看護師の過去問
第103回
午前 問75
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
看護師国家試験 第103回 午前 問75 (訂正依頼・報告はこちら)
Aさん(45歳、女性)は、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)〈ALS〉のため自宅で療養中である。Aさんは球麻痺症状が出現したため、経口摂取に加え、胃瘻による経管経腸栄養管理が開始された。
訪問看護師が行うAさんとAさんの家族への指導で適切なのはどれか。
訪問看護師が行うAさんとAさんの家族への指導で適切なのはどれか。
- 水分は経口による摂取を勧める。
- 注入時間に生活パターンを合わせる。
- 経口摂取中の体位は頸部前屈位とする。
- 胃瘻からの半固形化栄養剤の使用は禁止する。
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (3件)
01
×不正解
水分はサラサラしているため、Aさんのような球麻痺症状がある人は誤嚥しやすいです。そのため、水分摂取も胃瘻からを勧めます。
しかし、口腔内が乾燥してしまうと細菌が増殖しやすいなどといった可能性もあります。そのため、経口で摂取するのは最小限にし、またとろみをつけるなどの対応をします。
よって、この選択肢は不正解です。
2 . 注入時間に生活パターンを合わせる。
×不正解
経管栄養の時間はもともとの生活パターンに合わせるようにします。
そのため、経管栄養にどのくらい時間がかかるのか、必要なカロリーはどれくらいなのか、栄養剤の形態は適切かなどをアセスメントします。
よって、この選択肢は不正解です。
3 . 経口摂取中の体位は頸部前屈位とする。
〇正解
球麻痺症状がある時には誤嚥をしやすいです。そのため、経口摂取する際には体位がとても大切になってきます。
経口摂取する時に顎を挙げて飲み込むことが自然な動作のようにも思えますが、この体位だと喉頭口が広く、飲み込む際に喉頭口をふさごうとしてもふさぎにくいため誤嚥しやすいです。そのため、球麻痺症状のあるAさんには向きません。
顎を引いた体位(頸部前屈位)をとると、喉頭口は狭くなります。この状態で食べ物を食べると喉頭蓋がしっかり喉頭口を覆うため、気管に食物が入りにくくなります。よって、正解です。
4 . 胃瘻からの半固形化栄養剤の使用は禁止する。
×不正解
経口摂取の場合、咀嚼によって食物は粥状になります。それが胃に入ることによって胃が弛緩したり、腸が蠕動運動を開始します。
半固形化栄養剤は、粥状に近い形態のため胃瘻から注入した後、液体の栄養剤に比べて胃に残ります。そのため、より自然な腸管運動が期待されます。また、臨床でも半固形化栄養剤は注入されています。よって、この選択肢は不正解です。
参考になった数1
この解説の修正を提案する
02
嚥下障害とは、飲み込む力が障害されることです。飲み込む力が障害されることで、口から食道に入るべきものが、誤って気道に入ってしまいます。そうなると誤嚥性肺炎にもつながります
Aさんは嚥下障害が出現しているため、栄養管理は主に胃瘻で行います。ただ、QOLを高めるために経口摂取を続けることもできます。口から食べる、という希望を叶えることもでき、併用も可能です。
1.嚥下障害のある方の経口摂取では、とろみをつけることが必要です。「はちみつぐらい」のとろーっとした状態へ片栗粉でもできるかもしれませんが、専用のとろみ剤もあるため、それらで水分もとろみをつける必要があります。しっかりととろみをつければ誤嚥の可能性も排除できるかもしれませんが、難しいでしょう。無理に経口摂取を勧める必要はありません。
2.注入時間に生活パターンを合わせるのではなく、生活パターンに注入時間を合わせると良いでしょう。注入時間を新たに設ける必要はありますし、ある程度時間を空ける必要はありますが、注入時間はこの時間にしないといけない!ということはありません。
3.私たちは、食事の際に90度座位、頸部前屈位の姿勢をとっていると思います。頸部前屈位は「枕を高くして、あごを引く」格好です。利点は頸部を前屈することにより嚥下筋力が働きやすくなる、喉頭蓋谷が開き食塊がそこに溜まりやすくなる、口腔と気管に角度が付き誤嚥しにくくなる、点があります。
4.半固形化栄養剤の効果は、①胃食道逆流の予防と誤嚥性肺炎の回避、②胃瘻の漏れ防止、③便通の改善、下痢の予防、④短時間に注入できるため、体位を長時間一定にする必要がないため褥瘡予防・改善、⑤短時間に注入できるため、時間の有効活用ができる、などがあり、胃瘻からの半固形化栄養剤は普通に注入されています。
参考になった数0
この解説の修正を提案する
03
Aさんには、嚥下障害が発現しておりますので、基本的には胃瘻による栄養管理が中心となりますが、状態が良ければ経口摂取の併用もできます。経口摂取によって、口から摂取することの満足感を得ることができますので、完全な栄養補給を目的とすることはできませんが、QOL向上を目的とすることができます。わずかなとろみ食の摂取には限られますが、可能であれば併用することが望まれます。なお経口摂取では、誤嚥を防ぐため頚部前屈位(ファウラー位)をとり、とろみ食を摂取します。このため、1のような水分は誤嚥しやすいので経口摂取に不向きです。3が正解です。
胃瘻からの摂取については、本人の生活リズムが崩れないよう、本人の生活パターンに合わせた注入時間を考えます。投与間隔はあけた方が良いですが、その注入時間に決まりはありません。食事は、生きるうえでの楽しみでもありますので、本人を尊重し、できるだけQOLをさげないような選択を行います。2は不正解です。なお、4のような半固形化栄養剤は、胃瘻からの漏れを予防したり、下痢を防ぎ便通を良くするなどの効果があるため、胃瘻からの投与は行われています。したがって、4は不正解です。
参考になった数0
この解説の修正を提案する
前の問題(問74)へ
第103回問題一覧
次の問題(問76)へ