一級建築士の過去問
令和3年(2021年)
学科4(構造) 問88

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問題

一級建築士試験 令和3年(2021年) 学科4(構造) 問88 (訂正依頼・報告はこちら)

鉄骨構造の耐震計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  • 「ルート1 - 1」で計算する場合、層間変形角、剛性率、偏心率について確認する必要はない。
  • 「ルート1 - 2」で計算する場合、梁は、保有耐力横補剛を行う必要はない。
  • 「ルート2」で計算する場合、地階を除き水平力を負担する筋かいの水平力分担率に応じて、地震時の応力を割り増して許容応力度計算を行う必要がある。
  • 「ルート3」で計算する場合、構造特性係数DSの算定において、柱梁接合部パネルの耐力を考慮する必要はない。

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この過去問の解説 (3件)

01

1 正 その通りです。

2 誤 ルート1−2から横補剛の検討が入ってくるのは代表的な特徴ですね。

3、4 正 その通りですが、難しいですね。

実務でやらない人は覚えるしかないかもしれません。

余談ですが、選択肢1について

計算ルートについて、略図などで整理してみると理解が深まるかもしれません。

特に「許容応力度を超えないことを確かめること」(令82条第1項第3号)と「許容応力度計算」(令第82条の6)は意味合いが違います。

前者を一般的に「許容応力度計算」(「」がない)と言ったりしますが、以下では、紛らわしいので「許容応力度確かめ」と呼びます。

ルート1= 許容応力度確かめ + 屋根ふき材等の検討

ルート2=「許容応力度計算」= ルート1+「層間変形角」+「剛性率」+「偏心率」

ルート3=「保有水平耐力計算」= ルート1+「層間変形角」+ 保有水平耐力確かめ

ルート3=「限界耐力計算」= 地震力以外の許容応力度確かめ + 限界耐力確かめ

まだ複雑ですね。実務では、本を見ながらできるのでいいのですが、試験対策にはコツコツ覚えるしかないですね。

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02

鉄骨構造の耐震計算に関する問題です。

選択肢1. 「ルート1 - 1」で計算する場合、層間変形角、剛性率、偏心率について確認する必要はない。

ルート「1-1」は、高さ13m以下、軒の高さ9m以下の建物で、階数3以下、スパン6m以下、延べ面積500㎡以下の比較的小規模な鉄骨造の建築物を対象とします。

確認内容は、①筋交い端部・接合部の破断防止となります。

層間変形角、剛性率、偏心率については確認する必要はありません。

したがってこの設問は正しいです。

選択肢2. 「ルート1 - 2」で計算する場合、梁は、保有耐力横補剛を行う必要はない。

「ルート1-2」は、高さ13m以下、軒の高さ9m以下の建物で、階数2以下、スパン12m以下、延べ面積500㎡以下(平家建ての場合、3,000㎡以下)の鉄骨造の建築物を対象とします。

確認内容は、①筋交い端部・接合部の破断防止 ②偏心率の確認(15/100以下) ③局部座屈の防止 ④柱脚部の破断防止 があります。

横補剛は③の確認事項に含まれます。

したがってこの設問は誤りです。

選択肢3. 「ルート2」で計算する場合、地階を除き水平力を負担する筋かいの水平力分担率に応じて、地震時の応力を割り増して許容応力度計算を行う必要がある。

「ルート2」は、「ルート1-1」と「ルート1-2」以外の鉄骨造の建物を対象とします。

また、ルート2は一定以上の強度、剛性、靭性を確保することで大地震に対して建物の安全性を確保するというルートです。

ゆえに地階を除き水平力を負担する筋かいの水平力分担率に応じて、地震時の応力を割り増して許容応力度計算を行う必要があります。

したがってこの設問は正しいです。

選択肢4. 「ルート3」で計算する場合、構造特性係数DSの算定において、柱梁接合部パネルの耐力を考慮する必要はない。

「ルート3」は、高さが31m超え、「ルート1」「ルート2」によらない建物を対象とします。

建築物の持っている減衰性、靭性等(弾塑性挙動)によるエネルギー吸収能力を構造特性能力DSによって評価して、地震のエネルギーよりも建物の持つエネルギー吸収力が大きいことにより、安全性を確保するというルートです。

構造特性能力DSを評価するにあたって、柱梁接合部パネルの耐力を考慮する必要はありません。

したがってこの設問は正しいです。

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03

正解は「2」です。

1.正しい

ルート1-1は、強度指向型、つまり建物を硬く強くする事で地震等に耐える

という考え方になります。

ですので、建物のバランスや粘り強さに対しては検討を行わないため、

1は正しいです。

2.誤り

ルート1-2は、鉄骨造特有の耐震計算ルートです。

ルート1-1と同様に、強度指向型の考え方ですが、ルート1-1よりも

大規模な建物(面積、柱スパンなど)にも適用できます。

一方、偏心率や幅厚比など適合しなければいけない条件が増えます

梁の横補剛も条件の1つであり、ルート1-2を適用する場合は保有耐力横補剛が必要です。

なので、2は誤りです。

3.正しい

ルート2は、ルート1-2よりさらに大規模な建物に適用できる耐震計算ルートです。

ルート1-1、1-2と同様に、許容応力度等計算を行います。

建物の粘り強さに期待する保有水平耐力計算は行いませんが、

建物のバランスの良さ(偏心率、剛性率など)の確保や

脆性破壊を防止するための条件に適合する必要があります。

選択肢の地震時の応力割増もその条件の1つです。

ブレースが負担する水平力の割合が大きくなると、

ブレースが脆性破壊しやすくなるため、応力を割り増して安全側の設計とします。

なので3は正しいです。

4.正しい

ルート3は、ルート2よりさらに大規模な建物に適用する耐震計算ルートであり、

ルート2までの許容応力度等計算に加え保有水平耐力計算を行います。

保有水平耐力計算は、建物に求められる必要保有水平耐力を上回る

保有水平耐力を建物に持たせる考え方です。

その際、建物の形状や構造が粘り強い(靭性が高い)場合は

必要保有水平耐力を低減することができます。その低減のための係数が構造特性係数Dsです。

鉄骨造のDsは、柱・梁・筋交い・耐力壁のそれぞれの靭性から求められるため、

柱梁接合部のパネルは考慮しなくてもよいです。

なので4は正しいです。

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