大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和6年度(2024年度)追・再試験
問64 (倫理(第4問) 問9)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和6年度(2024年度)追・再試験 問64(倫理(第4問) 問9) (訂正依頼・報告はこちら)

以下を読み、後の問いに答えよ。なお、会話と問いのGとHは各々全て同じ人物である。

倫理の授業で出た次の課題について、高校生GとHが後の会話を交わした。

課題
悪いことが起こるとしても、それが意図されていなければよいのか自分の行いを正当化するために、「そんなつもりはなかった」と言ったことはありませんか。このような表現は、積極的差別是正措置、生命維持治療の差し控えなどの社会的な問題の議論にも出てきます。調べてみましょう。

G:そういえば、部活の勧誘のチラシを多めに作って余らせて、a 言い訳したことがあったな。「部員を増やしたい一心で、b 資源を無駄にするつもりはなかった」って。
H:積極的差別是正措置について調べていても似た表現が出てきて、面白かったよ。例えば、女性を積極的に管理職に登用する会社の制度のことなんだけど。
G:男性の昇進が減るから、男性への逆差別だという批判もあると聞いたよ。
H:うん、だけど、意図されているのはあくまで女性の登用で、男性の昇進を減らすことではないから正当化できる、という意見もあるんだ。仮に男性の昇進を妨げることが悪いことでも、c 差別ではない、と言えるのかもしれない。
G:私は、d 終末期医療の問題の方を調べたよ。患者のe 生命の維持に必要な治療でも、回復に役立つ見込みがなく、非常につらくて、本人が望んでいない場合などには、差し控えることが許される、という考え方があるよね。
H:教科書では、「尊厳死」っていう言葉で出てきたっけ。
G:うん。それも、あくまでつらい治療を避けるためにしていることで、患者の命を短くすることは意図されていない。そんな風に言われるんだって。
H:なるほど。でも、やっぱり、どうだろう。考え方や、f 性格や気質によっても、人の意見が違ってきそうな問題だなあ。たとえg 意図が違っても、結果は同じだよ。男性の昇進が減ったり、生命が短くなったりする事実は変わらないよね。

上記の会話が交わされた後、翌週の倫理の授業で、先生Tが次の板書を示し、G,Hと後の会話を交わした。

板書 二重結果原則
行為は、悪い結果を生じさせると分かっていても、同時に良い結果も生じさせると分かっていれば、許されることがある。その条件を示した原則。【条件1】意図されているのが、良い結果だけで、悪い結果ではないこと。かつ、【条件2】良い結果が、悪い結果を埋め合わせられるほど望ましいものであること。

T:この二重結果原則を使って、前回の授業の問題を考えてみましょう。この原則に従うと、同じように悪い結果を生じさせる行為でも、それを起こす意図があったかどうかで、許されたり許されなかったりします。
H:こんな考え方があるんですね。でもこれだと、そんなつもりはなかったと言えば、何でも許されてしまいそう。極端なことを言えば、まだ治せるはずの、末期ではない患者を治療せずに死なせても、医師が死なせる意図はなかったと言えば、許されてしまわないでしょうか。
G:でも、板書の条件2を見てよ。悪い結果を埋め合わせるくらいの良い結果が伴わなければ許されない、ということだよね。Hさんのいうケースだと、まだ治せる人が亡くなってしまうわけだから、例えばつらい治療を避けられるということの良さだけでは、埋め合わせられない、とは考えられないかな。
T:よいポイントですね。結果が全く問題にならないわけではないんですよ。
H:でも、気になります。そもそも、h 人が何かしているときにどんな意図を持っているのかなんて、はっきり分かることでしょうか
T:それも重要な疑問ですね。この原則については正しくないという意見もあります。他方で、私たちの普段の物の見方や、社会問題に関する議論の中に、この原則と一致する考え方が見つかることも事実です。意図というキーワードに注目すると、色々な倫理的な意見をよりよく理解できるはずです。

行為の是非と意図についての記述として、上記2つの倫理の授業の会話の趣旨に最もよく合致するものはどれか。次の回答選択肢のうちから一つ選べ。
  • 二重結果原則に従うと、二つの行為について、たとえそれぞれの意図に違いがあっても、両方の結果が全く同じであれば、一方だけ許されて他方が許されないということはない。
  • 女性を優先的に登用する積極的差別是正措置については、男性の昇進を妨げるという悪い結果を意図した制度ではないという意見がある。しかし、仮に悪い結果が意図されていたとしても、二重結果原則で正当化できる。
  • 患者の生命維持に必要な治療を差し控えることが二重結果原則の下で許されるための条件の一つは、つらい治療を避けられるという良い結果が、死期が早まるという悪い結果を埋め合わせるほど大きいことである。
  • 人の意図は、はっきり分からないと思われるかもしれないが、それでも、なされた行為の意図が、その行為を正当化できるかどうかの基準であるという考え方の正しさについては疑いの余地がない。

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