大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和6年度(2024年度)本試験
問59 (倫理(第4問) 問4)
問題文
G:語学を勉強しておきなさいとか、新聞を読む習慣をつけなさいとか、よく言われるよね。私の親はそういう説教をしたあと、「後悔しないように」って付け加えるんだ。思いやりで言っているのは分かっているけど、後悔することに対してやたら否定的な感じがして、少し引っ掛かるんだよね。
H:そう? a 後悔するのは苦しいことだから、避けられるものなら避けた方がいいと考えるのは自然じゃないかな。後悔しないで済むように賢く行動しなさいっていうb 家族や先生の注意がプレッシャーになるのも分かるけど。
G:後悔しないようにする慎重さが大切だってことには賛成なんだよね。実際、私は高校受験のとき、ネットでc 情報を集めて志望校を決めたけど、それも後悔を避けるためだった気もする。でもだからといって、後悔は未熟な人間がするもので、しない方がいいもの、と決めつけるのには違和感があるんだ。
H:違和感かあ。私はあまり感じないかな。後悔って自分の未熟さとか不完全さを感じて辛くなることじゃない? d 後悔の苦しみが人の成長を助けることはあっても、後悔自体をポジティブに捉えるのは難しいかなあ。
G:うーん。でも、自分が深く後悔していることについて、e 周りの人から「後悔しても仕方がないから、次のことを考えなよ」とか「あなたのせいじゃないんだから、もう気にしない方がいいよ」とかと言われてf 歯がゆい思いをすることもあるでしょ? 後悔を否定すると、後悔している人にとって大事な何かを無視することになってしまう気がするんだよね。
H:なるほど。でも、そういう助言をしたくなる気持ちは理解できるけどなあ。特に、その人の将来のためになる後悔じゃないなら、意味がない気もするし。
G:それも分かるけど、本当は後悔には大事なものが隠されていて、「自分ではどうしようもないことを後悔しても意味がない」という考え方をするとそれを取りこぼしてしまうんじゃないかとも思うんだ。
下線部dに関して、次の資料と後の表は、グループでの意思決定に後悔が与える影響を検討した実験の結果である。資料と表を踏まえて、次ページの考察のa ~ cに入る記述として最も適当なものをそれぞれ次ページの(ア・イ)(ウ・エ)(オ・カ)から選んだ場合、それらの組合せとして正しいものを、次のうちから一つ選べ。
資料
実験参加者は3人一組のグループを作り、次の意思決定課題を行った。 半数のグループは、ある人物が余計な行動をしたために景品をもらえず後悔する話を読み(後悔群)、残り半数のグループは、ある人物が行動の内容にかかわらず景品をもらえなかった話を読んだ(非後悔群)。
続いて、仮想レースのチーム監督役が割り当てられ、レースに出場するか出場を中止するか、各グループで決定することを求められた。レース当日のコンディションは、事故の危険性が高いものに設定されており、中止が正しい選択であった。ただし、事故のリスクを測るために必要な情報の一部は、参加者にはあらかじめ伝えられていなかった。そのため、参加者は正しい選択をするために、どんな情報が必要なのか自分たちで考え、その上で、実験者に追加の情報を開示するよう求めなければならなかった。
後悔群と非後悔群のそれぞれで、要求した情報の平均件数、必要な情報を要求したグループの割合、および出場中止を決定したグループの割合は表のとおりであった。
考察
表によれば、この意思決定課題において、( a )。また、出場中止を決定したグループの割合は、後悔群の方が非後悔群よりも高いことが示された。後悔に関するエピソードを読むことで、人は( b )決定をする確率が高くなったと考えられる。以上のことは、私たちの物事の決定の仕方は、( c )からも影響を受けると考える根拠になるだろう。
aに入る記述
ア 後悔群では、全てのグループで、実験者に要求した情報の4割以上が必要な情報であったが、非後悔群では2割以下であった
イ 実験者に要求した情報の数は両群で同程度であったが、必要な情報を要求したグループの割合は、後悔群の方が非後悔群よりも高かった
bに入る記述
ウ 慎重な判断に基づいて情報を集めるようになり、その結果、正しい
エ 慎重になるあまり、必要な情報を選べなくなり、その結果、誤った
cに入る記述
オ 自分の直面している状況と同様の状況での後悔の話を知ること
カ 自分の直面している状況と直接関係ない状況での後悔の話を知ること

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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問59(倫理(第4問) 問4) (訂正依頼・報告はこちら)
G:語学を勉強しておきなさいとか、新聞を読む習慣をつけなさいとか、よく言われるよね。私の親はそういう説教をしたあと、「後悔しないように」って付け加えるんだ。思いやりで言っているのは分かっているけど、後悔することに対してやたら否定的な感じがして、少し引っ掛かるんだよね。
H:そう? a 後悔するのは苦しいことだから、避けられるものなら避けた方がいいと考えるのは自然じゃないかな。後悔しないで済むように賢く行動しなさいっていうb 家族や先生の注意がプレッシャーになるのも分かるけど。
G:後悔しないようにする慎重さが大切だってことには賛成なんだよね。実際、私は高校受験のとき、ネットでc 情報を集めて志望校を決めたけど、それも後悔を避けるためだった気もする。でもだからといって、後悔は未熟な人間がするもので、しない方がいいもの、と決めつけるのには違和感があるんだ。
H:違和感かあ。私はあまり感じないかな。後悔って自分の未熟さとか不完全さを感じて辛くなることじゃない? d 後悔の苦しみが人の成長を助けることはあっても、後悔自体をポジティブに捉えるのは難しいかなあ。
G:うーん。でも、自分が深く後悔していることについて、e 周りの人から「後悔しても仕方がないから、次のことを考えなよ」とか「あなたのせいじゃないんだから、もう気にしない方がいいよ」とかと言われてf 歯がゆい思いをすることもあるでしょ? 後悔を否定すると、後悔している人にとって大事な何かを無視することになってしまう気がするんだよね。
H:なるほど。でも、そういう助言をしたくなる気持ちは理解できるけどなあ。特に、その人の将来のためになる後悔じゃないなら、意味がない気もするし。
G:それも分かるけど、本当は後悔には大事なものが隠されていて、「自分ではどうしようもないことを後悔しても意味がない」という考え方をするとそれを取りこぼしてしまうんじゃないかとも思うんだ。
下線部dに関して、次の資料と後の表は、グループでの意思決定に後悔が与える影響を検討した実験の結果である。資料と表を踏まえて、次ページの考察のa ~ cに入る記述として最も適当なものをそれぞれ次ページの(ア・イ)(ウ・エ)(オ・カ)から選んだ場合、それらの組合せとして正しいものを、次のうちから一つ選べ。
資料
実験参加者は3人一組のグループを作り、次の意思決定課題を行った。 半数のグループは、ある人物が余計な行動をしたために景品をもらえず後悔する話を読み(後悔群)、残り半数のグループは、ある人物が行動の内容にかかわらず景品をもらえなかった話を読んだ(非後悔群)。
続いて、仮想レースのチーム監督役が割り当てられ、レースに出場するか出場を中止するか、各グループで決定することを求められた。レース当日のコンディションは、事故の危険性が高いものに設定されており、中止が正しい選択であった。ただし、事故のリスクを測るために必要な情報の一部は、参加者にはあらかじめ伝えられていなかった。そのため、参加者は正しい選択をするために、どんな情報が必要なのか自分たちで考え、その上で、実験者に追加の情報を開示するよう求めなければならなかった。
後悔群と非後悔群のそれぞれで、要求した情報の平均件数、必要な情報を要求したグループの割合、および出場中止を決定したグループの割合は表のとおりであった。
考察
表によれば、この意思決定課題において、( a )。また、出場中止を決定したグループの割合は、後悔群の方が非後悔群よりも高いことが示された。後悔に関するエピソードを読むことで、人は( b )決定をする確率が高くなったと考えられる。以上のことは、私たちの物事の決定の仕方は、( c )からも影響を受けると考える根拠になるだろう。
aに入る記述
ア 後悔群では、全てのグループで、実験者に要求した情報の4割以上が必要な情報であったが、非後悔群では2割以下であった
イ 実験者に要求した情報の数は両群で同程度であったが、必要な情報を要求したグループの割合は、後悔群の方が非後悔群よりも高かった
bに入る記述
ウ 慎重な判断に基づいて情報を集めるようになり、その結果、正しい
エ 慎重になるあまり、必要な情報を選べなくなり、その結果、誤った
cに入る記述
オ 自分の直面している状況と同様の状況での後悔の話を知ること
カ 自分の直面している状況と直接関係ない状況での後悔の話を知ること

- a ― ア b ― ウ c ― オ
- a ― ア b ― ウ c ― カ
- a ― ア b ― エ c ― オ
- a ― ア b ― エ c ― カ
- a ― イ b ― ウ c ― オ
- a ― イ b ― ウ c ― カ
- a ― イ b ― エ c ― オ
- a ― イ b ― エ c ― カ
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この過去問の解説 (1件)
01
この問題は、「他者の後悔の話」がグループの意思決定に与える影響を、実験のデータから読み取り、行動変化の要因や心理的背景を考察する力を問うものです。
ポイントは、実験結果を正しく読み取り、そこから導かれる傾向や心理を資料に忠実に理解することです。
では、選択肢を順に確認してまいります。
この選択肢は、aにアを選んでいますが、「全てのグループで4割以上が必要な情報だった」という記述は資料にありません。アは事実と異なりますので誤りです。
aにアを選んでいる点が誤りです。cのカについては、実験が「関係のない後悔の話」でも影響を与えたという読みができるため正しいですが、aの誤りによりこの選択肢は不適当です。
aとbの両方が資料と一致しておらず不適切です。特にbのエは、誤った判断をしたという事実がないため資料と反します。
bとcは読み取りの余地がありますが、aがアのため事実に反し、選べません。
この選択肢は多くの点で正しそうに見えますが、cのオは「自分と同様の状況」という前提が資料には明記されていないため、根拠が弱くなっています。
aのイは、情報数がほぼ同じで、必要な情報を選んだ割合が後悔群の方が高いことを正しく述べています。bのウも、慎重な判断の結果として正しい決定が多かったことと一致します。cのカについては、資料に「自分の状況と似ていた」とまでは書かれていないため、「関係ない状況でも影響を受けた」とする読み方の方が資料に忠実です。よって、最も適当な組合せといえます。
bのエが誤りです。後悔によって正しい判断をしたことが示されているため、誤った決定をしたというのは不適切です。
bのエが誤りですので、この選択肢も選べません。
この問題では、「後悔に関する話」が実際の判断行動にどう影響を与えるかを、資料に即して丁寧に読む力が問われました。
正しい選択肢はすべての記述が資料に基づいており、かつ心理的背景にも沿った内容となっているものが適切な解答です。
後悔は慎重な判断を促し、関係が直接的でなくとも意思決定に影響するという心理的傾向が読み取れます。
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