マンション管理士の過去問
平成27年度(2015年)
問10
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問題
マンション管理士試験 平成27年度(2015年) 問10 (訂正依頼・報告はこちら)
甲マンション管理組合(以下「甲」という。)の区分所有者Aに対する滞納管理費等の請求に関するマンション管理士の次の意見のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。ただし、甲の規約は、標準管理規約と同様であるものとする。
- 甲は、Aに対して未払金額とそれに対する規約所定の割合による遅延損害金、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して請求することができます。
- 甲は、Aに対して違約金としての弁護士費用を請求することができますが、これは、契約上の金銭債務の不履行による損害賠償として弁護士費用を請求する場合と同様です。
- Aが違約金としての弁護士費用の支払いを遅延したときは、甲は、Aに対して民法所定の割合による遅延損害金を請求することができます。
- Aの滞納管理費等に係る債権の時効による権利消滅の効果は、5年の時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生じます。
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この過去問の解説 (3件)
01
正解は2です。
1.正しいです。
標準管理規約の第60条2項では、
「 組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金として
の弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。」と定めています。
2.誤りです。
選択肢1の標準管理規約の第60条2項の、「違約金としての弁護士費用」は、管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解されます。
一方で、債務不履行に基づく損害賠償請求をする際の弁護士費用については、その性質上、相手方に請求できないと解されるので、違約金としての弁護士費用とは異なります。
最高裁判例(平成26年4月16日)参照。
3.正しいです。
金銭債務の損害賠償については、
民法第419条で、「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」と定めています。
この「法定利率」とは、民法第404条で、
「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年3分とする。」と定めています。
違約金としての弁護士費用の支払いは、「金銭の給付を目的とする債務」にあたるので、支払いを遅延すると、損害賠償金として支払いを遅延している金額に年3分の利率をかけた金額を請求でできます。
4.正しいです。
民法145条では、
「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」と定めています。
当事者が援用して、初めて確定的に時効が生じます。
以上から、選択肢2が誤っているので、正解は2となります。
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02
1.標準管理規約では、「組合員が期日までに管理費等を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる(第60条2項)。」と規定されています。
甲の規約は、標準管理規約と同様であるものとされているので、管理規約の規定に基づき、未払金額、遅延損害金、違約金としての弁護士費用、督促及び徴収の諸費用を請求することができます。
2.「債権者は、金銭を目的とする債務の不履行による損害賠償として、債務者に対し弁護士費用その他の取立費用を請求することはできない。」と解されています。(昭和48年10月11日 最高裁判所 判例)
しかし、管理組合が区分所有者に対し滞納管理費等を訴訟上請求し、それが認められた場合でも、管理組合にとって所要の弁護士費用や手続費用が持ち出しになってしまう事態が生じ得るため、管理規約で弁護士費用を違約金として請求することができるように定めています。
したがって、契約上の金銭債務の不履行による損害賠償としての弁護士費用と、違約金としての弁護士費用とは、異なるものです。
よって、この設問は誤りです。
3.違約金としての弁護士費用の支払いを遅延したことは、金銭の給付を目的とする債務の不履行に当たります。
民法では、「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める(第419条1項)。」と規定されています。
したがって、甲は、Aに対して民法所定の割合による遅延損害金を請求することができます。
4.「管理費等の債権は、管理規約の規定に基づいて、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的な額は総会の決議によって確定し、月ごとに所定の方法で支払われるものである。このような管理費等の債権は、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条所定の債権に当たるものというべきである。」と解されています。(平成16年4月23日 最高裁判所 判例)
民法169条では、「年またはこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。」と規定されています。
したがって、管理費等の債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときは、時効により消滅します。
さらに、「時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものと解するのが相当。」とされています。(昭和61年3月17日 最高裁判所 判例)
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03
1 正しい。
標準管理規約第60条第2項によれば、「組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。」とあります。したがって、選択肢は正しいです。
2 誤り。
選択肢1に引用した標準管理規約第60条第2項にあるとおり、滞納管理費請求時の弁護士費用は違約金であり、金銭債務不履行による損害賠償とは別のものです。
3 正しい。
民法第419条第1項によれば、「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」とあります。したがって、選択肢は正しいです。
4 正しい。
民法第145条によれば、「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」とあります。つまり、当事者が援用することにより確定的に生じるものです。したがって、選択肢は正しいです。
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