公認心理師の過去問
第6回 (2023年)
午前 問73

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問題

公認心理師試験 第6回 (2023年) 午前 問73 (訂正依頼・報告はこちら)

45歳の男性A。公認心理師Bが勤務する精神科クリニックを受診した。Aは医師Cの診察で、「職場の上司との関係が悪化し、自尊心が低下している。上司は自分の態度が気に入らないのか、ちょっとしたミスを見つけては注意をしてくる。最近では、言い返すことにも疲れ果てた。これ以上生きていても意味が無いと思い、死ぬことばかりを考えている。先日は、踏切の前でしばらくたたずんでいた」と語った。Cは、薬物療法と並行して、認知療法に基づいた支援の導入の検討をBに依頼した。
Bが認知療法に基づいた支援を導入する際に、考慮すべきこととして、不適切なものを1つ選べ。
  • 長期的な関わりを想定する。
  • 自殺について話し合うことは控える。
  • 良好な面接関係の構築を前提とする。
  • Aを支える周囲の人の援助を得られるように促す。
  • Cによる薬物療法と並行して、なるべく早く導入する。

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この過去問の解説 (3件)

01

認知療法は慎重なアプローチが必要であり、急いで導入するのではなく、クライアントとの信頼関係を築くことが重要です。それぞれの選択肢を検討していきます。

選択肢1. 長期的な関わりを想定する。

これは重要です。認知療法は時間がかかる場合があり、クライアントとの関係を深め、持続的な支援が必要です。よって適切な対応であるため、本問では不正解となります。

選択肢2. 自殺について話し合うことは控える。

正解です。

自殺そのものについて話し合うことは直接的な刺激となり、クライアントの負担を増やす可能性がありますが、その思考に至る経緯を考えることで気づきを促すことにつながるため、一切話し合うことを控えることは不適切と言えます。

よって本問では正解となります。

選択肢4. Aを支える周囲の人の援助を得られるように促す。
  • サポートシステムを作り上げることは重要ですが、クライアントのペースに合わせて進めることが肝要です。よって適切なアプローチと言え、本問では不正解となります。

選択肢5. Cによる薬物療法と並行して、なるべく早く導入する。

認知療法は慎重なアプローチが必要であり、クライアントとの信頼関係の構築が重要ですが、本問の場合にはクライアントの状態も悪いため、なるべく早く導入したほうが良いといえます。

よって適切な判断であるため、本問では不正解となります。

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02

認知療法とは、認知の歪みに焦点を当て、物事や状況の捉え方、考え方を変えていく事によって、症状の改善を図るものです。

物事の捉え方が変わると、ストレスが軽減される、人付き合いがしやすくなるなどの変化が期待され、より健康的に社会生活を送ることへつながります。

では、選択肢を見てみましょう。

選択肢1. 長期的な関わりを想定する。

認知療法は、他の心理療法と比較すれば早く効果が得られると期待されますが、人の考え方を変える事は容易ではありませんので、繰り返しの面接が必要です。

想定としては、長期的に支援すると考える事が適切と言えます。

選択肢2. 自殺について話し合うことは控える。

正答です。

考え方、捉え方を変えていく事が目的ですので、必要があれば自殺についても話題にする事があると言えます。

主治医からの指示も確認しながら、クライエントの状態に合わせた支援が重要です。

選択肢3. 良好な面接関係の構築を前提とする。

認知療法に関わらず、どの心理医療法においても支援者(公認心理師)とクライエントの良好な関係は大切です。

また、認知療法においては「クライエントとセラピストの共同的な治療関係の上に成立する」とされています。

(日本認知療法・認知行動療法学会HPより)

選択肢4. Aを支える周囲の人の援助を得られるように促す。

うつ病などを発症する方の中には、周りからの援助を受ける事が上手でなく、一人で頑張ってしまう方も多いと考えられます。

認知療法に関わらず、周囲からの援助を適切に求め、受けられるように促していく事は適切と言えます。

選択肢5. Cによる薬物療法と並行して、なるべく早く導入する。

認知療法は薬物療法と並行して実施する事により、治療効果が高くなる、再発の防止につながるとされています。

主治医から指示があるのであれば、早期に導入する事が良いと考えられます。

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03

認知療法は、1970年代にうつ病に対する治療法としてベックが開発し、人間の認知の偏りを変容させることで、心理または行動上の問題を解決へと導くものです。

特徴は以下の通りです。

・面接は、15〜20 回前後ほどが基本ですが、クライエントの状態にあわせて延長することもある。

・セラピストはクライエントの主体性を尊重し、自分で答えを見つけ出せるような関わり方(協同的経験主義)をとることが重要。

・「自動思考」(自動的に頭に浮かぶイメージ)に焦点を当てて、認知の歪み・偏りを修正する。

・ホームワーク(宿題)を家で行うことで、面接で話し合ったことを日常生活で実践し、またそれを次の面談で話し合う。

・スキーマ(小さい頃に形作られた否定的な物の見方)を修正する。

それでは、解答を見ていきましょう。

選択肢1. 長期的な関わりを想定する。

15〜20回またはそれ以上の回数がかかりますので、適切です。

選択肢2. 自殺について話し合うことは控える。

自殺そのものについて話し合うのではなく、そこにいたるまでのクライエントの心の状態や思考について話すことが重要ですので、この解答は不適切です。

選択肢3. 良好な面接関係の構築を前提とする。

クライエントとともに話し合う姿勢が重要ですので、適切です。

選択肢4. Aを支える周囲の人の援助を得られるように促す。

周囲の人の援助はどんな心理療法においても重要ですので、適切です。

選択肢5. Cによる薬物療法と並行して、なるべく早く導入する。

自殺の危険性がありますので、なるべく早く導入するのは適切です。

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