中小企業診断士の過去問
平成27年度(2015年)
経営法務 問25

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 平成27年度(2015年) 問25 (訂正依頼・報告はこちら)

会社の社債に関する記述として最も適切なものはどれか。
  • 株主が違法な社債の発行の事前差止めを求めて訴えることはできず、専ら事後的に取締役・執行役の損害賠償責任を追及するしか是正手段がない。
  • 総額1億円未満の少人数私募債については有価証券届出書の提出等の開示義務がなく、届出がないこと等について投資家への告知義務もない。
  • 取締役会設置会社においては、社債を発行するに当たり、募集事項の決定を代表取締役に委任することができない。
  • 振替社債については、社債券が発行されていないので、投資家保護のための開示規制が適用される有価証券に該当しない。

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この過去問の解説 (2件)

01

1.✕:株主に差止請求権は認められているため、事後的な是正手段しかないとする本肢は不適切です。
2.◯:総額1億円未満の少人数私募債は、有価証券届出書等の提出義務はありません。
また、投資家への告知義務もありません。
3.✕:法務省令で定める事項以外については、代表取締役に委ねることが認められています。
4.✕:ペーパーレスであっても、有価証券であることに変わりはなく、金融商品取引法の開示規制が適用されます。

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02

正解は「総額1億円未満の少人数私募債については有価証券届出書の提出等の開示義務がなく、届出がないこと等について投資家への告知義務もない。」です。

【基礎知識】

資金調達の中でも社債の問題です。一つ一つの選択肢を評価するには幅広い知識が問われていますが、基本的な事項ですのできっちりと押さえましょう。

・資金調達手法の整理

① エクイティファイナンス(資本性の調達)

 例:新株発行 等

② デットファイナンス(負債性の調達)

 例:銀行からの借入金、社債 等

 社債は中でも返済方法等を自社で決めて募集でき、市場での評価が高ければコストも低く調達できる方法です。

・社債の種類

① 公募債:不特定多数から募集、金額制限なし→大規模な資金調達に使われる→そのため、有価証券報告書の提出義務、決算時の開示義務、格付けの取得などの義務あり(投資家保護の視点)。

② プロ私募債:銀行などの会社(適格期間投資家といいます)から募集、金額制限なし→資金を出す側もプロのため、義務はあまりない。

③ 少人数私募債:50名未満の縁故者等、1億円未満、手続きが簡素化されている→本当に内輪の知っている人同士のお金の融通のようなイメージのため、規制がほぼないのが特徴。

ここまでの基礎知識で回答を絞り込むことが可能です。

・社債発行手続き

 基本的に業務執行の話ですので、取締役会決議事項(借金は基本必要!)です。

取締役会非設置会社の場合:取締役過半数の合意もしくは株主総会の決議が必要

取締役会設置会社では細目について代表取締役に一任することも可能です(一定の項目は取締役会で決定する必要があります)。

選択肢1. 株主が違法な社債の発行の事前差止めを求めて訴えることはできず、専ら事後的に取締役・執行役の損害賠償責任を追及するしか是正手段がない。

誤り。株主には一定の差し止め請求権が認められています。項目について詳細が定められていませんが、会社に損害を与えることが見込まれる場合は権利を行使できます。

選択肢2. 総額1億円未満の少人数私募債については有価証券届出書の提出等の開示義務がなく、届出がないこと等について投資家への告知義務もない。

正しい。少人数私募債のメリットはその手続きの簡便性です。義務はありません。

選択肢3. 取締役会設置会社においては、社債を発行するに当たり、募集事項の決定を代表取締役に委任することができない。

誤り。一定の項目以外を代表取締役に一任することができます。

選択肢4. 振替社債については、社債券が発行されていないので、投資家保護のための開示規制が適用される有価証券に該当しない。

誤り。振替社債とは券面を発行しないペーパーレスの社債です。管理、取引等の簡素化がメリットです。それ以外は基本的に社債と同じですので、その他は同様となります。

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