介護福祉士の過去問
第35回(令和4年度)
総合問題 問7

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問題

介護福祉士国家試験 第35回(令和4年度) 総合問題 問7 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで問題に答えなさい。
〔事例〕
Dさん(38歳、男性、障害支援区分3)は、1年前に脳梗塞(cerebral infarction)を発症し左片麻痺(ひだりかたまひ)となった。後遺症として左同名半盲、失行もみられる。現在は週3回、居宅介護を利用しながら妻と二人で生活している。
ある日、上着の袖に頭を入れようとしているDさんに介護福祉職が声をかけると、「どうすればよいかわからない」と答えた。普段は妻がDさんの着替えを手伝っている。食事はスプーンを使用して自分で食べるが、左側にある食べ物を残すことがある。Dさんは、「左側が見づらい。動いているものにもすぐに反応ができない」と話した。
最近は、日常生活の中で、少しずつできることが増えてきた。Dさんは、「人と交流する機会を増やしたい。また、簡単な生産活動ができるようなところに行きたい」と介護福祉職に相談した。

Dさんにみられた失行として、適切なものを1つ選びなさい。
  • 構成失行
  • 観念失行
  • 着衣失行
  • 顔面失行
  • 観念運動失行

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この過去問の解説 (3件)

01

失行に関する問題です。

問題文の用語について解説します。

失行とは、麻痺などの運動障害や言われたことへの理解障害がないにもかかわらず

日常生活で行っている動作が正しくできなくなることです。

同名性半盲は、右目も左目も(両目とも)、右か左か同側の視野の半分が見えなくなることです。

選択肢それぞれについて、用語を確認しながら回答していきましょう。

選択肢1. 構成失行

×:構成失行は、目でみたものの形や奥行き、空間が正しく把握できないことをいい、構成障害ともいいます。図形や物の模写や、積み木や簡単なパズルができなくなります。

構成失行が原因で着衣ができないこともありますが、この問題では、着衣失行は別の選択肢です。

選択肢として、最も適しているとはいえません。

 

選択肢2. 観念失行

×:観念失行は、運動麻痺がないにも関わらず、一連の動作ができないことをいいます。

具体例では、封筒と便箋、のりを用意し、”便箋を折って封筒にいれる”という動作ができないことです。

便箋にのりを付けてしまったり、封筒をのり付けしてから便箋を折りまげるなど、一連の動作としてできないことをいいます。

選択肢3. 着衣失行

〇:着衣失行は、衣服を着用するときに、どこに腕を通して着ればいいのか着衣動作ができなくなるなど、衣服の上下や裏表がわからなくなり着衣に支障がでることをいいます。

選択肢は適切です。

選択肢4. 顔面失行

×:顔面失行は、運動麻痺がないにも関わらず、目を閉じる、舌をだす、咳をするなどの顔面や舌の動作ができないことをいいます。

選択肢は不適切です。

選択肢5. 観念運動失行

×:観念運動失行は、運動麻痺がないにもかからず、単一の物品の使用や簡単なジェスチャーができない状態をいいます。

例えば、歯ブラシで歯を磨く動作において、歯ブラシをうまく持てなかったり、口以外のところで磨く動作をすることがあります。

ジェスチャーにおいては、手を振る動作(バイバイ)で、手を前後や上下に動かすことがあります。

選択肢は不適切です。

参考になった数27

02

失行とは、運動機能や感覚などの障害がないにも関わらず、今までは行えていた目的に沿った行動ができなくなることをいいます。『上着の袖に頭を……と答えた。』の部分が選択肢のどの失行に当たるかを答える問題です。

選択肢1. 構成失行

誤答です。構成失行とは、二次元的・三次元的な形の認識やそれに対する行動がとれなくなることをいいます。図形の模写やものを組み立てることができなくなったりします。

選択肢2. 観念失行

誤答です。観念失行とは、物の名前や用途は説明できても正しい手順で使用できなくなったり、日常の一連の動作を順序よく行えなくなることをいいます。鉛筆を見て『書くもの』と理解・説明できるのに、歯を磨いてしまおうとしたりします。

選択肢3. 着衣失行

正答です。着衣失行とは、衣服を適切に着ることができなくなることをいいます。上着の袖に頭を入れようとし『どうすればよいかわからない』と発言しているDさんは、着衣失行の状態にあるといえます。

選択肢4. 顔面失行

誤答です。顔面失行とは、喉・舌・口唇・頬などの筋肉が、反射的には動くのに意図的に動かそうとすると動かせなくなることをいいます。

選択肢5. 観念運動失行

誤答です。観念運動失行とは、習慣的な動きや自然発生的な動きはできるのに、意図的にはできなくなることをいいます。日常生活の中では自然に椅子に座ることができるのに、「この椅子に座ってください」と言われると『座る』という動作が行えないといった状態になります。

まとめ

他には、

肢節運動進行細かい動作を行えなくなる失行。ボタンを上手にかけられなくなったり、コインをうまくつかめなくなったりする。

があります。覚えておくとよいでしょう。

参考になった数5

03

失行とは、運動機能に障害もなく、理解力もあるのに、日常生活の動作が上手くできなくなることです。

選択肢1. 構成失行

不適切

構成失行とは、目で認識した物や形から空間を把握できない状態です。例えば、図形などを模写できない、積み木を組み立てることができないなどがあります。

選択肢2. 観念失行

不適切

観念失行とは、連続した必要な動作ができない状態です。例えば、「紙を切ってから箱に入れる」などがあります。紙を切る道具の使用方法などは分かっていても、その一連の動作ができなくなります。

選択肢3. 着衣失行

適切

着衣失行とは、体と衣類を空間的に合わせることができず、衣類の上下や表裏などが分からなくなる状態です。それによりボタンが掛けられなくなったり、どこに手足を通せばよいか分からなくなったりします。Dさんは、上着の着衣が分からなくなり、袖に頭を入れようとしており、着衣失行と言えます。

選択肢4. 顔面失行

不適切

顔面失行とは、喉頭、咽頭、舌、口唇、頬などの筋肉が、反射的には動くが、意識的に動かせない状態です。例えば、口の開閉や舌の出し入れなどが思うようにできなくなります。

選択肢5. 観念運動失行

不適切

観念運動失行とは、既に獲得している普段行っている単一の動作が、不意に尋ねたりマネをして貰おうとするとできなくなる状態です。例えば、普段は箸を使い食事をしている方に、箸の持ち方を尋ねると、分からなくなったりします。

まとめ

失行は、高次脳機能障害の一つです。完治は難しく、上手にサポートしていく必要があります。介護福祉職は、失行にはどのような種類があり、それぞれどのような状態になるのか理解した上で介護方法を検討していくことが大切です。

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