公認心理師の過去問
第6回 (2023年)
午前 問71

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

公認心理師試験 第6回 (2023年) 午前 問71 (訂正依頼・報告はこちら)

21歳の女性A、大学3年生。Aは、同居中の19歳の妹Bに連れられて総合病院精神科を訪れた。Aは1か月前から不眠を訴え、2週間前から部屋に閉じこもり、食事を摂らなくなった。心配したBが話を聞くと、「盗聴器が仕掛けられている。食べ物の味がおかしい」と言う。Bは嫌がるAを何とか病院に連れてきた。診察した精神保健指定医は入院治療が必要と判断し、Aに説明を行い、BもAを説得したが、Aは、「自分は病気ではない」と拒否し、激しく興奮した。両親は遠方に在住しており、この時点で連絡がつかない。
Aを入院させる場合の入院形態として、最も適切なものを1つ選べ。
  • 応急入院
  • 措置入院
  • 任意入院
  • 医療保護入院
  • 緊急措置入院

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

この事例のポイントを整理しましょう。

・女性Aは、精神保健指定医によって入院治療が必要と判断されている。

・女性Aは入院を拒否している。

・妹Bは女性Aの入院に同意している。

「精神疾患により入院を必要としており、家族は同意しているが、本人は拒否している状況」とまとめる事ができます。

この際に、最も適切な入院形態を選択します。

精神障害者の入院については、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に記載があります。

選択肢1. 応急入院

誤りです。

応急入院については、第三十三条の七に記載があります。

精神保健指定医が急速な入院が必要と判断した場合には、家族や患者本人の同意がなくても72時間に限り入院させる事ができます。

この事例では、家族の同意が得られているので当てはまらないと考えられます。

選択肢2. 措置入院

誤りです。

措置入院については、第二十九条に記載があります。

二人以上の精神保健指定医の診察により、患者本人に自傷他害の可能性があると判断された場合、都道府県知事の依頼により入院が認められます。

この事例では、一人の精神保健指定医が診察している様子ですので当てはまらないと考えられます。

選択肢3. 任意入院

誤りです。

任意入院については、第二十一条に記載があります。

患者自身の意思による入院を言います。

この事例では、本人が拒否しているため当てはまらないと考えられます。

選択肢4. 医療保護入院

正答です。

医療保護入院については、第三十三条に記載があります。

精神保健指定医の診察により、患者本人に入院が必要と判断された場合、その家族などの同意があれば、患者本人の同意がなくても入院させる事ができます。

この事例の状況に最も当てはまると考えられます。

選択肢5. 緊急措置入院

誤りです。

緊急措置入院については、第二十九条の二に記載があります。

急速な入院を必要としているが、措置入院の手続きをとる事ができない場合の入院を言います。

この事例では、当てはまらないと考えられます。

まとめ

公認心理師が精神障害者の入院手続きを行う事は考えにくいですが、入院形態や手続きを把握しておく事により、クライエントのアセスメントや状況の理解に繋がりますので、基本的な知識を持っておきましょう。

参考になった数6

02

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)の中の、精神科入院に関する問題です。

詳しく見ていきましょう。

選択肢1. 応急入院

応急入院は、本人が同意していなくても「精神保健指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であって当該精神障害のため任意入院が行われる状態にないと判定されたもの、またはこれと同じ判定を受けて急を要し、その者の家族等の同意を得ることができない場合として都道府県知事が移送したもの」に対して行われます。

期間は精神保健指定医の診察による場合は72時間、特定医師の診察による場合は12時間に限られています。

この期間を超えて入院継続する場合は、他の入院形態(医療保護入院や任意入院)に切り換える必要があります。

Aには成人した妹Bが同居していますので、Bの同意をとることができれば応急入院の形態ではありません。

よって不正解です。

選択肢2. 措置入院

措置入院は、都道府県知事の権限により「精神障害者であり,かつ,医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自傷他害の恐れがあると認める」場合に都道府県職員立ち会いのもと、2名以上の精神保健指定医の診察で必要と判断された場合に行われるものです。

入院時には書面を用いて、都道府県職員が入院について告知します。

家族等がいる場合は、まず医療保護入院が検討されますので、この解答は不正解です。

選択肢3. 任意入院

任意入院とは、「本人が入院を希望し、医師もその必要性を認めた場合」の入院のことです。

Aは入院を希望していませんので、不正解です。

選択肢4. 医療保護入院

医療保護入院とは「精神障害のために入院が必要だが本人が同意しない場合、精神保健指定医の診察のもと、家族等(配偶者、親権者、扶養義務者、後見人または保佐人)の同意により、本人の同意を得ることなく入院させること」です。

連絡のとれる家族等がいない場合、代わりに市町村長の同意が必要です。

この場合の家族等は、成人(18歳以上)であることが条件です。

妹は19歳ですので、妹が同意すれば入院は可能です。よってこの解答が正解です。

選択肢5. 緊急措置入院

緊急措置入院は、「急を要し、都道府県職員の立ち会い、精神保健指定医2名以上の診察など措置入院に必要な手続きをすぐに行うことが難しい場合に行なわれる」形態です。

精神保健指定医1名の診察により判断が行われますが、入院期間は72時間に限られ、それを超えて入院継続する場合は、通常の措置入院手続きをとるか、他の入院形態(医療保護入院や任意入院)に切り換える必要があります。

Aの状況にはあてはまりませんので、不正解です。

参考になった数4

03

Aの入院形態について、このような状況では最も適切な入院形態を検討していきます。

選択肢1. 応急入院

「応急入院」は、急な健康状態の悪化や外傷などの緊急の場合に行われますが、Aの状態は精神的な問題であり、健康面での急なリスクが発生しているわけではありません。よって不適当な選択肢となります。

選択肢2. 措置入院

「措置入院」は、精神疾患の治療や症状の安定を図るための入院であり、自己の判断能力が低下している場合に実施されますが、Aは現時点で自らの病気を認めず入院を拒否しています。よってこの場合は不適当な選択肢となります。

選択肢3. 任意入院

「任意入院」は患者が自ら入院を希望し、その同意が得られた場合に行われますが、Aは入院を拒否しているためこれも適切ではありません。

選択肢4. 医療保護入院

正解です。

「医療保護入院」は精神障害者保健福祉手帳を持つ人など、自己の意思による判断が困難な場合に行われる入院形態です。Aの場合には、成人した家族(妹)の同意があれば入院させることができます。

選択肢5. 緊急措置入院

「緊急措置入院」は入院できる期間が限られています。

Aの状態が急激に悪化しており、自己判断能力が低下しているため、入院処置を行い、治療を開始する必要がありますがこの場合は不適切な選択肢となります。

まとめ

以上の検討の結果、今回は「医療保護入院」が最も適切な選択です。

参考になった数2