大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問37 (倫理(第1問) 問7)
問題文
次の会話は、Aと先生が交わしたものである。
A:先生、先日話題になった「賢明な友」というのは、e 知を探求して洞察力を備えている友ということでしょうか?
先生:そういうことになるでしょうね。
A:でも、私が悩んでいるのはそういう高尚な話ではなく、日常的な友達とのf 人間関係についてです。
先生:具体的にはどのような悩みですか?
A:時々、自分が友達の役に立っているのか、友達を楽しませることができているのか、不安になるんです。
先生:ひょっとして、Aさんは、友達関係を型にはめて考えてしまい、その考えにがんじがらめになっていませんか?
A:言われてみれば、そうかもしれません。
先生:g 友達の役に立つことや、友達を楽しませることは、どういう意味を持つのでしょうか?それに、会って実際に過ごせる相手だけが友達なのでしょうか?
A:友達って、会って同じ時間を過ごす相手なんじゃないんですか?
先生:例えば、h 相手と離れていても、時代を隔てていても、友達としてのつながりを感じることができるという考え方もありますよ。
下線部gに関連して、次の資料は、アリストテレスが友愛について述べたものである。資料の内容の説明として最も適当なものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
資料
互いに利益がある人々が友であり、また、気が合い楽しさを感じ合う人々が友であると言われるが、……第一の、主要な意味での友愛は、善き人々の間の、善き人々である限りでの友愛であり、他の種の友愛は、それとの類似性によると言わねばならない。というのも、利益や楽しさによる友愛にもある種の善きものや善きものに似たものがあり、その限りで人々は友になるからだ。実際、楽しさも、それを求める人からすれば善いものだ……。
さて、友愛は以上のように分類されたが、徳無き人々は、楽しさや利益のゆえに友になるだろう。……他方、善き人々は、彼ら自身のゆえに友になるだろう。すなわち、彼らが善き人々である限りで。
(アリストテレス『ニコマコス倫理学』より)
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問37(倫理(第1問) 問7) (訂正依頼・報告はこちら)
次の会話は、Aと先生が交わしたものである。
A:先生、先日話題になった「賢明な友」というのは、e 知を探求して洞察力を備えている友ということでしょうか?
先生:そういうことになるでしょうね。
A:でも、私が悩んでいるのはそういう高尚な話ではなく、日常的な友達とのf 人間関係についてです。
先生:具体的にはどのような悩みですか?
A:時々、自分が友達の役に立っているのか、友達を楽しませることができているのか、不安になるんです。
先生:ひょっとして、Aさんは、友達関係を型にはめて考えてしまい、その考えにがんじがらめになっていませんか?
A:言われてみれば、そうかもしれません。
先生:g 友達の役に立つことや、友達を楽しませることは、どういう意味を持つのでしょうか?それに、会って実際に過ごせる相手だけが友達なのでしょうか?
A:友達って、会って同じ時間を過ごす相手なんじゃないんですか?
先生:例えば、h 相手と離れていても、時代を隔てていても、友達としてのつながりを感じることができるという考え方もありますよ。
下線部gに関連して、次の資料は、アリストテレスが友愛について述べたものである。資料の内容の説明として最も適当なものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
資料
互いに利益がある人々が友であり、また、気が合い楽しさを感じ合う人々が友であると言われるが、……第一の、主要な意味での友愛は、善き人々の間の、善き人々である限りでの友愛であり、他の種の友愛は、それとの類似性によると言わねばならない。というのも、利益や楽しさによる友愛にもある種の善きものや善きものに似たものがあり、その限りで人々は友になるからだ。実際、楽しさも、それを求める人からすれば善いものだ……。
さて、友愛は以上のように分類されたが、徳無き人々は、楽しさや利益のゆえに友になるだろう。……他方、善き人々は、彼ら自身のゆえに友になるだろう。すなわち、彼らが善き人々である限りで。
(アリストテレス『ニコマコス倫理学』より)
- アリストテレスは、利益や楽しさのゆえに友になる人々は、そうしたものが彼らにとっては悪(あ)しきものであるにもかかわらず友になると考えた。
- アリストテレスは、徳無き人々の間の友愛は、利益や楽しさのゆえに成立するため、真の友愛とは似ているところはないと考えた。
- アリストテレスは、友愛は善き人々の間でのみ成立し、徳無き人々は、互いに利益や楽しさを求めているため、友にはなれないと考えた。
- アリストテレスは、本当の友愛は善き人々の間でのみ成立し、彼らは利益や楽しさのためではなく善き人々であるがゆえに友になると考えた。
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この過去問の解説 (2件)
01
正解は「アリストテレスは、本当の友愛は善き人々の間でのみ成立し、彼らは利益や楽しさのためではなく善き人々であるがゆえに友になると考えた。」です。
以下、解説になります。
アリストテレスは、利益や楽しさのゆえに友になる人々のことを「悪しきもの」とは述べていません。
アリストテレスは、真の友愛と他の友愛には、類似性があると述べています。
アリストテレスは、徳無き人々は、楽しさや利益ゆえの友になると述べています。そのため、友になれないとは言っていません。
正解は、この肢です。
アリストテレスは、友愛は、善き人々の間でのみ成立する旨を述べています。
アリストテレスの『二コマコス倫理学』は、著名な作品です。一読しておくとよいでしょう。
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02
アリストテレスは、ソクラテスやプラトンとともに、西洋最大の哲学者の一人といわれる人物です。
アリストテレスは、人生最大の目的は「幸せになること」だと説きます。
彼は、人間を「社会的動物」と捉え、人間同士の絆を幸福な人生の基盤と考えており、その上で、友愛を「善に基づいた友愛」「快楽に基づいた友愛」「有用性に基づいた友愛」の三種類に分類して捉えています。
アリストテレスは、人生最大の目的は「幸せになること」だと説きます。
彼は、人間を「社会的動物」と捉え、人間同士の絆を幸福な人生の基盤と考えており、その上で、友愛を「善に基づいた友愛」「快楽に基づいた友愛」「有用性に基づいた友愛」の三種類に分類して捉えていますが、
「快楽に基づいた友愛」を悪しきものとは必ずしも捉えていません。
従って、不正解です。
彼は、人間を「社会的動物」と捉え、人間同士の絆を幸福な人生の基盤と考えており、その上で、友愛を「善に基づいた友愛」「快楽に基づいた友愛」「有用性に基づいた友愛」の三種類に分類して捉えています。
アリストテレスによれば、「どれか一つによって、互いに対して好意を抱いて、互いの善を願い、そういうことを互いが気付いている」ことが友愛の条件であるとします。
従って、不正解です。
彼は、人間を「社会的動物」と捉え、人間同士の絆を幸福な人生の基盤と考えており、その上で、友愛を「善に基づいた友愛」「快楽に基づいた友愛」「有用性に基づいた友愛」の三種類に分類して捉えています。
従って、不正解です。
アリストテレスは、人生最大の目的は「幸せになること」だと説きます。
彼は、人間を「社会的動物」と捉え、人間同士の絆を幸福な人生の基盤と考えており、その上で、友愛を「善に基づいた友愛」「快楽に基づいた友愛」「有用性に基づいた友愛」の三種類に分類して捉えています。
そして「善に基づいた友愛」を最も価値のある友愛と位置付けています。
従って、正解です。
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