公認心理師の過去問
第3回(2020年)
午後 問79
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問題
公認心理師試験 第3回(2020年) 午後 問79 (訂正依頼・報告はこちら)
精神科領域における公認心理師の活動について、適切なものを1つ選べ。
- 統合失調症患者に対するソーシャルスキルトレーニング<SST>は、個別指導が最も効果的とされる。
- 神経性やせ症/神経性無食欲症の患者が身体の話題を嫌う場合、身体症状に触れずに心理療法を行う。
- 精神疾患への心理教育は、家族を治療支援者とするためのものであり、当事者には実施しない場合が多い。
- 境界性パーソナリティ障害の治療では、患者への支援だけではなく、必要に応じてスタッフへの支援も行う。
- 妊産婦に精神医学的問題がある場合、産科医が病状を把握していれば、助産師と情報を共有する必要はない。
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この過去問の解説 (3件)
01
正答は4です。
1 ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、「社会生活技能訓練」と訳されるように、社会で生活していく上で求められる、対人関係を円滑に運ぶスキルや問題解決ができるスキルなどを身に付けることを目的としています。集団で行うことによって、ロールプレイに対する他者からのフィードバックが得られたり、他者の言動から学びが得られたりするなど、集団で行うことへの効果は大きいとされています。したがって、記述は適切でないと言えます。
2 神経性やせ症/神経性無食欲症は、身体的な合併症を伴うことも多く、それが生命を脅かす危険性もあります。そのため、クライエントが嫌がる場合であっても、必要なことであるとして身体症状に触れることは間違っていないものと考えられます。
3 精神疾患においては、家族の理解や協力が大切であると言われており、家族への心理教育は重要です。また、自らの疾患に対する理解を深め、コントロールすることが肝要であるため、当事者に対しての心理教育もまた重要となります。したがって、記述は不適切です。
4 境界線パーソナリティ障害の特徴としては、見捨てられ不安が強く相手の関心を惹こうとなりふり構わぬ努力をする、気分や対人関係が理想化とこきおろしの両極を揺れ動き不安定である、自己破壊的行動を繰り返す、などが挙げられます。援助者としては、そうした激しい衝動行為や対人操作に振り回されないことが重要となるため、スタッフへの支援を行うことで疲弊を防ぎ、安定した援助につながることが考えられます。
5 妊産婦に精神医学的問題がある場合は、チーム医療で対応することが大切であり、実際に妊産婦に関わる機会の多い助産師にも情報共有を行うべきであると考えられます。したがって、誤記述は不適切です。
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02
正答は4です。
1 .ソーシャルスキルトレーニング〈SST〉とは、「社会生活技能訓練」などと訳される、認知行動療法に基づいた支援技法です。生活の中で必要とされる対人関係を円滑にするスキルや、ストレス対処、問題解決などのスキルを習得する目的で行われる、小グループによる体験学習です。小グループの人数は6人〜12人くらいが行いやすいようです。
よって、選択肢1「統合失調症患者に対するソーシャルスキルトレーニング〈SST〉は、個別指導が最も効果的とされる」は不適切です。
2 .神経性やせ症/神経性無食欲症では、ボディイメージのゆがみがみられ、明らかな低体重・低栄養状態にも関わらず、患者はその重篤さを認識できません。
治療では、食行動の改善、それに伴う身体面の改善(体重増加・月経回復)、心理面の改善、学校や職場での適応などを目標とします。正常な食事習慣を確立し、正常な体重を達成することに重点を置いた精神療法がしばしば用いられます。
よって、神経症やせ症の患者が身体の話題を嫌う場合でも、公認心理師は低体重・低栄養による身体症状について心理教育や認知行動療法などを行い、食行動の改善と身体症状の改善を目指します。併せて心理面や社会適応の問題などにも触れ、支持的な心理療法を行うのが基本です。
よって、選択肢2は誤りです。
3 .精神疾患への心理教育は、家族だけでなく当事者にも実施します。病気の概要、治療方法、経過を知ることで、病気に対する理解を深め、症状のコントールや薬物療法の重要性、日常生活での対処法や再発防止について学びます。
よって、選択肢3は誤りです。
4 .境界性パーソナリティ障害の特徴は、見捨てられ不安が強く、理想化とこきおろしの両極を揺れ動く不安定で激しい人間関係をもち、自己像や感情の不安定さ、自殺企図や突発的な攻撃性などの著しい衝動性などが挙げられます。
境界性パーソナリティ障害の治療には薬物療法と心理療法が行われますが、対人関係や感情の不安定さを特徴とする境界性パーソナリティ障害のクライエントは、安定した治療関係を結ぶことが困難となります。そのため詳細な治療構造を設定していき、混乱を防ぐようにしますが、境界性パーソナリティ障害のクライエントは、治療構造を守らない抵抗や行動化が生じることが多く、公認心理師だけでなくスタッフの対応も必須となります。
また、境界性パーソナリティ障害のクライエントの支援では、自殺企図などの衝動的な行動や突発的な怒りを向けられることなどもあり、その対象は担当の公認心理師だけでなく、周囲のスタッフに及ぶ場合もあります。支援環境全体で対応せざるを得ない場面もありますので、スタッフにも境界性パーソナリティ障害の特徴について理解を促し、対応について支援を行う必要があるでしょう。
よって、選択肢4が正しいです。
5 .助産師とは、妊娠から出産、育児に至るまで、母子の健康を支える専門職です。出産をサポートして赤ちゃんを取り上げるだけでなく、妊娠期や出産後の健康指導、乳房ケア、新生児のケアなども担います。
妊産婦に精神医学的問題がある場合、産科医だけでなく、助産師とも情報を共有することで、妊産婦の精神状態の変化や家族関係などを把握しやすく、妊娠初期から子育て期まで継続した支援を妊婦健診や産婦検診で行うことが可能です。
よって、選択肢5は誤りです。
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03
正答は4です。
1.統合失調症患者に対するソーシャルスキルトレーニング〈SST〉は、集団指導が効果的とされています。
ソーシャルスキルトレーニングとは、社会生活の中の、対人接触に関わる状況において、ストレス回避やコーピングなどの行動様式を段階的に学んていく認知行動療法です。
2.神経症やせ症/神経性無食欲症の患者が身体の話題を嫌う場合でも、精神科領域における神経症やせ症/神経性無食欲症が主訴の患者であるのであれば、身体症状に全く触れずに心理療法を行うことはできません。
神経症やせ症/神経性無食欲症の患者は、体重や体型に関する自己認識が欠如しているという特徴がありますので、身体の話題に触れていくことは心理療法として有効です。
また、神経性やせ症の重症度が高いと、身体の状況や栄養面での支援も必要となってきますので、身体症状に触れずに心理療法を行うことはできません。
3.精神疾患への心理教育は、家族と同様に、当事者にも実施することが多いです。
心理教育とは、受容が困難な問題を持つ人やその家族に対して、正しい知識や情報を伝えることです。
また、病気や障害によってもたらされる問題への対処法を身につけさせる教育のことです。
心理教育を行うことで、疾病の再発防止に効果があるとされています。
4.境界性パーソナリティ障害の治療では、患者への支援だけではなく、必要に応じてスタッフへの支援も行います。
境界性パーソナリティ障害の患者は、激しい対人関係をもちますので、スタッフが振り回されたり、巻き込まれたりする可能性があります。そのため、必要に応じてスタッフへの支援も行っていきます。
5.妊産婦に精神医学的問題がある場合、助産師とも情報を共有することが必要です。
公認心理師が多職種連携をすることは、重要です。
公認心理師法第42条第1項において、「保健、医療、福祉、教育等の関連する分野の専門家たちと連携を保つこと」が定められています。
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