大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和6年度(2024年度)本試験
問61 (倫理(第4問) 問6)
問題文
G:語学を勉強しておきなさいとか、新聞を読む習慣をつけなさいとか、よく言われるよね。私の親はそういう説教をしたあと、「後悔しないように」って付け加えるんだ。思いやりで言っているのは分かっているけど、後悔することに対してやたら否定的な感じがして、少し引っ掛かるんだよね。
H:そう? a 後悔するのは苦しいことだから、避けられるものなら避けた方がいいと考えるのは自然じゃないかな。後悔しないで済むように賢く行動しなさいっていうb 家族や先生の注意がプレッシャーになるのも分かるけど。
G:後悔しないようにする慎重さが大切だってことには賛成なんだよね。実際、私は高校受験のとき、ネットでc 情報を集めて志望校を決めたけど、それも後悔を避けるためだった気もする。でもだからといって、後悔は未熟な人間がするもので、しない方がいいもの、と決めつけるのには違和感があるんだ。
H:違和感かあ。私はあまり感じないかな。後悔って自分の未熟さとか不完全さを感じて辛くなることじゃない? d 後悔の苦しみが人の成長を助けることはあっても、後悔自体をポジティブに捉えるのは難しいかなあ。
G:うーん。でも、自分が深く後悔していることについて、e 周りの人から「後悔しても仕方がないから、次のことを考えなよ」とか「あなたのせいじゃないんだから、もう気にしない方がいいよ」とかと言われてf 歯がゆい思いをすることもあるでしょ? 後悔を否定すると、後悔している人にとって大事な何かを無視することになってしまう気がするんだよね。
H:なるほど。でも、そういう助言をしたくなる気持ちは理解できるけどなあ。特に、その人の将来のためになる後悔じゃないなら、意味がない気もするし。
G:それも分かるけど、本当は後悔には大事なものが隠されていて、「自分ではどうしようもないことを後悔しても意味がない」という考え方をするとそれを取りこぼしてしまうんじゃないかとも思うんだ。
下線部fに関連して、次のア〜ウは、青年期に経験される心理状態についての用語の説明である。ア〜ウから適当なものを全て選んだとき、その組合せとして正しいものを、後のうちから一つ選べ。
ア 小説を読んだ際などに、主人公と自分自身を重ねて、現在の自分の問題が解決されたように思い満足するのは、同一視である。
イ 部活動や勉強で自分の思いどおりにならないときに、緊張が高まり、心の安定が脅かされることを、フラストレーションに陥るという。
ウ 「自分とは何者か」が分からなくなり、毎日が空虚に感じられ、将来の展望が持てず、精神的な危機に陥ることは、逃避と呼ばれる。
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問61(倫理(第4問) 問6) (訂正依頼・報告はこちら)
G:語学を勉強しておきなさいとか、新聞を読む習慣をつけなさいとか、よく言われるよね。私の親はそういう説教をしたあと、「後悔しないように」って付け加えるんだ。思いやりで言っているのは分かっているけど、後悔することに対してやたら否定的な感じがして、少し引っ掛かるんだよね。
H:そう? a 後悔するのは苦しいことだから、避けられるものなら避けた方がいいと考えるのは自然じゃないかな。後悔しないで済むように賢く行動しなさいっていうb 家族や先生の注意がプレッシャーになるのも分かるけど。
G:後悔しないようにする慎重さが大切だってことには賛成なんだよね。実際、私は高校受験のとき、ネットでc 情報を集めて志望校を決めたけど、それも後悔を避けるためだった気もする。でもだからといって、後悔は未熟な人間がするもので、しない方がいいもの、と決めつけるのには違和感があるんだ。
H:違和感かあ。私はあまり感じないかな。後悔って自分の未熟さとか不完全さを感じて辛くなることじゃない? d 後悔の苦しみが人の成長を助けることはあっても、後悔自体をポジティブに捉えるのは難しいかなあ。
G:うーん。でも、自分が深く後悔していることについて、e 周りの人から「後悔しても仕方がないから、次のことを考えなよ」とか「あなたのせいじゃないんだから、もう気にしない方がいいよ」とかと言われてf 歯がゆい思いをすることもあるでしょ? 後悔を否定すると、後悔している人にとって大事な何かを無視することになってしまう気がするんだよね。
H:なるほど。でも、そういう助言をしたくなる気持ちは理解できるけどなあ。特に、その人の将来のためになる後悔じゃないなら、意味がない気もするし。
G:それも分かるけど、本当は後悔には大事なものが隠されていて、「自分ではどうしようもないことを後悔しても意味がない」という考え方をするとそれを取りこぼしてしまうんじゃないかとも思うんだ。
下線部fに関連して、次のア〜ウは、青年期に経験される心理状態についての用語の説明である。ア〜ウから適当なものを全て選んだとき、その組合せとして正しいものを、後のうちから一つ選べ。
ア 小説を読んだ際などに、主人公と自分自身を重ねて、現在の自分の問題が解決されたように思い満足するのは、同一視である。
イ 部活動や勉強で自分の思いどおりにならないときに、緊張が高まり、心の安定が脅かされることを、フラストレーションに陥るという。
ウ 「自分とは何者か」が分からなくなり、毎日が空虚に感じられ、将来の展望が持てず、精神的な危機に陥ることは、逃避と呼ばれる。
- ア
- イ
- ウ
- アとイ
- アとウ
- イとウ
- アとイとウ
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (1件)
01
この問題では、「後悔している人への励ましが歯がゆく感じられる」というGの発言に着目し、
それに関連する青年期の心理的状態に関する用語の理解が問われています。
Gの発言には、自分の感情と他者の言葉とのズレに悩む様子が見られます。
こうした思春期特有の繊細な心の動きに対して、心理学的な用語が適切に当てはまるかを見ていくことがポイントです。
では、各選択肢を見てみましょう。
「小説の主人公と自分を重ね合わせること」は、心理学でいう同一視にあたります。
これは、他者(人物やキャラクターなど)の特徴を自分の中に取り入れることで、自己理解や感情の安定をはかる仕組みです。
青年期には特に起こりやすい心の働きです。なのでアはあっていますが、イも正しいのでこの選択肢は不適切です。
「物事がうまくいかないときに心の安定が乱れる」のは、まさにフラストレーション(欲求不満)です。
これは、目標の達成が妨げられることで生じる心理的緊張やストレスの状態であり、部活動や進路などで思い通りにいかないことが多い青年期に典型的な反応です。なのでイは正しいですが、アも正しいのでこの選択肢は不適切です。
「自分が何者か分からなくなり、空虚さや将来への不安に陥る状態」は、心理学ではアイデンティティの混乱(モラトリアムの危機)などと呼ばれております。
しかし、ここで使われている「逃避」という用語は、「現実の困難を避けて空想や無関係な行動に逃げること」を意味し、説明と用語が合っていません。したがってこの選択肢は不適切です。
アとイの説明が正しいのでこの選択肢は適切です。
ウの説明が正しくないのでこの選択肢は不適切です。
ウの説明が正しくないのでこの選択肢は不適切です。
ウの説明が正しくないのでこの選択肢は不適切です。
この問題では、まずGの「歯がゆい思い」という発言から、青年期に見られる繊細な心理的反応を正しく読み取ることが大切です。次に、選択肢の用語がその心理状態を適切に説明しているかどうかを見極める必要があります。アとイは内容と用語が一致しており正答ですが、ウは説明自体はもっともらしく見える一方で、使われている「逃避」という用語が不適切です。このように、説明と用語がきちんと対応しているかを落ち着いて判断できれば、正解にたどり着けます。
参考になった数0
この解説の修正を提案する
前の問題(問60)へ
令和6年度(2024年度)本試験 問題一覧
次の問題(問65)へ