一級建築士の過去問
令和元年(2019年)
学科4(構造) 問86
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問題
一級建築士試験 令和元年(2019年) 学科4(構造) 問86 (訂正依頼・報告はこちら)
鉄骨構造の設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 柱の許容圧縮応力度の算定に用いる限界細長比は、基準強度F 値が大きいほど大きくなる。
- 骨組の塑性変形能力を確保するために定められている柱及び梁の幅厚比の上限値は、基準強度F 値が大きいほど小さくなる。
- 骨組の塑性変形能力を確保するために定められているH形鋼(炭素鋼)の梁の幅厚比の上限値は、フランジよりウェブのほうが大きい。
- 大地震時に、筋かい(炭素鋼)に必要な塑性変形能力を発揮させるために、筋かい端部及び接合部の破断耐力は、筋かい軸部の降伏耐力の1.2倍以上とする。
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この過去問の解説 (3件)
01
細長比は、座屈長さ/断面二次半径で求められます。
細長比が小さいほど座屈が生じにくくなり、圧縮材の許容圧縮応力度は大きくなり、塑性変形能力は大きくなります。
よって、柱の圧縮応力度は細長比が大きくなるほど小さくなります。圧縮応力度が基準強度の60%に達した時点を弾性限度といい、この時、弾性座屈から非弾性座屈に変わりますが、この時の細長比を限界細長比と言います。
限界細長比Λとすると、
Λ=√π²E/0.6F (E:ヤング係数、F:基準強度)
で求められることから、基準強度F値が大きいほど、限界細長比は小さくなります。
2. 正しく、記述の通りです。
幅厚比とは、幅b/厚さtで求められる比のことです。
幅厚比が小さいほど、材は分厚く、座屈が生じにくく、塑性変形能力が大きいと言えます。
幅厚比の上限値は、断面形状により異なります。
例えば、柱を角形鋼管で設計する時、b/t=33√235/Fであるので、幅厚比は、基準強度F値が大きいほど、小さくなります。
3. 正しく、記述の通りです。
H形鋼の梁の幅圧比b/tの上限値は、
フランジの場合、b/t=9√235/F
ウェブの場合、b/t=60√235/F
より、ウェブの方が大きいです。
4. 正しく、記述の通りです。
「筋交いの軸部が降伏する場合において、当該筋交いの端部及び接合部が破断しないこと」が筋交いの靭性確保の条件になります。
Aj・σu≧1.2Ag・F
(Aj : 接合部の有効断面積、σu : 接合部の材の破断応力度、Ag : 筋交い材の全断面積、F : 筋交い材の基準強度)
この式の1.2は、炭素鋼の場合で、ステンレス鋼では1.5とします。
この式は、筋交いの軸部が降伏し始める軸力の1.2倍の力で接合部が破断しない、ということを条件としています。
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02
1:誤りです
限界細長比Λは
Λ=√π²E/0.6F E:ヤング係数 F:基準強度
で求められます。
したがって基準強度Fが大きいほどΛは小さくなります。
2:設問通りです
幅厚比とは板要素の幅の厚さに対する比の事です。
幅厚比が大きくなる(幅が大きくなるor厚みが小さくなる)と局部座屈を起こしてしまうため、各形状の部材ごとに幅厚比の制限があります。この制限値は基準強度Fの二乗根に反比例しております。
(例えば角形鋼管柱部材は
d/t≦33√235/F d:鋼管幅 t:厚み)
したがって基準強度Fが大きくなるほど幅厚比の制限値は小さくなります。
3:設問通りです
幅厚比の説明は上記の通りです。
梁のフランジ、ウェブの幅厚比の制限値は以下の通りです。
・フランジ
b/tf≦9√235/F b:フランジ幅の1/2 tf:フランジ厚み
・ウェブ
d/tw≦60√235/F d:ウェブせい tw:ウェブ厚み
したがって制限値はウェブの方が大きいです。
4:設問通りです
大地震時(二次設計、保有耐力接合設計)筋交いの接合部の破壊耐力は安全率として筋交いの降伏耐力の1.2倍以上となるように設計します。
Aj×σu≧α×Ag×F
Aj:接合部の有効断面積 σu:接合部の破断応力度
α:安全率(=1.2) Ag:筋交いの全断面積
F:筋交い材の基準強度
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03
2.正。正しい記述です。
3.正。部材種別がFA材であるH鋼材の梁に関する幅厚比の規定値は、フランジよりウェブの方が大きくなります。
4.正。正しい記述です。
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