介護福祉士の過去問
第35回(令和4年度)
コミュニケーション技術 問6

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問題

介護福祉士国家試験 第35回(令和4年度) コミュニケーション技術 問6 (訂正依頼・報告はこちら)

Eさん(87歳、女性、要介護3)は、介護老人福祉施設に入所していて、認知症(dementia)がある。ある日、担当のF介護福祉職がEさんの居室を訪問すると、Eさんは、イライラした様子で、「私の財布が盗まれた」と言ってベッドの周りをうろうろしていた。一緒に探すと、タンスの引き出しの奥から財布が見つかった。
F介護福祉職は、Eさんのケアカンファレンス(care conference)に出席して、この出来事について情報共有することにした。
Eさんの状況に関する報告として、最も適切なものを1つ選びなさい。
  • 「Eさんの認知機能が低下しました」
  • 「Eさんは、誰かに怒っていました」
  • 「Eさんには、もの盗られ妄想があります」
  • 「Eさんは、財布が見つかって、安心していると思います」
  • 「Eさんは、財布が盗まれたと言って、ベッドの周りをうろうろしていました」

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この過去問の解説 (4件)

01

この設問で大切なことは、認知症がある利用者の症状に対して理解しておくことです。

問題文の症状は物盗られ妄想とも考えられますが、設問ではカンファレンスでの情報共有に必要な状況報告を選びます。

選択肢1. 「Eさんの認知機能が低下しました」

×:認知症がある方ですが、財布を探していたという状況だけで認知機能が低下したとはいえません。

以前の認知機能がどの程度が記載がありません。

よって比較できないため低下したとはいえまえせん。不適切です。

選択肢2. 「Eさんは、誰かに怒っていました」

×:設問ではイライラしている様子の記載がありますが、「誰かに怒っている」との記載はありません。推測ですので回答としては不適切です。

選択肢3. 「Eさんには、もの盗られ妄想があります」

×:問題文で「私の財布が盗まれた」と言っているので、物盗られ妄想と考えられる症状です。

しかし、たまたま忘れていただけかもしれません。

ケアカンファレンスで情報共有すべきは、実際の状況です。

よって、この選択肢は不適切です。

選択肢4. 「Eさんは、財布が見つかって、安心していると思います」

×:Eさんが「安心していた」という記載は問題文にありません。

あくまでも推測です。よって選択肢は不適切です。

選択肢5. 「Eさんは、財布が盗まれたと言って、ベッドの周りをうろうろしていました」

〇:状況を正確に伝えることが、ケアカンファレンスに必要です。

この選択肢はEさんの状況を正確に伝えています。よって正解です。

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02

ケアカンファレンスでは、情報共有や共通理解を図り、問題解決に向けた話し合いを行います。情報共有では客観的事実を持ちより、共通理解では解釈を統一していきます。なので、この問題では、Eさんの言動を客観的に捉えた内容を選択するのが正解です。

選択肢1. 「Eさんの認知機能が低下しました」

誤答です。『認知機能が低下した』というのはどの時点と比べてどのくらい低下したのか不明瞭であり、『低下した』というのはEさんの言動を見たうえでのF介護福祉職の判断になってしまうので、この選択肢は適切ではありません。

選択肢2. 「Eさんは、誰かに怒っていました」

誤答です。何をもって『怒っていた』と表現するのかは人によって異なります(表情なのか、声の大きさなのか、動作なのか)。Eさんの言動を『怒っていた』と判断したのは、あくまでもF介護福祉職の主観になってしまうので、この選択肢は適切ではありません。

選択肢3. 「Eさんには、もの盗られ妄想があります」

誤答です。Eさんの言動を『もの盗られ妄想』と表現している時点で、F介護福祉職の予測・判断が入ってしまっています(文中の情報だけでは誰が引き出しの奥に財布をしまったのかは分からないので)。なので、この選択肢は適切ではありません。

選択肢4. 「Eさんは、財布が見つかって、安心していると思います」

誤答です。文中にはEさんが『安心した』という発言はなく、『〜と思います』というのはあくまでもF介護福祉職の予測です。よってこの選択肢は適切ではありません。

選択肢5. 「Eさんは、財布が盗まれたと言って、ベッドの周りをうろうろしていました」

正答です。『財布が盗まれた』は実際のEさんの発言であり、『ベッドの周りをうろうろしていた』というのは実際のEさんの行動を表現したものです。よってこの内容が情報共有に適した客観的事実といえます。

まとめ

主観自分ひとりのものの見方・感じ方による結論・判断・予測のこと

客観多くの人にとって変わらないものの見方・考え方 ありのままの事実

利用者の言動を観察する時、記録を残す時、情報共有を行う時、この『客観的事実』と『主観』を分けて捉えることはとても大切です。

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03

カンファレンスとは話し合いの事であるため、ケアカンファレンスとは介護に関する話し合いと訳せられます。話し合いのため事実をもとに情報を生活に伝える必要があります。また事実と推測は分けて伝える事も必要です。

選択肢1. 「Eさんの認知機能が低下しました」

×:認知機能が低下したと推測できる事であり、決定するのは診断した医師しかできません。よって選択肢は誤りになります。

選択肢2. 「Eさんは、誰かに怒っていました」

×:誰かに怒っていたと記述は見当たりません。F介護士の主観によるもので事実とは違う可能性があります。よって選択肢は誤りになります。

選択肢3. 「Eさんには、もの盗られ妄想があります」

×:「私の財布が盗まれた」とあるためもの盗られ妄想と言えるかもしれません。しかし、事実を伝えるのであれば、もの盗られ妄想は認知症の周辺症状を判定するのも診察した医師の役割と言えます。介護職が自己の判断で、もの盗られ妄想という事は尚早かもしれません。

選択肢4. 「Eさんは、財布が見つかって、安心していると思います」

×:財布が見つかって安心したとの記述はありません。もしかしたら、財布が見つかって逆に怒ったかもしれません。よって本問は事実に基づいていないので誤りと言えます。

選択肢5. 「Eさんは、財布が盗まれたと言って、ベッドの周りをうろうろしていました」

〇:事実に基づいた内容を伝えているので正答になります。

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04

ケアカンファレンスは、介護福祉士医に加え、看護師などといった多職種が集まり、より良いサービスを提供するために行う会議です。現場での問題点を出し、改善策を導いたり、利用者の情報を共有したりする場となります。

選択肢1. 「Eさんの認知機能が低下しました」

誤りです。設問の状況だけで、認知機能が低下しているという判断を行うことは早計です。

選択肢2. 「Eさんは、誰かに怒っていました」

誤りです。イライラとした様子が見受けられますが、誰かに対して怒っていたのかを判断することはできません。

選択肢3. 「Eさんには、もの盗られ妄想があります」

誤りです。「財布を盗まれた」といった言動は『もの取られ妄想』の状況に似ていますが、今回の出来事だけで断定することはできません。

選択肢4. 「Eさんは、財布が見つかって、安心していると思います」

誤りです。設問の状況だけでは、財布が見つかったことで『安心している』のかを推察することはできません。

選択肢5. 「Eさんは、財布が盗まれたと言って、ベッドの周りをうろうろしていました」

正解です。ケアカンファレンスではEさんの状況を報告し、多職種と共有することが望まれます。設問の状況で報告できるのは「財布が盗まれたと言って、ベッドの周りをうろうろとしていた」とい点となります。

まとめ

Eさんの状況は、認知症による『もの取られ妄想』が出現しているように見受けられます。ただ、認知症と断定したり、Eさんの心の内を報告したりするには情報が十分ではありません。ケアカンファレンスでは、Eさんの状況について過不足なく情報を共有することが望ましいと考えます。

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