能性を考え、他に認知障害のエピソードはないか聞き取りなどをし、「高次脳機能障害の有無と特徴を評価する」という選択肢1の対応は適切です。

2 .脳の損傷による高次脳機能障害の可能性がある場合、医療機関に繋ぐことが最優先となります。医学的・身体的治療が優先されると考えられる場合は、学生相談室での支援は不適切でしょう。

よって、選択肢2は適切な対応です。

3 .Aの不安症状が、この1ヶ月で急に生じた脳の損傷による認知障害が要因である可能性がうかがえます。そのため、医療機関の受診や検査、そして医学的・身体的治療が優先されます。

医療機関へのリファーが優先されるクライエントに、選択肢3のような「不安症状に対して、系統的脱感作の手法を試みる」のは、不適切な対応だと考えます。

4 .Aから3ヶ月前にボクシングの試合で脳震とうを起こしてからの経過を詳しく聴取し、どのような認知障害が生じているのかを理解し、医療機関へ情報提供することは適切です。その場合にはクライエントの承諾を得た上で情報提供を行う必要があります。

よって、選択肢4は適切な対応です。

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03

正答は3です。

21歳の男性Aは、将来の不安を訴えて、学生相談室を訪れましたが、脳震とうのエピソードが話されたことから、身体の状態と心理的状態に対して、初期の段階から注意深く対応をしなければならない事例です。

1.高次脳機能障害の有無と特徴を評価することは、適切です。

高次脳機能障害は、脳の器質的病変となる事故による受傷が確認され、現在、日常生活または社会生活において、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害があるときに診断されます。

Aには脳震とうのエピソードの後、約束の時間を忘れたり、勉強に集中できなかったりといった認知の問題が見られますので、Aの身体の状況の評価や、高次脳機能障害の評価をすることは重要です。

2.医師による診察や神経学的な検査を勧めることは、適切です。

1と同様に、約束の時間を忘れたり、勉強に集中できなかったりといった認知の問題について、何らかの問題が隠れている可能性があります。

医師の診察を受けてもらい、医師と連携してAの支援を行っていくことは重要です。

3.系統的脱感作の手法が、現在のAにとって適切かどうかは、現時点では分かりません。

Aの状態がよく分からないまま介入を試みることは、不適切です。

医療的な介入の後に、心理的介入について検討していく必要があります。

4.Aの現在悩んでいることを共感的に聴取し、問題の経過を理解することは、適切な対応です。

Aとラポールの形成を行い、Aを心理的に支援していくことが重要です。

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