公認心理師の過去問
第3回(2020年)
午後 問94
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問題
公認心理師試験 第3回(2020年) 午後 問94 (訂正依頼・報告はこちら)
遺伝カウンセリングにおいて、経験的再発危険率が最も重要な疾患として、正しいものを1つ選べ。
- 統合失調症
- ダウン症候群
- Huntington病
- 家族性Alzheimer病
- 筋緊張性ジストロフィー症
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この過去問の解説 (3件)
01
正答は1です。
遺伝カウンセリングとは、染色体や遺伝子が関与している病気に関する様々な問題について、不安や悩みを受け止め、医学的情報を提供し、理解を得て自己決定を促すことなどを目的に行われています。
そして、再発危険率には「理論的再発率」と「経験的再発率」の2種類が存在します。
「理論的再発率」とは、1つの遺伝子が原因である疾患の場合で、遺伝形式に基づいた理論的な計算で再発率を算出したものを指します。
一方、「経験的再発率」とは、1つの遺伝子だけが原因ではない疾患の場合は理論的再発率を算出することができないため、家系調査のデータなど過去の経験に基づいて再発率を算出したものを指します。
1 統合失調症は、遺伝要因と環境要因が関係していると考えられている精神疾患です。単一因子だけが原因とはされていないため、理論的再発率ではなく経験的再発率が重視されます。
なお、一般人口での生涯有病率は約1%であることに対して、一方の親が統合失調症の場合の子の発症率は約10%程度、両親とも統合失調症の場合は45~50%の発症率とされており、同様に経験的再発率で考える(2)ダウン症候群に比べて高いことから、より重要視するものと考えられます。よって、正答となります。
2 ダウン症候群は、染色体異常によって発症する疾患のひとつであり、21番染色体が1本多くに存在する(21トリソミー)型が最も多いとされています。多くは遺伝によるものではないと考えられており、両親の染色体に問題がなくても発症すると言われています。なお、母親の年齢が高くなると染色体異常を持って生まれる確率が高くなります。
ダウン症候群では、理論的再発率よりも経験的再発率が重要となるため、誤りとまでは言えませんが、遺伝による確率は統合失調症に比べて低いことから、(1)の方が適していると考えられます。
3 ハンチントン病とは、舞踏運動などの随意運動や精神症状、認知機能障害などが見られる遺伝性疾患です。常染色体優性遺伝を示すと言われています。
常染色体優性とは、どちらかの親から特徴の出やすい遺伝子(優性遺伝子)を受け継ぐことを指し、子どもが両親のどちらか一方から優性遺伝子を受け継ぐ可能性は50%の確率と考えられています。単一の遺伝子が原因の疾患であり、理論的再発率が算出可能となるため、誤りとなります。
4 家族性アルツハイマー型とは、認知症の原因疾患のひとつであり、特徴は20歳代後半から50歳代に発症しやすいといった発症年齢の早さが挙げられます。遺伝性の疾患で、常染色体優性遺伝を示すと言われています。親の一方が家族性アルツハイマー病の場合、優性遺伝子を受け継ぐ可能性は50%の確率と考えられます。単一の遺伝子が原因の疾患であり、理論的再発率が算出可能となるため、誤りとなります。
5 筋緊張性ジストロフィー(筋強直性ジストロフィー)症とは、筋強直や筋萎縮が特徴である遺伝性疾患です。こちらも常染色体優性遺伝を示すと言われており、理論的再発率が算出可能であるため、誤りとなります。
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02
正答は1です。
遺伝カウンセリングにおいて、再発危険率とは、親族に同じ疾病が発症する確率のことです。
経験的再発危険率とは、再発危険率の推定値を、経験的に導き出したものです。
経験的再発危険率に該当する疾患として、多因子遺伝の統合失調症や糖尿病などがあげられます。
1.統合失調症は、多因子遺伝によるものですので、正しいです。
2.ダウン症候群は、遺伝ではなく、遺伝子異常によるものです。
3.Huntington病は、常染色体優性遺伝によるものです。
4.家族性Alzheimer病は、常染色体優性遺伝によるものといわれています。
5.筋緊張性ジストロフィー症は、常染色体優性遺伝によるものです。
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03
正答は1です。
「遺伝カウンセリング」では、染色体や遺伝子が関与している生まれつきの病気、特性、体質に関する諸問題について相談することができます。
クライエントやその家族のニーズに対応する遺伝学的検査の結果や家族歴などの遺伝情報、関連情報などを提供し、クライエントとその家族がそれらの情報を理解した上で意思決定ができるように援助します。
「経験的再発率」とは、多因子遺伝病や先天奇形、染色体異常などの遺伝カウンセリングで用いられる、家系図などから統計的に求められる経験的なリスク数値のことです。
「理論的再発率」とは、単一遺伝子の場合に、疾患の遺伝形式に基づいた理論的な計算から再発率を推定するものです。
1 .統合失調症は、遺伝的な影響もありますが、他に対人関係、ストレス耐性、脳機能や神経伝達物質など、様々なものが影響して発症する多因子遺伝と考えられています。
統合失調症は単一遺伝子だけが原因ではないため、理論的再発率ではなく、経験的再発率を用います。
そして、片親が統合失調症の場合の子供の発症率は9〜13%、両親が統合失調症の場合の子供の発症率は40%と高く、経験的再発危険率が高い疾患といえます。
2 .ダウン症候群は、染色体異常によって起こる先天異常です。
ダウン症候群には、21番目の染色体の数が1本多い「標準型」が最も多く見られ、この標準型の他に、染色体の構造の違いによって、「転座型」「モザイク型」があります。
遺伝が関係しているのは転座型だけで、全体の5%にすぎません。
ダウン症のほとんどは標準型で、遺伝子とは関係なく、親から受け継いだものではありません。
また、母体の年齢が高齢になると、発症率が高くなるという統計があります。
ダウン症候群は染色体異常による疾患のため、経験的再発率が重要になりますが、遺伝が関係しているのは転座型だけで、ダウン症の多くは遺伝子とは関係のない標準型となります。
よって、統合失調症と比べると経験的再発危険率は低いと考えられます。
3 .ハンチントン病は、自分の意志に反して手足、顔面をピクつかせたり動かしてしまう舞踏運動と、認知機能障害、精神症状(幻覚、妄想、抑うつなど)をきたす遺伝性、進行性の神経疾患です。
特有の症状から慢性舞踏病とも呼ばれます。
常染色体優性遺伝ですので、性別に関係なく遺伝子異常が50%の確率で子孫に伝わります。
ハンチントン病は単一遺伝疾患であり、理論的再発率が算出可能のため、誤りです。
「常染色体優性遺伝」とは、片方の親が、もう片方の親の遺伝子の特性を押さえつけるような遺伝子をもつ場合、その遺伝子を優性遺伝子といい、その遺伝形式を優性遺伝といいます。
問題のある優性遺伝子を両親のどちらかが持つ場合、その遺伝子は50%の確率で子に現れます。
4 .家族性アルツハイマー病は、常染色体優勢遺伝を示す認知症です。発症年齢が早く、20歳代後半から50歳代に発症しやすいと言われています。
両親のどちらかが家族性アルツハイマー病の場合、その子供は50%の確率で家族性アルツハイマー病になると考えられます。
単一遺伝疾患であり、理論的再発率が算出可能のため、誤りです。
5 .筋緊張性ジストロフィー症は、筋強直および筋萎縮を特徴とする遺伝性疾患です。
男性が発症しやすく、女性は多くの場合保因者になります。
筋緊張性ジストロフィー症は常染色体優性遺伝疾患であり、理論的再発率は50%になります。
理論的再発率が算出可能のため、誤りです。
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