大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問33 (倫理(第1問) 問3)
問題文
次の会話は、高校生Aとその担任の先生が面談で交わしたものである。
A:先生!最近、友達と会ったり、話したりするときに、友達にどのような態度を取ったらよいか気を遣うのが時々辛(つら)いと感じることがあって…。いっそのこと、一人で過ごした方が気が楽かも…。
先生:思い悩んでいますね。私も例に漏れませんが、誰もが悩むことです。ところで、友に対する思いは、歴史的には広い意味でa 愛という概念で捉えられてきました。
A:愛と言えば、先日の授業でb 古典や聖典の資料を読みましたよね。そのとき、愛の様々な種類やc キリスト教の隣人愛についても学びました。
先生:そうでしたね。
A:愛とまでは言えないかもしれませんが、私は友達のことを大切だとは思っています。でも、友達に関する悩みは尽きません。確か、「犀(さい)の角のようにただ一人歩め」と言って、友と過ごすよりも一人で過ごす方がよいと説くd 仏教の経典がありましたよね。
先生:うーん。しかし、その経典の記述って、そのように理解してよいのでしょうか?
下線部cに関連して、先生はAに次の資料を示し、後の会話を交わした。アウグスティヌスの思想を踏まえて、会話中の( a )・( b )に入る記述の組合せとして最も適当なものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
資料
友人の意志は、目に見えず、耳で聞こえず、あなたの心の中で内的に感知されるものでもないが、信じられるべきだ。あなたの人生がいかなる友愛もなく荒廃し、あなたに支払われた愛が、あなたから返されないという事態にならないように。……愛そのものは見えないのだから、もし見えないものを信じるべきでないとすれば、誰がお互いの好意によって他者から大切にされるのであろうか。そのとき、友愛は完全に消滅してしまう。なぜならそれは、相互の愛がなければ存続しないからである。
(アウグスティヌス「見えないものへの信仰」より)
A:この資料のアウグスティヌスって、( a )思想家でしたね。
先生:そうです。彼はこの作品で神への信仰の正当性を論じたのですが、ここで( b )と主張されているように、友人や友愛についての考察を基に議論を展開しているのが、興味深いですね。
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問33(倫理(第1問) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)
次の会話は、高校生Aとその担任の先生が面談で交わしたものである。
A:先生!最近、友達と会ったり、話したりするときに、友達にどのような態度を取ったらよいか気を遣うのが時々辛(つら)いと感じることがあって…。いっそのこと、一人で過ごした方が気が楽かも…。
先生:思い悩んでいますね。私も例に漏れませんが、誰もが悩むことです。ところで、友に対する思いは、歴史的には広い意味でa 愛という概念で捉えられてきました。
A:愛と言えば、先日の授業でb 古典や聖典の資料を読みましたよね。そのとき、愛の様々な種類やc キリスト教の隣人愛についても学びました。
先生:そうでしたね。
A:愛とまでは言えないかもしれませんが、私は友達のことを大切だとは思っています。でも、友達に関する悩みは尽きません。確か、「犀(さい)の角のようにただ一人歩め」と言って、友と過ごすよりも一人で過ごす方がよいと説くd 仏教の経典がありましたよね。
先生:うーん。しかし、その経典の記述って、そのように理解してよいのでしょうか?
下線部cに関連して、先生はAに次の資料を示し、後の会話を交わした。アウグスティヌスの思想を踏まえて、会話中の( a )・( b )に入る記述の組合せとして最も適当なものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
資料
友人の意志は、目に見えず、耳で聞こえず、あなたの心の中で内的に感知されるものでもないが、信じられるべきだ。あなたの人生がいかなる友愛もなく荒廃し、あなたに支払われた愛が、あなたから返されないという事態にならないように。……愛そのものは見えないのだから、もし見えないものを信じるべきでないとすれば、誰がお互いの好意によって他者から大切にされるのであろうか。そのとき、友愛は完全に消滅してしまう。なぜならそれは、相互の愛がなければ存続しないからである。
(アウグスティヌス「見えないものへの信仰」より)
A:この資料のアウグスティヌスって、( a )思想家でしたね。
先生:そうです。彼はこの作品で神への信仰の正当性を論じたのですが、ここで( b )と主張されているように、友人や友愛についての考察を基に議論を展開しているのが、興味深いですね。
- a:新プラトン主義の影響を強く受けた b:友人の意志は目に見えないため、それは信じるに値しない
- a:マニ教の教義を、キリスト教に積極的に取り込んだ b:友人から受け取った愛は、返すべきものである
- a:自らの心の内を見つめることを通して、神と出会う道を見いだした b:友人の意志を信じないとき、友愛は成立し得ない
- a:教会は神の代理にはなり得ないとして、その権威を斥(しりぞ)けた b:友愛は相互的な関係において成立するものである
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この過去問の解説 (2件)
01
正解は「a:自らの心の内を見つめることを通して、神と出会う道を見いだした b:友人の意志を信じないとき、友愛は成立し得ない」です。
以下、解説になります。
アウグスティヌスは、新プラトン主義の影響を受けてはいません。
また、友人の意志を信じることの重要性を説き、これが友愛に不可欠であるとしています。
アウグスティヌスは、マニ教をキリスト教に積極的に取り組んでいません。
また、友人から受け取った愛を返す義理についても言及していません。
正解は、この肢です。
アウグスティヌスは、自身と向き合うことが神と出会う道だと説き、友愛の成立に友人の意志を信じることが不可欠であると述べています。
アウグスティヌスは、西方教会の神学者として、教会の権威を高めることに努めました。
アウグスティヌスは、キリスト教や教会に関する著作を残しています。
一読しておくとよいでしょう。
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02
アウグスティヌスは、善と悪について、
悪は実在するものではなく、人間の自由意思によって選択されたものであるとし、
人間は自身の力だけでは善を行えず、神の恩寵なしでは救われることはない、人間の罪は神の恩寵によってのみ克服できるとしました。
中世ヨーロッパにおけるキリスト教信仰の核となった思想です。
aについて、アウグスティヌスは、新プラトン主義の影響を強く受け、キリスト教の教義体系を確立した人物です。
従って、aについては正解です。
bについては、資料にあるとおり、そのような思想ではなく、むしろ信じることの重要性を説きました。
従って、不正解です。
aについて、アウグスティヌスは、元々マニ教の信者でしたが、後にキリスト教に改宗し、マニ教の教義を積極的にキリスト教に取り込んだという事実はありません。
従って、不正解です。
アウグスティヌスは、善と悪について、
悪は実在するものではなく、人間の自由意思によって選択されたものであるとし、
人間は自身の力だけでは善を行えず、神の恩寵なしでは救われることはない、人間の罪は神の恩寵によってのみ克服できるとしました。
従って、aについて、正解です。
bについて、資料から読み取れるように、友人の意志を信じることの重要性を説きました。
従って、bについても正解です。
aについて、アウグスティヌスは、中世ヨーロッパにおけるキリスト教信仰の核となった思想です。
従って、不正解です。
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