公認心理師 過去問
第7回 (2024年)
問80 (午後 問3)

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問題

公認心理師試験 第7回 (2024年) 問80(午後 問3) (訂正依頼・報告はこちら)

移行対象の概念を提唱した人物に該当するものを1つ選べ。
  • D. W. Winnicott
  • M. Klein
  • M. S. Mahler
  • O. F. Kernberg
  • W. R. D. Fairbairn

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題では、精神分析理論における重要な概念である「移行対象」の提唱者について問われています。

 

精神分析の発展に寄与した主要な理論家たちの中から、この概念を提唱した人物を正確に識別する能力が求められます。

 

各選択肢の人物が精神分析理論にどのような貢献をしたかを理解していることが重要です。

選択肢1. D. W. Winnicott

この選択肢が正解です。ウィニコットは「移行対象」の概念を1951年に提唱しました。

 

移行対象とは、幼児が母親との分離不安に対処するために使用する特別な物体(例:ぬいぐるみ、毛布)を指します。この概念は、幼児の心理的発達における重要な段階を説明するものとして広く認知されています。

選択肢2. M. Klein

この選択肢は不適切です。クラインは対象関係理論の先駆者として知られています。クラインは内的対象の概念を発展させましたが、これは移行対象とは異なります。

選択肢3. M. S. Mahler

この選択肢は不適切です。マーラーは分離-個体化理論で知られていますが、「移行対象」の概念を提唱したわけではありません。

選択肢4. O. F. Kernberg

この選択肢は不適切です。カーンバーグは対象関係理論を発展させ、境界性パーソナリティ障害の理解に大きく貢献しました。

選択肢5. W. R. D. Fairbairn

この選択肢は不適切です。フェアバーンは対象関係理論の重要な理論家です。フェアバーンの理論は対象関係の内在化に焦点を当てていますが、移行対象とは異なる概念です。

まとめ

移行対象の概念はD. W. ウィニコットによって1951年に提唱されました。

 

この概念は、幼児が母親との分離不安に対処するために使用する特別な物体を指し、幼児の心理的発達における重要な段階を説明します。精神分析理論の主要な概念とその提唱者を正確に把握することは、公認心理師試験において重要です。

 

各理論家の貢献を区別し、それぞれの概念の特徴と意義を理解することが求められます。

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02

選択肢には、対象関係論の発展に寄与した研究者の名前があげられています。

 

問題では、移行対象の概念を提唱した人物が問われています。

移行対象とは、幼児期に不安や葛藤を解消するため(安心するため)に、ずっと手に持っている物(タオル、ぬいぐるみなど)を言います。この不安や葛藤は、母親に依存しながら過ごしていた幼児が、少しずつ自主的に活動する、新しい環境で過ごすという場面が増えることで生じるものです。自主性が育ち、外の世界に慣れていくと、しだいに手放すことができるようになります。

 

これは「D.W.Winnicott(ウィニコット)」によって提唱された考えであり、この問題での正答です。

 

では、他の選択肢も見てみましょう。

選択肢1. D. W. Winnicott

正答です。

ウィニコットは、イギリスの精神分析家です。母親と子どもの相互関係に着目して発達を研究しました。移行対象の他にも、「情緒発達理論」「ほどよい母親」「ホールディング」「偽りの自己」などの概念を提唱しました。

選択肢2. M. Klein

誤りです。

メラニー・クラインは、イギリスの精神分析家です。遊戯療法などを用いて、幼児期の精神分析を行いました。幼児期の葛藤を「妄想分裂ポジション」「抑うつポジション」という概念で説明したことで有名です。

選択肢3. M. S. Mahler

誤りです。

マーガレット・マーラーは、オーストリア出身の精神分析家です。乳幼児の発達について「分離・個体化理論」という概念で説明しています。

選択肢4. O. F. Kernberg

誤りです。

オットー・カーンバーグは、オーストリア出身の精神分析家です。

病態水準を、①現実検討力、②同一性の統合度、③防衛機制を基準に考えました。また、疾患の状態を「神経症レベル、精神病レベル、境界例レベル」に分類しています。アメリカの自我心理学とクライン派の対象関係論を統合することに尽力したことでも有名です。

選択肢5. W. R. D. Fairbairn

誤りです。

ロナルド・フェアベーンは、「対象関係論」という言葉を最初に用いた人物です。フロイトやメラニー・クラインの理論に疑問を持ち、独自の理論を提唱しました。「スキゾイド・パーソナリティ障害」について先駆けて研究した研究者でもあります。

まとめ

心理学の世界では、発達理論だけを見ても多くの研究者がいます。発達段階の考え方もさまざまな視点の内容があり、それらを十分に理解しておくことで、臨床場面でも乳幼児や児童の発達を理解することに役立ちます。用語を知るだけでなく、その理論の意図についてもよく学んでおきましょう。

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