一級建築士の過去問
令和元年(2019年)
学科4(構造) 問96

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問題

一級建築士試験 令和元年(2019年) 学科4(構造) 問96 (訂正依頼・報告はこちら)

建築物の耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  • 純ラーメン構造の場合、地震時の柱の軸方向力の変動は、一般に、中柱より外柱のほうが大きい。
  • 鉄筋コンクリート造の腰壁付き梁の剛性は、腰壁と柱との間に完全スリットを設けた場合であっても、腰壁の影響を考慮する必要がある。
  • 構造特性係数DSは、一般に、架構が靱性に富むほど小さくすることができる。
  • 連層の耐力壁に接続する梁(境界梁)の曲げ耐力及びせん断耐力を大きくすると、一般に、地震力に対する耐力壁の負担せん断力が小さくなる。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は4です。

1:設問通りです
軸方向変動(軸方向力)は当該柱にとりつく梁のせん断力に影響します。中柱は両端に梁がとりついておりその軸方向変動は両端の梁のせん断力の差分となり、片側にしか梁がとりついていない外柱に比べて小さくなります。

2:設問通りです
腰壁、垂れ壁の検討について柱との間はスリットを設けているので短柱になることによる水平剛性やせん断応力の検討の必要はありません。
しかし、梁にはスリットを設けているわけではないので梁の断面性能に影響するので、腰壁、垂れ壁による剛性や応力の考慮が必要です。

3:設問通りです
構造特性係数Dsは構造に応じた減衰性及び靭性を考慮した低減係数のことでルート3の保有水平耐力の計算時に用います。
各部材の靭性を評価し、そのランクに応じてDsが決定し、靭性が大きいほどDsは小さくなります。

4:誤りです
そもそも耐力壁は水平力(地震力)を受け持つために設けます。
その中でも連層耐力壁は大きな地震力を受け持つので基礎に大きな引き抜き力もしくは脚部の曲げ降伏が発生します。
それを抑えるために境界梁を設けるのであって、耐力壁の負担するせん断力を低減させるために境界梁を設けているわけではありません。
実際には耐力壁には境界梁による曲げとせん断による曲げ戻しが発生するので、境界梁の曲げ耐力及びせん断耐力を大きくすると耐力壁がより負担できるせん断力は大きくなります。

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02

1. 正しく、記述の通りです。

純ラーメン構造の中柱は、地震時の軸力変動を殆ど受けません。つまり、軸方向力の変動は小さくなります。
外柱の方が、地震時の軸方向力の負担が大きくなります。

2. 正しく、記述の通りです。

腰壁と柱との間に完全スリットを設けた場合、柱と腰壁は縁が切れますが、梁には腰壁が取り付いているので、梁は腰壁がない時よりも硬くなり、剛性が高くなります。よって、腰壁の影響を考慮する必要があります。

3. 正しく、記述の通りです。

構造特性とは、建物の変形能力のことで、構造特性係数は、建物の変形能力を数値化したものです。
変形能力が高い=靭性に富む、ほど構造特性係数の値は小さくなります。
構造特性係数の値は、構造形式や部材ごとに違います。
また、必要保有水平耐力の算定に関係しており、構造特性係数の値が大きいと、必要保有水平耐力も大きくなります。

4. 誤りです。

地震力による負荷の大きさは、断面寸法の大きい耐力壁は、柱よりも圧倒的に大きくなりますが、境界梁を設けることで、耐力壁はこの境界梁からの曲げモーメントとせん断力の影響を受けることになります。

せん断力は曲げモーメントに比例して大きくなることから、境界梁の耐力を大きくすると、曲げモーメントは大きくなります。そうすると、耐力壁の負担する曲げモーメントも大きくなり、更にはせん断力も大きくなります。
境界梁を設けることで、回転変形も生じにくくすることができます。

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03

1.正。外柱の方が躯体の変形による影響を受けやすく、軸方向力の変動も大きくなります。

2.正。腰壁や垂れ壁と柱との接合部に適切なスリットを設けた場合、柱の剛性・応力の検討から除外することができます。しかし、梁の剛性・応力の算定については無視することはできません。

3.正。構造特性Dsは低減係数であり、小さいほど靭性に優れた建築物であると言えます。

4.誤。連層耐力壁に接続する境界梁は、耐力壁の負担するせん断力を大きくし、基礎の浮き上がりや転倒に対する抵抗力を高めます。

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