大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和6年度(2024年度)本試験
問43 (倫理(第2問) 問4)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問43(倫理(第2問) 問4) (訂正依頼・報告はこちら)

以下を読み、後の問いに答えよ。なお会話と問いのCと祖母は各々全て同じ人物である。

市民向けの講演を聞いた後で、Cは近くの図書館に行ったところ、江戸時代の平和について論じた本を紹介された。Cはその本を読み、以下のようにノートにまとめた。

ノート 江戸時代の平和について
江戸時代では「泰平(太平)」と呼ばれる平和な時代が続き、d 生まれつきの身分を固定的なものとみなす思想が社会や身分制度を支えた。また大きな内戦や対外戦争がない状況の下で、国内では産業や商業が発達した。
江戸時代中期になると、従来は蔑視されていたe 営利活動を肯定する思想も現れた。しかし幕末になると経済や政治が不安定になっていき、尊王攘夷論が多くの志士たちに影響を与えた。幕末には国内外で様々な問題が起こる中、f 横井小楠などの思想家が活躍した。

下線部dに関連して、江戸時代の儒教についての説明として適当でないものを、次のうちから一つ選べ。
  • 儒教では、君臣関係のみならず親子関係や夫婦関係にも定まった理があり、その理を具体化したものが礼儀であると説かれ、身分秩序にのっとった生き方が求められた。
  • 儒教の思想に基づき政治を担った武士たちは、人々が現実の社会・政治体制を天理とみなして、私利私欲を慎み、幕藩体制の下でそれぞれの役割を果たすことを求めた。
  • 朱子学者のなかには、日本の伝統的な神観念を、朱子学で説かれる理と同一視して、神道と朱子学の一致を説く者も現れ、またそこで説かれた尊王論は幕末の志士たちに影響を与えた。
  • 古学派のなかには、朱子学で説かれる理の考え方に依拠して、自己や他者を欺くことのない心のあり方である誠を重視し、人倫世界の充実を主張する者も現れた。

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この過去問の解説 (1件)

01

この問題は、江戸時代の儒教思想の特徴と、朱子学や古学派などの思想潮流の内容を正しく理解しているかを問うものです。江戸時代では、儒教が幕藩体制の正当化に利用されたことや、後期には朱子学や古学派から様々な思想的展開があったことが重要なポイントです。
では、問題を見てみましょう。

選択肢1. 儒教では、君臣関係のみならず親子関係や夫婦関係にも定まった理があり、その理を具体化したものが礼儀であると説かれ、身分秩序にのっとった生き方が求められた。

この選択肢は正しい内容です。儒教では「五倫」の思想(君臣、父子、夫婦、長幼、朋友)が重視され、これらの関係性に即した礼儀や行動様式が道徳とされました。江戸時代には、この思想が身分制度の正当化に用いられました。

 

選択肢2. 儒教の思想に基づき政治を担った武士たちは、人々が現実の社会・政治体制を天理とみなして、私利私欲を慎み、幕藩体制の下でそれぞれの役割を果たすことを求めた。

この選択肢は正しい内容です。朱子学を受け入れた幕府は、「天理」に従う政治体制を構築しようとしました。民衆にも、与えられた立場での役割遂行や、私欲を抑えた行動が道徳的とされました。

 

選択肢3. 朱子学者のなかには、日本の伝統的な神観念を、朱子学で説かれる理と同一視して、神道と朱子学の一致を説く者も現れ、またそこで説かれた尊王論は幕末の志士たちに影響を与えた。

この選択肢は正しい内容です。幕末において、朱子学の理の思想を神道に結びつけて「神道と朱子学の融合」を説いた人物も登場し、これが後の尊王論や幕末の志士の思想に大きな影響を与えました。代表例は会沢正志斎などがいます。

 

選択肢4. 古学派のなかには、朱子学で説かれる理の考え方に依拠して、自己や他者を欺くことのない心のあり方である誠を重視し、人倫世界の充実を主張する者も現れた。

この選択肢は誤りです。古学派は朱子学を批判し、孔子や孟子の「古」い教えに戻ることを主張しました。朱子学で説かれる理の思想に依拠するのではなく、それを排除して「誠」など儒教の本来的価値を重視しました。したがって、朱子学の理に基づいていたという記述が誤りです。

まとめ

この問題では、朱子学が身分秩序を支える思想として重視されたこと、神道と結び付いて尊王論に影響したこと、古学派は朱子学を批判したことを押さえておくとよいです。

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