公認心理師 過去問
第7回 (2024年)
問67 (午前 問67)

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問題

公認心理師試験 第7回 (2024年) 問67(午前 問67) (訂正依頼・報告はこちら)

63歳の女性A、嘱託職員。軽度の脳梗塞の既往歴はあるが、麻痺などの後遺症はない。物忘れが最近気になるとのことで、夫Bに伴われて精神科クリニックを受診した。同じ職場で働くBによると、Aは、半年前、昼食中に吐き気を訴えた後、一点を見つめ、呼びかけに答えなくなった。1分程で呼びかけに答えるようになったが、ぼんやりとした状態は夕方まで続いた。翌日、Aはこのことを覚えていなかった。以来、職場への道順や、料理の手順が分からなくなることがある。また、口を急にもぐもぐさせたり、ぼんやりしたりすることもある。その一方で、仕事に支障はなく、現在も続けられている。
Aの病態の理解として、最も適切なものを1つ選べ。
  • うつ病
  • せん妄
  • てんかん
  • Lewy小体型認知症
  • Alzheimer型認知症

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題では、高齢者の認知機能低下と神経学的症状の鑑別診断に関する理解が求められています。

 

特に、記憶障害、意識障害、反復性の行動異常などの症状を総合的に評価し、適切な診断を導き出す能力が重要です。

 

また、年齢、既往歴、症状の経過、日常生活への影響などの情報を統合して判断することが必要です。

選択肢1. うつ病

この選択肢は不適切です。Aの症状には抑うつ気分や興味・喜びの喪失といったうつ病の中核症状が見られません。また、一過性の意識障害や反復性の行動異常はうつ病では説明できません。

選択肢2. せん妄

この選択肢は不適切です。せん妄は急性の意識障害を特徴としますが、Aの症状は半年以上続いており、慢性的な経過をたどっています。また、仕事に支障がないことから、せん妄の可能性は低いです。

選択肢3. てんかん

この選択肢が最も適切です。一過性の意識障害エピソード、その後の健忘、口をもぐもぐさせる動作、ぼんやりする状態などは、複雑部分発作(側頭葉てんかん)の典型的な症状と一致します。

選択肢4. Lewy小体型認知症

この選択肢は不適切です。Lewy小体型認知症では認知機能の変動や幻視が特徴的ですが、Aには明確な幻視の報告がありません。

選択肢5. Alzheimer型認知症

この選択肢は不適切です。Alzheimer型認知症では進行性の記憶障害が主症状ですが、Aの症状は一過性の意識障害や反復性の行動異常が中心で、進行性の記憶障害の記述がありません。また、仕事に支障がないことからも可能性は低いです。

まとめ

高齢者の認知機能低下と神経学的症状の鑑別には、症状の詳細な観察と経過の把握が重要です。

 

てんかん、特に複雑部分発作は、一過性の意識障害、健忘、常同運動などを特徴とし、高齢発症も珍しくありません。

 

脳血管障害の既往はてんかんのリスク因子となります。症状が一過性で繰り返し、日常生活への影響が限定的な場合、てんかんを考慮する必要があります。

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02

高齢者の精神障害に関する知識が問われています。

 

選択肢にある障害や疾患の特徴を整理しながら考えていきましょう。

選択肢1. うつ病

誤りです。

うつ病の主な症状としては、抑うつ気分、興味の低下、食欲減退や体重減少、睡眠障害、精神運動焦燥や静止、無価値観、思考力や集中力の減退、自殺念慮や自殺企図などが挙げられます。また、これらによって日常生活へ支障が出る場合が多いと言えます。

 

この事例の症状は、うつ病の症状と異なりますので、不適切な選択肢と考えることができます。

選択肢2. せん妄

誤りです。

せん妄の主な症状としては、なんとなく反応に鈍さがある、些細な言い間違いがある、見当識障害がある、錯覚や幻覚がある、徘徊をする、怒りやすいなどがあげられます。また、このような症状が起きても数時間後には平常通りに戻り、本人はその状態を覚えていないことが特徴です。

 

事例では反応の鈍さなどが見られていますが、それ以外の症状はせん妄によるものとは考えにくいため、不適切な選択肢と考えることができます。

 

選択肢3. てんかん

正答です。

てんかんは、一時的に脳が過剰に興奮することによりてんかん発作が起きることを言います。てんかん発作は、発作の起こる部位などによって「焦点発作(部分発作)」「全般発作」「起始不明発作」に大別されます。それによって、てんかん発作の様子も異なっています。

 

この事例で特徴的な症状を整理しましょう。

・一点を見つめ、呼びかけに答えなくなった⇒意識障害がある

・ぼんやりしたことを覚えていない⇒記憶障害がある

・職場への道順や料理の手順がわからなくなることがある⇒見当識障害がある

・口をもぐもぐさせる⇒自動症がある

・仕事に支障はない⇒発作がなければ通常の活動ができる

 

また、てんかんの原因は様々ありますが、この事例であるように脳梗塞がきっかけとなる場合もあります。

 

これらの特徴は、てんかんの中でも、焦点意識減損発作の特徴に当てはまると考えられます。よって、この問題ではてんかんが正答であると言えます。

 

 

選択肢4. Lewy小体型認知症

誤りです。

レビー小体型認知症とは、レビー小体というたんぱく質が脳に蓄積されることによって起こる認知症です。

主な症状としては、認知機能障害、自律神経症状、幻視や幻聴、レム睡眠行動異常症、自律神経症状、抑うつ気分などが挙げられます。

 

この事例の症状は、これらと異なりますので、不適切な選択肢と考えることができます。

選択肢5. Alzheimer型認知症

誤りです。

アルツハイマー型認知症とは、アミロイドβというたんぱく質が脳に溜まり、神経細胞を破損し、脳が委縮することによる認知症です。症状が緩やかに進行することが特徴です。

初期症状としては、もの忘れ、実行機能障害、時間の見当識障害、近時記憶障害があげられます。中期には、即時記憶障害、遠隔記憶障害、認知機能障害などが見られるようになります。後期では、人の見当識障害、重度の知的な障害、運動機能の障害、弄便、異食などがあげられます。

 

この事例の症状は、これらとは異なりますので、不適切な選択肢と考えることができます。

まとめ

高齢者への支援も公認心理師が活躍できる場の一つです。また、直接的な支援でなくても、クライエントのご家族について伺う中で、高齢者の認知症や精神症状が話題になる場合もあります。認知症などの知識を持っておくことにより、適切にクライエントの状態を理解したり、必要な医療受診や関わり方の提案ができたりすることに繋がりますので、広く知識を持っておくことが大切です。

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