公認心理師の過去問
第7回 (2024年)
午前 問60
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問題
公認心理師試験 第7回 (2024年) 午前 問60 (訂正依頼・報告はこちら)
1歳5か月の男児A、初語10か月、初歩11か月。これまでの乳幼児健診では特に発達の問題を指摘されたことはなく、活発で積極的なタイプの子どもである。母親Bによると、Aはこれまであまり手がかからなかったが、最近になって、散歩中に手を繋ぐことを拒否して大声で泣き喚いたり、急に抱っこをせがんできたりと、とても手がかかるようになった。また、Bが一人で外出しようとすると泣いて嫌がるようになり、父親に任せて外出することができなくなってしまった。
Aの発達状況を、M. S. Mahler の理論を通して理解した場合に、最も適切なものを1つ選べ。
Aの発達状況を、M. S. Mahler の理論を通して理解した場合に、最も適切なものを1つ選べ。
- 分化期
- 練習期
- 再接近期
- 正常な共生期
- 正常な自閉期
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この過去問の解説 (2件)
01
この問題では、M. S. Mahlerの分離個体化理論に基づいて、1歳5か月の男児Aの発達状況を理解することが求められています。
Mahlerの理論は乳幼児の心理的発達段階を説明するものであり、各段階の特徴と年齢、そして子どもの行動や母子関係の変化を理解することが重要です。
特に、Aの年齢と最近の行動変化に注目して、理論と照らし合わせて考える必要があります。
この選択肢は不適切です。分化期は通常6~10ヶ月頃で、Aの年齢(1歳5ヶ月)よりも前の段階です。分化期では人見知りが始まりますが、Aの症状とは一致しません。
この選択肢は不適切です。練習期は10~16ヶ月頃で、歩行能力の獲得により母親から離れて探索行動を行う時期です。Aの年齢に近いですが、症状の特徴とは一致しません。
この選択肢が最も適切です。再接近期は16~25ヶ月頃で、Aの年齢と一致します。この時期、子どもは母親との分離に不安を感じ、急に甘えたり分離を嫌がったりする特徴があり、Aの行動と合致します。
この選択肢は不適切です。正常な共生期は生後2~5ヶ月頃で、Aの年齢よりもかなり前の段階です。この時期、乳児は母親と一体感を持っており、Aの現在の状況とは異なります。
この選択肢は不適切です。正常な自閉期は生後0~2ヶ月頃で、Aの年齢よりもはるかに前の段階です。この時期、新生児は外界との関わりが少なく、Aの状況とは全く異なります。
M. S. Mahlerの分離個体化理論において、1歳5ヶ月児の行動は再接近期に該当します。
この時期、子どもは自立と依存の葛藤を経験し、母親との分離に不安を感じます。急な甘えや分離不安、母親の外出への抵抗などの行動は、この時期の特徴的な症状です。
各発達段階の年齢範囲と特徴を理解し、子どもの行動と照らし合わせて考えることが重要です。
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02
マーラー(M.S.Mahler)の理論は、分離ー個体化理論と呼ばれます。
マーラーは、産まれたばかりの子どもは母と一体であり区別のない状態にあるが、だんだんと自分と母を区別できるようになり、母と離れていても情緒的に安定していられるような状態(対象恒常性が確立した状態)に発達していくと考えました。
この発達の過程を次のように理論化しています。
正常な自閉期(0~1ヵ月)
…内部と外部、自己と母(他者)の区別がない状態。
正常な共生期(2~5ヵ月)
…内部と外部の区別はできるようになるが、母との一体感は続いている状態。
分離個体化期(5~36ヵ月)は、さらに4期に分けられます。
分化期(5~9ヵ月)
…母と母でない人を区別できるようになり、母を特定化する。
練習期(9~15ヵ月)
…母から少し離れて行動し、また母の元へ戻るような行動をする。
再接近期(15~24ヵ月)
…母を自分とは別の対象として認識する。母と離れて自律したい気持ちと
母と親密な関係でありたいという葛藤(両価傾向)を抱え、不安や
かんしゃくなどを起こしやすい。
個体化期(25~36ヵ月)
…母のイメージを心の中に持つことができるようになり、母と離れていても
情緒的に安定した状態で過ごすことができるようになる。
この問題の男児Aは、自律しようとする(手を繋ぎたくない、1人で歩きたいという思い)一方で、母に甘えたい(抱っこしたい、離れたくない)という両価傾向があると考えられます。この状態を分離-個体化理論で考えると、年齢からも「再接近期」の状態と考えることができ、この問題での正答となります。
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