正解は 2・5 です
身体拘束(抑制ともいいます)は、精神疾患に理解がなかった時代や、人権や本人の意思よりも治療が最優先されていた時代から行われてきた行為ですが、現代では対象の人権を著しく侵害するとして、必要性が疑問視されてきています。
しかしながら、実際の現場では人員や病棟内の巡回数の問題、その時々で行なっている医療行為の重要性、患者の身体的な面や精神状態などにより、どうしても必要とされる場面もあり、万一、行うとなった際には非常に注意が必要な手技でもあります。
現時点での抑制については、厚労省が『介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準』の第13条4項と第13条5項でさわりを述べるに留まっており、また日本看護倫理学会がガイドラインを作成してはいますが、明確に基準や遵守しない場合の罰則などが定まっているわけではありません。
ただ、いくら必要な行為であろうとも、患者本人に身体及び精神的な苦痛を与える行為であることには変わりがなく、行う際には
①患者本人や他の対象の生命および身体を害する危険性があるなど、状況が切迫していること
②身体拘束を行う以外に代替案が存在しないこと
③行うのは必要とされる状況が存在する時のみであり、あくまで一時的な処置であること
という最低限3つの条件を満たしている必要があると言えるでしょう。
参考:
介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準ー厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000202201.pdf
身体拘束予防ガイドラインー日本看護倫理学会 臨床倫理ガイドライン検討委員会
http://jnea.net/pdf/guideline_shintai_2015.pdf
1:×
上記の内容から、身体拘束が行われる対象は往々にして正常な判断能力、あるいはその場にあった行動を取れない可能性があります。
そのため、「拘束されているのでその部分の体動だけ控えよう」という判断はあまり下りません。
手首をいくらタオル等で保護した上からの拘束でも、解こうと全力で動かすために擦過傷ができたり、また拘束が緩んでしまい、全く意味をなさなかったり、ミトンの場合は噛み破って、繊維が口の中に残留していたり、また反対に意識が朦朧としているせいで、冷感や疼痛に気づかず循環障害を起こしたまま経過していたり、血栓ができ、それが全身を巡っていたりと様々な危険性があります。
よって、正直1時間ごとの訪室ではあまりに遅すぎます。
病院や施設内のガイドライン、または医師の判断にもよりますが、1時間に2〜4回の訪室と、以下の点の観察は必要でしょう。
・拘束具の破損や緩みはないか
・拘束部分が触れる部分に傷・赤み・痣・疼痛・しびれ等の異常はないか
・拘束部分より、抹消に極端な冷感・疼痛・チアノーゼ・しびれ等の異常はないか
・拘束している側の関節部分に可動時のこわばりや疼痛等の異常はないか
・対象の呼吸状態・循環状態等、および褥瘡やイレウス等の可能性のある異常はみられないか
2:○
身体拘束を行う場合は患者本人、及び可能であればご家族にも拘束を行う理由を知らせる必要があります。
病院・施設によっては本人、またはご家族に同意書への署名を依頼したり、抑制の解除目安期間を知らせたりすることもあります。
3:×
拘束中は患者が自力で水分摂取を行うこともできないため、看護師が意識して水分摂取を促し、摂取量に気を配る必要があります。
患者の体重や病状にもよりますが、特に疾病上留意点がない場合は1日に1.5L〜2.0L以上を目安とします。
4:×
身体拘束と手紙の受け取りには全く関連がありませんし、抑制を行なっていない閉鎖病棟に入院中の対象であろうとも、信書や通信の自由は保障されているため、制限の必要はありません。
参考:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律ーe-Gov法令検索
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC1000000123&openerCode=1
5:○
早期に解除できるよう計画を立てることはもちろん、家族が面会等で常に付き添える場合は最低限拘束具を外す時間を作るなど、代替案が出現した時点で解除できるよう努め、実行することが重要です。