大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問43 (倫理(第2問) 問5)
問題文
以下は、倫理の授業で、日本思想を学んだ後に、「役に立つ学びとはどのようなものか」をテーマにクラスで行われた紙上での対話である。
Cの意見
役に立つ学びというと、資格の取得など、学んだことが仕事に活かされ、収入につながるものを思い浮かべがちですが、それだけを一度きりの人生の目的にできるのでしょうか。日本には自らの生き方を考える学びの伝統があり、実利を重視する風潮が強まったe 近代以降であっても、哲学することは真の人間になることだと述べた思想家もいました。自らの生き方を考える学びは、この人生を悔いなく送るために、本当の意味で役に立つ学びだと考えます。
BからCへの質問
確かにそうですね。ただ、私もCも、役に立つという言葉から、自分の役に立つことだけに囚(とら)われていたと気付きました。例えば、f 高野長英の人生を考えてみると、彼は、自身が「有用急務の実学」だと認めた蘭学を究め、その学びが、日本の西洋学術の受容にも寄与し、多くの人々の生活を豊かにしました。このように、役に立つ学びには、他者のために役に立つという面もあると考えられませんか。
CからBへの返答
なるほど。以前授業で、鎌倉時代の僧g 叡尊は、学びを通じて仏教者としての己の生き方を見つめ、そこから利他の実践に向かったと習ったのを思い出しました。彼のように、自分の生き方を省みた先で、他者と共にある具体的な現実に目を向け、学びを目の前の他者のための実践へとつなげられたとき、役に立つ学びは一層深まるのかもしれません。
下線部eに関連して、次のア・イは、近代において、日本の伝統思想をどのように引き受けていくかを模索した思想家についての説明であるが、それぞれ誰のことか。その組合せとして正しいものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
ア 伝統の中で育まれた「武士道」は、自身のキリスト教信仰の精神的な素地であると同時に、日本人を生かす精神でもあると述べた。
イ 天皇を中心とした国家主義の立場に立ち、不敬事件をきっかけとして、キリスト教を教育勅語の道徳に反する教説だとして攻撃した。
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問43(倫理(第2問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)
以下は、倫理の授業で、日本思想を学んだ後に、「役に立つ学びとはどのようなものか」をテーマにクラスで行われた紙上での対話である。
Cの意見
役に立つ学びというと、資格の取得など、学んだことが仕事に活かされ、収入につながるものを思い浮かべがちですが、それだけを一度きりの人生の目的にできるのでしょうか。日本には自らの生き方を考える学びの伝統があり、実利を重視する風潮が強まったe 近代以降であっても、哲学することは真の人間になることだと述べた思想家もいました。自らの生き方を考える学びは、この人生を悔いなく送るために、本当の意味で役に立つ学びだと考えます。
BからCへの質問
確かにそうですね。ただ、私もCも、役に立つという言葉から、自分の役に立つことだけに囚(とら)われていたと気付きました。例えば、f 高野長英の人生を考えてみると、彼は、自身が「有用急務の実学」だと認めた蘭学を究め、その学びが、日本の西洋学術の受容にも寄与し、多くの人々の生活を豊かにしました。このように、役に立つ学びには、他者のために役に立つという面もあると考えられませんか。
CからBへの返答
なるほど。以前授業で、鎌倉時代の僧g 叡尊は、学びを通じて仏教者としての己の生き方を見つめ、そこから利他の実践に向かったと習ったのを思い出しました。彼のように、自分の生き方を省みた先で、他者と共にある具体的な現実に目を向け、学びを目の前の他者のための実践へとつなげられたとき、役に立つ学びは一層深まるのかもしれません。
下線部eに関連して、次のア・イは、近代において、日本の伝統思想をどのように引き受けていくかを模索した思想家についての説明であるが、それぞれ誰のことか。その組合せとして正しいものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
ア 伝統の中で育まれた「武士道」は、自身のキリスト教信仰の精神的な素地であると同時に、日本人を生かす精神でもあると述べた。
イ 天皇を中心とした国家主義の立場に立ち、不敬事件をきっかけとして、キリスト教を教育勅語の道徳に反する教説だとして攻撃した。
- ア:西村茂樹 イ:井上哲次郎
- ア:西村茂樹 イ:内村鑑三
- ア:井上哲次郎 イ:西村茂樹
- ア:井上哲次郎 イ:内村鑑三
- ア:内村鑑三 イ:西村茂樹
- ア:内村鑑三 イ:井上哲次郎
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この過去問の解説 (2件)
01
この問題の前提となる知識は、以下の通りです。
西村茂樹は、明治時代の思想家・教育家で、明治政府の欧化傾向に対し国民道徳の回復を訴え、日本弘道会を設立。
会長として、儒教中心、皇室尊重の国民道徳の普及に努めました。
井上哲次郎は、日本人初代の東京帝大哲学担当教授です。
1890年の内村鑑三不敬事件において、国家主義の立場からキリスト教を批判して当時大きな影響を与えました。
内村鑑三は、明治時代の宗教家で、既存のキリスト教派によらない「無教会主義」を唱えた人物です。
彼は、武士道を日本独特の倫理観として高く評価し、キリスト教の考え方との融合を模索しました。
アについて、伝統の中ではぐくまれた「武士道」は、自身のキリスト教信仰の精神的な素地であると同時に、日本人を生かす精神でもあるとあります。
これは、内村鑑三を指しています。
イについて、天皇を中心とした国家主義の立場に立ち、不敬事件をきっかけに、キリスト教を教育勅語の道徳に反する教説だと攻撃した、とあります。
これは井上哲次郎を指しています。
従って、不正解です。
アについて、伝統の中ではぐくまれた「武士道」は、自身のキリスト教信仰の精神的な素地であると同時に、日本人を生かす精神でもあるとあります。
これは、内村鑑三を指しています。
イについて、天皇を中心とした国家主義の立場に立ち、不敬事件をきっかけに、キリスト教を教育勅語の道徳に反する教説だと攻撃した、とあります。
これは井上哲次郎を指しています。
従って、不正解です。
アについて、伝統の中ではぐくまれた「武士道」は、自身のキリスト教信仰の精神的な素地であると同時に、日本人を生かす精神でもあるとあります。
これは、内村鑑三を指しています。
イについて、天皇を中心とした国家主義の立場に立ち、不敬事件をきっかけに、キリスト教を教育勅語の道徳に反する教説だと攻撃した、とあります。
これは井上哲次郎を指しています。
従って、不正解です。
アについて、伝統の中ではぐくまれた「武士道」は、自身のキリスト教信仰の精神的な素地であると同時に、日本人を生かす精神でもあるとあります。
これは、内村鑑三を指しています。
イについて、天皇を中心とした国家主義の立場に立ち、不敬事件をきっかけに、キリスト教を教育勅語の道徳に反する教説だと攻撃した、とあります。
これは井上哲次郎を指しています。
従って、不正解です。
アについて、伝統の中ではぐくまれた「武士道」は、自身のキリスト教信仰の精神的な素地であると同時に、日本人を生かす精神でもあるとあります。
これは、内村鑑三を指しています。
イについて、天皇を中心とした国家主義の立場に立ち、不敬事件をきっかけに、キリスト教を教育勅語の道徳に反する教説だと攻撃した、とあります。
これは井上哲次郎を指しています。
従って、不正解です。
アについて、伝統の中ではぐくまれた「武士道」は、自身のキリスト教信仰の精神的な素地であると同時に、日本人を生かす精神でもあるとあります。
これは、内村鑑三を指しています。
イについて、天皇を中心とした国家主義の立場に立ち、不敬事件をきっかけに、キリスト教を教育勅語の道徳に反する教説だと攻撃した、とあります。
これは井上哲次郎を指しています。
従って、正解です。
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02
正解は、「ア:内村鑑三 イ:井上哲次郎」です。
内村鑑三は、武士道を推奨したキリスト教の思想家です。
西村茂樹は、西洋文化の吸収を推奨した明治時代の啓蒙思想家です。
井上哲次郎は、天皇中心主義や教育勅語の推奨を展開した思想家です。
以下、解説になります。
前述の通り、「武士道」を推奨したのは、西村茂樹ではなく内村鑑三です。
前述の通り、「武士道」を推奨したのは、西村茂樹ではなく内村鑑三です。
また、天皇を中心とした国家主義を唱えたのは、内村鑑三ではなく井上哲次郎です。
前述の通り、「武士道」を推奨したのは、井上哲次郎ではなく内村鑑三です。
また、天皇を中心とした国家主義を唱えたのは、西村茂樹ではなく井上哲次郎です。
前述の通り、「武士道」を推奨したのは、井上哲次郎ではなく内村鑑三です。
また、天皇を中心とした国家主義を唱えたのは、内村鑑三ではなく井上哲次郎です。
前述の通り、天皇を中心とした国家主義を唱えたのは、西村茂樹ではなく井上哲次郎です。
正解は、この肢です。
「武士道」を推奨したのは、内村鑑三です。
また、天皇を中心とした国家主義を唱えたのは井上哲次郎です。
本問で登場した人物は、いずれも近代日本政治史において、非常に重要な思想家です。この機会に、各人物の思想を網羅しておくとよいでしょう。
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