公認心理師の過去問
第6回 (2023年)
午前 問70
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問題
公認心理師試験 第6回 (2023年) 午前 問70 (訂正依頼・報告はこちら)
15歳の男子A、中学3年生。売却目的でゲームソフトの万引きを繰り返した件で逮捕され、少年鑑別所に収容となった。家庭裁判所の審判では保護観察の決定を受けた。その後、中学校に登校したが、同級生たちから、「鑑別所帰り」と避けられ、親や教師からは、「悪いことをしていないか」と疑われていた。保護観察となって3か月後、Aは万引きで逮捕された。
Aの再非行を説明する理論として、最も適切なものを1つ選べ。
Aの再非行を説明する理論として、最も適切なものを1つ選べ。
- A. K. Cohen の非行下位文化理論
- D. Matza の漂流理論
- E. H. Sutherland の分化的接触理論
- H. S. Becker のラベリング理論
- T. Hirschi の社会的絆理論
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この過去問の解説 (2件)
01
この問題は、男子Aが万引きを繰り返した事により保護観察の決定を受けたが、3か月後に再び万引きをしてしまったという事例です。
この事例のポイントは、男子Aが保護観察の決定を受けてから、同級生から避けられる、親や教師から悪い事をしているのではないかと疑われるという状況があったという点です。
この状況を説明できる理論を選択します。
誤りです。
非行下位文化理論とは、ある文化の中で小集団で生活している人達、下位の文化で生活している人達が犯罪、非行を起こしやすいと考えるものです。
この事例の男子Aにも当てはまるかもしれませんが、明確な記述はありませんし、他の選択肢により的確なものがあると考えられます。
誤りです。
漂流理論とは、非行少年の生活や考え方は、常に悪い方向、非合法な文化にあるのではなく、善の方向や合法的な文化との間を行き来していると考える理論です。
この事例の男子Aにも当てはまるかもしれませんが、明確な記述はありませんし、他の選択肢により的確なものがあると考えられます。
誤りです。
分化的接触理論とは、人間は生まれ持った性格や特性によって犯罪や非行を起こすのではなく、仲間集団や社会において犯罪の文化を学習してしまうために犯罪や非行が起こすという考え方です。これについて、「犯罪行動は習得される」「コミュニケーションの過程を経て他人から習得される」などの、9つの命題が示されています。
この事例の男子Aにも当てはまるかもしれませんが、明確な記述はありませんし、他の選択肢により的確なものがあると考えられます。
正答です。
ラベリング理論とは、犯罪や非行が起きる理由として、社会が特定の行為を「逸脱」と判定し、レッテルを貼る事によって、その逸脱行為をした者を「逸脱者」とみなすために、逸脱者(犯罪や非行を起こす者)が生み出されると考えるものです。
この事例の男子Aは、学校や家庭という社会へ戻った際に、周囲からレッテルを貼られたために、行動の改善が難しく、再び万引きをしてしまったと考える事ができます。
よって、この問題ではラベリング理論を選択する事が適切と言えます。
誤りです。
社会的絆理論とは、人間が犯罪を犯さないのは社会との絆があるからであり、その絆が壊れたり、弱まったりした時に犯罪が起きるという考え方です。
この事例の男子Aにも当てはまるかもしれませんが、明確な記述はありませんし、他の選択肢により的確なものがあると考えられます。
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02
Aの行動について、選択肢の理論をそれぞれ検討していきます。
社会的な価値観や文化が非行行動を引き起こすという理論です。
しかし、Aの場合、再非行は個人的なラベリングの影響が強く出ているように見受けられます。
よって不適当な解答となります。
非行者が一時的に規範から外れた状態に陥ることで非行を行うという理論ですが、Aのケースではラベリングによる影響が強調されています。
よって不適当な解答となります。
犯罪行動は犯罪者との接触によって生じるとする理論ですが、Aの再非行においては他者との接触よりもラベリングの影響が強いように思われます。
よって不適切な解答となります。
正解です。
この理論によれば、人々が犯罪者や非行者とラベルを貼られた際、そのラベルが彼らの自己イメージと行動に影響を与えるとされています。
Aが少年鑑別所から戻ってきた後、周囲からのラベリング(「鑑別所帰り」というレッテル)が付いたことで、彼の自己イメージや行動に影響を与えた可能性があります。
犯罪を抑制する要素が不十分なために非行が起こるとする理論ですが、Aの場合、周囲のラベリングが再非行に影響している可能性が高いと考えられます。
よって不適切な解答となります。
以上の検討の結果、Aの再非行を説明するには「4. H. S. Becker のラベリング理論」が最も適切です。
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