公認心理師の過去問
第3回(2020年)
午後 問85
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問題
公認心理師試験 第3回(2020年) 午後 問85 (訂正依頼・報告はこちら)
パーソナリティの理論について、正しいものを1つ選べ。
- 場理論では、環境とパーソナリティの二者関係をモデル化する。
- 期待−価値理論では、個人が生得的に有する期待、価値の観点からパーソナリティの個人差を考える。
- 5因子理論では、5つの特性の上位に、行動抑制系、行動賦活系という2つの動機づけシステムを仮定する。
- 認知−感情システム理論では、個人の中に認知的・感情的ユニットを仮定し、パーソナリティの構造を捉える。
- パーソナル・コンストラクト理論では、個人の中にコンストラクトと呼ばれる単一の認知的枠組みを仮定する。
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この過去問の解説 (3件)
01
正答は4です。
1 場理論とは、人間の行動を、個人の特性と取り巻く環境との関数、つまり相互作用によって説明している理論であり、レヴィンによって提唱されました。
「環境とパーソナリティの二者関係」という点において、行動についても影響を与える要素であると考えると正答とは言い難く、他の選択肢の方が適切であると言えます。
2 期待−価値理論とは、人が行動する動機付けの強さを、目標達成の可能性(期待)と結果に対する報酬(価値)によって説明する考え方です。
パーソナリティの個人差ではなく、行動の動機付けに関する理論であるため、誤りとなります。
3 5因子理論(ビックファイブ理論)では、人間の個性や性格は以下の5つの要素の組み合わせで構成されると考えられています。①開放性(好奇心旺盛、新しいことへ前向き)、②誠実性(責任感、勤勉)、③外向性(活動的、社交性)、④調和性(協調性、利他的)、⑤神経症的傾向(情緒・感情の安定性)。
5因子理論には「行動抑制系」「行動賦活系」との分類はなく、これらはグレイによる『気質モデル』の概念であるため、誤りとなります。
4 認知−感情システム理論においては、パーソナリティは認知・感情・動機などのユニットが影響し合っているサブシステムで構成されており、人がある状況や場面に遭遇した際、複数のユニットで処理がなされ、次のユニットへ情報伝達し、それが行動を規定すると考えられています。このパターンを把握することでパーソナリティを捉えることができるとされており、記述は正しいです。
5 パーソナル・コンストラクト理論では、感覚器を通して得た外界からの情報を、人それぞれに持つ情報を理解・判断する仕組み(コンストラクト・認知構造)によって理解し、行動を決定するといったプロセスが示されています。
コンストラクトは単一の認知的枠組みではないと言えますので、誤りとなります。
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02
正答は4です。
1 .場の理論とは、ゲシュタルト心理学者のレヴィンによって提唱された理論です。
この理論では、人と環境とが相互関連しているひとつの場の構造を「生活空間」と定義し、人の行動を B = f (P・E) という式で表せるとしました。
B = Behavior(行動)、P = Personality(人間性、価値観、性格など)、E = Environment(周囲の状況、集団の規制、人間関係など)のそれぞれの頭文字です。
f は関数 (function)という意味です。
人の行動は、人とそれを取り巻く環境との関数関係であるとし、その相互作用で決定すると考えました。
また、P と E を包含する全体が生活空間であり、行動(B)を理解することは、生活空間を理解することであると主張しました。
「環境とパーソナリティの二者関係」ではない為、誤りとなります。
2 .期待−価値理論とは、行動の動機付けは、目標達成の可能性が高いという期待と、その目標達成によってもたらされる報酬の価値との関数であるとする理論です。
J.W.アトキンソンのモデルが有名です。
「個人が生得的に有する期待」ではない為、記述は誤りです。
3 .5因子理論(ビッグファイブ)とは、人間のパーソナリティは5つの基本特性因子で構成されているという理論です。
5つの基本特性因子には、外向性(活動的、社交的)、神経症傾向(情緒的な不安定さ、抑うつ)、開放性(好奇心、想像力)、調和性(共感的、思いやり)、誠実性(秩序的、勤勉)があります。
NEO-PI-Rは、この5因子理論に基づく人格検査です。
「行動抑制系、行動賦活系という2つの動機づけシステム」は、グレイ(Gray,J.)の気質モデル「強化感受性理論」の中で定義されているシステムの為、記述は誤りとなります。
4 .認知−感情システム理論とは、Mischel&Shoda (1995) が状況と人の力動的な相互作用や双方向的な相互作用を重視し、提唱したパーソナリティモデルです。
この理論では、パーソナリティは認知・感情・動機等のユニット(=サブシステム)で構成され、これらのサブシステムは全体として統合的なシステムを構成していると考えられています。
そのシステムを構成する変数は、個人ごとに「If - Then」に基づく領域特定的・文脈依存的な性質を持ち、通状況的・領域的に見れば、そこには個人を特徴づける状況−行動パターン(=行動指紋)が存在するとしています。
この行動指紋を把握し、パーソナリティの構造を捉えるということなので、正しい記述となります。
5 .パーソナル・コンストラクト理論とは、ケリー(Kelly, G. A.)が提唱したパーソナリティ理論です。
この理論では、目や耳などの感覚器を通して得た外界からの情報を、認知構造と呼ばれる各人に固有な理解や判断の仕組み(コンストラクトシステム)によって情報処理することで環境を理解し、どんな行動をとるべきか決定し、さらにその結果を予測しようと努めていると考えます。
コンストラクトとは、「人間が目や耳などの感覚器で知覚した環境を意味のある世界として理解する際の認知の最小単位」であり、ケリーは人が保有するコンストラクトの構造や内容を知ることが、その人のパーソナリティを理解することであるとしています。
個人の中にあるコンストラクトは、「単一の認知的枠組み」ではない為、誤りとなります。
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03
正答は4です。
1.場の理論は、レヴィンが提唱した集団力学の概念です。
2.期待 − 価値理論は、人の認知や意思決定を説明する理論です。パーソナリティに特化した理論ではありません。
3.5因子理論とは、性格・特性5因子モデル(Big Five)のことです。
Goldberg, L. R. が1990年に、人格は5つの因子で構成されることを、因子分析により見出しました。
神経症傾向、外向性、経験への開放性、協調性、誠実性の5つの特性があるのが5因子理論です。
行動抑制系、行動賦活系という動機づけシステムが含まれる理論ではありませんので、この選択肢は誤りです。
4.認知 − 感情システム理論は、ミシェルが提唱しました。
パーソナリティから行動が直接出力されるのではなく、環境をどのように理解するかというプロセスを入れることで、状況による行動の差異をも説明する理論です。
「個人の中に認知的・感情的ユニットを仮定し、パーソナリティの構造を捉える」という、記述の通りです。
5.パーソナル・コンストラクト理論は、対人認知の理解を目指して提唱されている理論です。
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