大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和5年度(2023年度)本試験
問60 (倫理(第4問) 問6)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和5年度(2023年度)本試験 問60(倫理(第4問) 問6) (訂正依頼・報告はこちら)

高校生GとHが交わした次の会話を読み、後の問いに答えよ。なお、会話と問いのGとHは各々全て同じ人物である。

G:すごい豪邸…、こんなaに生まれた子どもは運がいいね。不平等だな。
H:生まれた家とか国とか、b個人が選べないもので差があるのは、不平等だとしても変えられないよ。与えられた環境の中で頑張ることが大事だよね。この家の子どもだって、c社会で成功できるかどうかは本人次第だと思う。
G:いや、その子どもも、家が裕福なおかげでいい教育を受けて、将来お金を稼げるようになったりするでしょ。運の違いが生むd格差は、社会が埋め合わせるべきだよ。
H:それって、幸運な人が持つお金を不運な人に分け与えるということ?運の違いなんて、そもそも社会のあり方と関わる問題だとは思えないけど。
G:そう?例えば、運よく絵の上手な人が漫画家としてお金を稼げるのは、漫画を高く評価するe文化が社会にあるおかげでしょ。人のf才能も、社会のあり方によって、運よくお金になったり運悪くお金にならなかったりするよ。
H:なるほど。けど、才能を成功に結び付けるのは社会だけじゃないよ。漫画家も才能を磨いてプロになるわけでしょ。そうしたg努力については、個人を評価するべきじゃない?
G:一理あるね。ただ、努力の習慣が身に付くのも運による面はあるよ。地元の学校が「褒めて伸ばす」方針で、何事も頑張って取り組むようになったとか。努力できるようになるかどうかは、h社会の仕組みや構造に左右されると思う。
H:それはそうかも。ただ、同じ境遇でも、苦学して立派になる人もいればそうでない人もいるし…。最終的には、努力は個人の問題じゃないかな。
G:するとHは、運の違いが生む格差は全て、個人が努力で乗り越えるべきだと言うの?幸運な人と同じだけ努力した不運な人が、格差のせいで幸運な人に追い付けないようだと、不運な人の努力は評価されていないとも言えるよ。
H:確かに…。ただ、努力も全て運次第だからという理由で、努力する人がしない人と同じ扱いを受けるとしたら、それはやっぱり不公平じゃないかなあ。
G:そうだよね…。次の倫理の授業が終わったら、先生にも聞いてみようか。

下線部fに関して、次の資料は、ロールズが才能について論じたものであり、倫理の授業で配付された。ロールズの思想と資料の内容の説明として最も適当なものを、後の回答選択肢のうちから一つ選べ。

資料 ロールズ『正義論』より
人が持つ道徳上の価値は、どれくらい多くの人がその人と同じような技能を提供しているか、どれくらい多くの人がその人が生み出せるものを欲することになるか、といった事情によって異なるはずがない。……希少な生得的才能を持っているために人より多く稼ぎ出される所得は、鍛錬にかかる費用を賄(まかな)い、学ぼうとする努力を促すためだけではなく、共通利益を最大限高めるように能力を向かわせるためのものでもある。結果として生じる分配上の取り分は、道徳上の価値と相関するものではない。どのような天性の強みを生まれつき授かるか、その強みが若年期に発達し育つかどうかには、道徳的に重要な根拠があるわけではないから。
  • 均等な機会の下での競争の結果であり、かつ最も恵まれない境遇を改善する場合にのみ不平等は許容されると説いたロールズが、資料では、人の道徳的な価値は才能や技能に対する需要で決まるものではないと論じている。
  • 西洋思想の基礎にある、あらゆる二項対立的な図式を問い直す必要があると説いたロールズが、資料では、自らの才能を伸ばすことができるかどうかで人の道徳的優劣は決まらないと論じている。
  • 功利主義の発想に基づいて、社会全体の効用を最大化することが正義の原理に適(かな)うと説いたロールズが、資料では、才能ある人は道徳的な共通目標のために自らの私財を提供するべきだと論じている。
  • 無知のヴェールの下で正義の原理を決定しようとする際、人々は何よりも基本的な自由を重視することになると説いたロールズが、資料では、個々人の才能に応じて社会の利益を分配することこそが正義に適うと論じている。

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