公認心理師 過去問
第7回 (2024年)
問65 (午前 問65)
問題文
22歳の男性A、大学4年生。普段と様子が違うことを心配した両親に連れられて、精神科クリニックを受診した。両親によると、Aは、1か月前からいらいらして怒りっぽくなり、夜もほとんど寝ていないという。Aに理由を聞くと、自分の卒業研究の進め方をめぐって指導教員としばしば口論になり、大変であるという。一方で、自分の研究はノーベル賞級の素晴らしいものであると胸を張って力説したり、趣味のバイクの自慢をしたり、SNSで自分のバイクのことが絶賛されたと得意げに話したりする。多弁で、話題を変えて話し続ける。先月はバイクの改造にかなりお金を使ったという。薬物の乱用歴はない。
Aの病態の理解として、最も適切なものを1つ選べ。
Aの病態の理解として、最も適切なものを1つ選べ。
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問題
公認心理師試験 第7回 (2024年) 問65(午前 問65) (訂正依頼・報告はこちら)
22歳の男性A、大学4年生。普段と様子が違うことを心配した両親に連れられて、精神科クリニックを受診した。両親によると、Aは、1か月前からいらいらして怒りっぽくなり、夜もほとんど寝ていないという。Aに理由を聞くと、自分の卒業研究の進め方をめぐって指導教員としばしば口論になり、大変であるという。一方で、自分の研究はノーベル賞級の素晴らしいものであると胸を張って力説したり、趣味のバイクの自慢をしたり、SNSで自分のバイクのことが絶賛されたと得意げに話したりする。多弁で、話題を変えて話し続ける。先月はバイクの改造にかなりお金を使ったという。薬物の乱用歴はない。
Aの病態の理解として、最も適切なものを1つ選べ。
Aの病態の理解として、最も適切なものを1つ選べ。
- 統合失調症
- 双極Ⅰ型障害
- 双極Ⅱ型障害
- 気分循環性障害
- 注意欠如多動症/注意欠如多動性障害
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この過去問の解説 (2件)
01
この問題では、精神疾患の診断基準と症状の理解が求められます。特に、気分障害の各タイプの特徴と、他の精神疾患との鑑別点を把握することが重要です。
Aの症状を詳細に分析し、各疾患の典型的な症状パターンと照らし合わせて判断する必要があります。
この選択肢は不適切です。Aの症状には幻覚や妄想の明確な記述がなく、思考の解体も見られません。また、症状の急性発症と気分の高揚が顕著であり、統合失調症の典型的な症状パターンとは一致しません。
この選択肢が最も適切です。Aの症状は典型的な躁状態を示しています。睡眠欲求の減少、多弁、自尊心の肥大、活動性の増加、浪費行動などが見られ、これらは双極Ⅰ型障害の躁エピソードの特徴と一致します。
この選択肢は不適切です。双極Ⅱ型障害では軽躁エピソードと大うつエピソードが特徴ですが、Aの症状は完全な躁状態を示しており、軽躁エピソードの範疇を超えています。
この選択肢は不適切です。気分循環性障害は軽躁状態とうつ状態が2年以上にわたって繰り返される慢性的な障害ですが、Aの症状は急性発症で、躁状態が顕著であり、この診断基準を満たしません。
この選択肢は不適切です。ADHDは通常、幼少期から症状が現れる発達障害であり、Aの急性発症の症状パターンとは一致しません。また、Aの症状は気分の高揚と関連しており、ADHDの主症状とは異なります。
双極性障害の診断には、躁状態やうつ状態の症状の程度と持続期間が重要です。
双極Ⅰ型障害では完全な躁エピソードが特徴的で、睡眠欲求の減少、多弁、自尊心の肥大、活動性の増加、浪費行動などが見られます。
他の気分障害や精神疾患との鑑別には、症状の急性発症、持続期間、重症度、機能障害の程度などを総合的に評価することが必要です。
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02
この問題では精神疾患の理解について問われています。
選択肢にある疾患の症状を整理しながら、問題について考えていきましょう。
誤りです。
統合失調症の症状には、陽性症状(妄想、幻覚、滅裂思考など)、陰性症状(意欲低下、感覚鈍麻、思考や会話の乏しさなど)、認知機能障害(遂行機能障害、注意障害など)があげられます。
事例の症状とは異なるため、不適切な選択肢と考えることができます。
正答です。
高揚した気分や怒りっぽさなどの躁症状が見られる場合には、まず薬物の影響がないかどうか検討します。この事例では、薬物の乱用歴はなしとありますので、躁症状は双極性障害によるものと考えることができます。
事例の状況では、多くの躁症状が見られています。
・いらいらして怒りっぽい。
・ほどんど寝ていない(寝なくても元気がある)
・自分の研究は素晴らしい、バイクを自慢するなど、根拠のない自信をもち、
自己評価が高まっている。
・多弁で、話題を変えて話し続ける。
・多額のお金を使うなど、良くない結果を引き起こす行動がある。
さらに、これらの躁症状により社会的に問題を引き起こしていることから、これは「躁エピソード」と言うことができます。また、抑うつエピソードが見られないことからも、これは「双極Ⅰ型障害」の状態と説明することができます。
誤りです。
双極Ⅱ型障害は、軽躁エピソードと抑うつエピソードが反復するような状態を言います。
軽躁エピソードは、躁エピソードと同じような症状ですが、社会的な問題を引き起こすほどではなく、むしろ適応が良くなるような場合もあります。
抑うつエピソードとは、抑うつ気分、意欲低下、睡眠障害、思考力低下、自殺企図・念慮などがある場合を言います。
事例の状況では、社会的な問題が生じている事、抑うつエピソードが聞かれないことから、不適切な選択肢と考えることができます。
誤りです。
気分循環性障害とは、抑うつエピソードと軽躁エピソードとは言えない程度の抑うつ症状、躁症状が、2年以上の間で慢性的に繰り返しているような状態を指します。
事例は、1か月前からの症状であり、躁症状が強く見られることから、不適切な選択肢と考えることができます。
誤りです。
注意欠如多動症/注意欠如多動性障害は、多くの場合、小児期に診断されます。
症状は「不注意」と「多動性・衝動性」に大別されます。「不注意」は、気が散りやすい、集中が続かない、計画的に行動することが難しいなどの様子を言います。「多動性・衝動性」とは、じっとしていられず落ち着きがない、順番を待てない、怒りっぽい、姿勢保持が難しいなどの様子を言います。
事例の状況とは異なるため、不適切な選択肢と考えることができます。
公認心理師は精神疾患の診断をする立場ではありませんが、精神疾患の症状や診断基準、治療法などの知識を持っておくことによって、クライエントをより適切に見立てたり、医療機関受診の必要性をクライエントや家族へ説明したりすることができます。似たような表現の用語も多くありますので、一つ一つの意味をしっかり理解しながら学ぶよう努めましょう。
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