公認心理師の過去問
第6回 (2023年)
午前 問59
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問題
公認心理師試験 第6回 (2023年) 午前 問59 (訂正依頼・報告はこちら)
生後11か月の女児A。Aは3か月前から乳児保育所に入所している。入所当初は、登園の際の親子分離時に激しく泣いたが、1か月前頃から徐々に減少し、はいはいで園内を活発に動き回る様子が顕著に観察されるようになってきた。一方、目新しい玩具などを見た際には、未だに警戒し、回避することも多い。しかし、現在は、担当保育者の顔を覗き込み、保育者が自分と同じ玩具などを見て、にこやかな表情を浮かべている際には、接近し手に取って、積極的に遊ぶように変化してきている。
こうしたAの変化の背景に想定される心理的発達として、最も適切なものを1つ選べ。
こうしたAの変化の背景に想定される心理的発達として、最も適切なものを1つ選べ。
- 感情制御
- 共同注意
- 社会的参照
- 向社会的行動
- アタッチメント行動
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この過去問の解説 (3件)
01
対人面の発達に関する問題です。
感情制御とは、「喜怒哀楽の感情を周囲に知られないように、表出を抑えること」であるので、不正解です。
共同注意とは、「他者が見ているものに対して自分も同じように関心を向けること」です。
「指差し行動」「視線の追従」、広い意味では「社会的参照」も共同注意の1つとしてとらえられることもありますが、この事例はより「社会的参照」に焦点を当てた記述になっていますので、この解答は不正解となります。
社会的参照は、1歳ごろから現れる発達段階上の特徴です。
このくらいの年齢になると、転んだ後に保護者の顔色を伺って「心配していれば泣き、笑顔なら泣かない」など他者の反応を確認して行動を決定することがあります。
この問の女児の状況は、社会的参照を示していると考えられますので、正答となります。
向社会的行動とは、「見返りをもとめず自分の意志で他者のためになることを行うこと」を指しますので、不正解です。
アタッチメント行動とは「愛着行動」のことで、「養育者と他者を区別し、養育者に対して積極的に泣く・笑う・声を出す・接近する」などの行動を指します。
この問では担当保育者への愛着はみられますが、「社会的参照」の方がよりこの女児の心理的発達を表しているため不正解となります。
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02
Aさんの行動の変化から、いくつかの心理的発達が考えられます。
安定した親子分離の発達:最初は親子分離時に泣いていたものの、時間の経過とともに泣きが減少してきたことから、安定した親子分離が進んでいる可能性があります。
園での楽しい活動や保育者との信頼関係の構築によって、Aさんが安心感を得ているかもしれません。
新しい刺激への適応:目新しいものに対する警戒心が徐々に減少している様子が見られますが、まだ適応の途中かもしれません。
保育者との接触により、新しいものに対する興味や関心が高まり、少しずつ克服していく可能性があります。
社会的発達:保育者との関係性が重要であり、Aさんが保育者との交流を楽しんでいることがうかがえます。
他者との関わりを通じて、自分や周囲の環境に興味を持ち始めている可能性があります。
Aさんの感情制御の発達があてはまる可能性もありますが、質問に対して直接的な示唆があるわけではないため、他の要素よりも少し不適切かもしれません。
Aさんが保育者と玩具に興味を示していることから、共同注意の側面もあるかもしれませんが、他の要素がより該当する可能性があります。
保育者の表情を覗き込んで笑顔を見せるようになったことから、社会的参照の側面が見られ、正解となります。
Aさんの行動の変化が見られますが、保育者との関わりに焦点を当てた場合、他の要素がより適切であるかもしれません。
Aさんが保育者との接触を楽しむようになり、保育者の顔を覗きこんで笑顔を見せるようになったことから、アタッチメント行動の変化も示唆されていますが、この選択肢では社会的参照がより適切な解答となります。
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03
この事例では、女児Aの現在の様子に注目しましょう。
「現在は、担当保育者の顔を覗き込み、保育者が自分と同じ玩具などを見て、にこやかな表情を浮かべている際には、接近し手に取って、積極的に遊ぶように変化してきている」
とあります。
この状態について、心理的発達の観点から最も適切な語を選びます。
では、選択肢を見てみましょう。
誤りです。
感情制御とは、自分の感じている事をどのように扱い、変化させ、表現するかという事を言います。つまりは、適切に感情をコントロールできるかどうかという事です。
事例にある女児Aの説明では、感情制御の様子は見えにくいと考えられます。
誤りです。
共同注意とは、子どもと母親が同じ物に注意を向けて見るような場面を言います。子どもが見て欲しがっている物を大人も見る、大人が見ている物を子どもも見るような状況があります。
事例の女児Aと担当保育士が同じ玩具を見ている事も想定されますが、女児Aは玩具を見るだけでなく、次の行動もしているため、共同注意だけでは説明しにくいと考えられます。
正答です。
社会的参照とは、子どもにとってまだよく知らない状況、人、物などに対して、身近な大人の反応を見ながら評価をする事を言います。例えば、子どもが初めて会った人でも、母親がその人とにこやかに話していれば、子どもは母親の様子を見て、安心したり、前向きな興味を持ったりする事ができます。
事例の女児Aは、担当保育士が玩具に対してにこやかな表情をしている様子を見て、無意識に「この玩具は安全、おもしろそう、楽しそう」という判断をしていると考えられます。
つまり、この状況は社会的参照と説明する事が適切と言えます。
誤りです。
向社会的行動とは、ご褒美のような報酬がなくても、自分の意志で他者を助けるなど、他者のための行動を起こす事を言います。
事例にある女児Aの説明では、向社会的行動の様子は見えにくいと考えられます。
誤りです。
アタッチメント行動とは、子どもが養育者に対して、抱きつく、後追いする、泣く、笑うなどの行動によって、養育者の気を引こうとする事を言います。
女児Aと担当保育士の間には、信頼関係が築かれていると想像されますが、事例の説明からはアタッチメント行動の様子は見えにくいと考えられます。
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