第三種電気主任技術者(電験三種) 過去問
令和6年度(2024年)上期
問10 (理論 問10)

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問題

第三種電気主任技術者(電験三種)試験 令和6年度(2024年)上期 問10(理論 問10) (訂正依頼・報告はこちら)

図の回路のスイッチSをt=0sで閉じる。電流 iS[A]の波形として最も適切に表すものを次のうちから一つ選べ。
ただし、スイッチSを閉じる直前に、回路は定常状態にあったとする。
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この過去問の解説 (2件)

01

RLC直列回路の一部を短絡した時に起こる現象に関する問題です。

選択肢3. 解答選択肢の画像

コンデンサが十分に充電された状態でスイッチSを閉じると、下図のように電流が流れます。

 

 

この時、スイッチSのポイントではRL直列回路(時定数τ=1)とRC直列回路(時定数τ=2)の過渡現象が起こっていることになります。

※時定数τはそれぞれ公式から求めています。

 

RL直列回路の過渡現象を赤い線、RC直列回路の過渡現象を青い線で示すと下図のようになります。

 

 

スイッチSに流れる電流isは、RL直列回路とRC直列回路の電流値を足したものになります。

したがって、電流isは黒い線となります。

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02

R-L-C直列回路の過度現象に関する問題です。

問題図回路のスイッチSをt=0sで閉じた時の電流 iS[A]の波形を選択する形です。

 

この問題を解く上でのポイントは以下のようになります。

①定常状態時のコイルL、コンデンサCの特性

②スイッチSを閉じる直前の電流の流れ方

③スイッチSを閉じた直後の電流の流れ方(初期値の電流の値)

④スイッチSを閉じ、定常状態になった時の電流の流れ方(過渡期から最終値の電流の値)

以上となります。

 

改めて問題の条件を整理します。

・直流電圧源V=1[V]、抵抗R=1[Ω]×2箇所、コイルL=1[H]、コンデンサC=2[F]

 

上記であげた各ポイントごとに解説していきます。

①定常状態時のコイルL、コンデンサCの特性

・コイルLは定常状態になると短絡となり電流を流しますが、コンデンサCは開放となり電流は流れません。コンデンサCは回路の定常状態から電圧がなくなると充電していた電荷を放出する働きが生じ、容量がなくなるまで電流を独自に流そうとします。

 

②スイッチSを閉じる直前の電流の流れ方

・上記各素子の特性より直流電圧源から発生する全体の電流Iは0[A]となります。

 

③スイッチSを閉じた直後の電流の流れ方(初期値の電流の値)

・スイッチSを閉じるとSのラインは短絡となり、直流電圧源からの電流はコンデンサCの方へは流れず、抵抗R、コイルLのみをループする閉回路となります。また上記①でも述べているようにコンデンサCの特性として、電圧源を喪失しても容量がなくなるまで放電する働きがあり、そちらからも電流が発生するのでもう一つ閉回路が生じます。よって回路全体には二つの閉回路が発生します。

・直流電圧源から来る電流をiL、コンデンサからの電流をicと置きます。コンデンサCには当然極性があり、スイッチS側が+となり、その反対が-となるので電流はスイッチSの方向に向かって流れます。電流iLも同じようにスイッチSに向かうので、この問題で問われている電流 iS[A]は次のように表すことができます。

・iS[A]=iL+ic

上記式より電流 iS[A]の波形はiL、icの波形を合成したものと考えることができます。

 

・電流iL、icの初期値は次のようになります。

 iL=0[A]

※コイルLからの逆起電力の影響により電流を妨げる影響があります。

 ic=V/R=1/1=1[A]

※コンデンサCは直流電圧1[V]を充電していたことになります。

 

④スイッチSを閉じ、定常状態になった時の電流の流れ方(過渡期から最終値の電流の値)

・コイルLは徐々に電流が流れていき、最終的には短絡する形となるので電流iL[A]の最終値は次のようになります。

 iL=V/R=1/1=1[A]

また時定数τ(ある変化が終わるまでの時間の尺度)はL/Rで求められるので次のようになります。

 τ=L/R=1/1=1[s]

 

・コンデンサCは最終的に放電してしまうと容量は0となるので、電流の最終値も次のようになります。

 ic=0[A]

また時定数τ(ある変化が終わるまでの時間の尺度)はCRで求められるので次のようになります。

 τ=CR=2×1=2[s]

以上のようになります。

 

これらの結果から電流 iS[A]を考察すると次のようになります。

・初期値はコンデンサCの影響より1[A]

・最終値はコイルLの結果より、同じく1[A]

・時定数τはコンデンサCの方が遅いので、変化の具合もコンデンサCの影響が残る。

以上を踏まえて各選択肢を見ていきましょう。

 

 

 

 

選択肢1. 解答選択肢の画像

初期値、最終値共に1[A]となり冒頭の条件を満たしていますが、変化の割合が1[A]より減少しており、これはコイルLの時定数が遅いことを表してますので、こちらは不適切です。

選択肢2. 解答選択肢の画像

初期値が0[A]なのでこちらは不適切です。

選択肢3. 解答選択肢の画像

初期値、最終値共に1[A]となり冒頭の条件を満たしており、過度時にも電流値が1Aよりも増えているのでコンデンサCの時定数が遅いことを表しているといえます。よってこちらが適切な解答となります

選択肢4. 解答選択肢の画像

初期値が0[A]なのでこちらは不適切です。

選択肢5. 解答選択肢の画像

初期値、最終値共に1[A]となり冒頭の条件を満たしていますが、変化が一切ありません。これはコイルLとコンデンサCの時定数が同じ状態と言えます。よってこちらは不適切です。

まとめ

難解な問題ではありますが、コイルとコンデンサの特性と時定数については必ず覚えておくことをお薦めいたします。

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