中小企業診断士 過去問
令和元年度(2019年)
問57 (企業経営理論 問7)
問題文
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問題
中小企業診断士試験 令和元年度(2019年) 問57(企業経営理論 問7) (訂正依頼・報告はこちら)
- 経験効果に基づくコスト優位を享受するためには、競合企業を上回る市場シェアを継続的に獲得することが、有効な手段となり得る。
- 経験効果は、ある一時点での規模の大きさから生じるコスト優位として定義されることから、経験効果が生じる基本的なメカニズムは、規模の経済と同じである。
- 生産工程を保有しないサービス業では、経験効果は競争優位の源泉にならない。
- 中小企業では、企業規模が小さいことから、規模の経済に基づく競争優位を求めることはできない。
- 同一企業が複数の事業を展開することから生じる「シナジー効果」は、規模の経済を構成する中心的な要素の1つである。
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この過去問の解説 (3件)
01
記述の通りです。競合企業を上回る市場シェアを継続的に獲得することで、累積生産量が多くなるため、経験効果に基づくコスト優位を享受できる可能性が上がります。
項番2:不適切です。
経験効果は、ある一時点での規模の大きさから生じるコスト優位ではありません。企業の累積生産量に応じて得られる経験によるコスト優位効果を指します。
項番3:不適切です。
サービス業であっても経験効果が競争優位の源泉になることはありえます。例えば理髪店では、経験によって1日に対応できる顧客数が増えれば、コスト優位を実現することができます。
項番4:不適切です。
中小企業であっても、規模の経済を求めることは可能です。
項番5:不適切です。
シナジー効果は、範囲の経済を構成する中心的な要素の1つです。
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02
経験効果と規模の経済に関する問題です。
経験効果とは、製品の生産において、作業手順の習熟などによって累積生産量が増えるとトータルコストが低減する事象のことをいいます。
以上を踏まえて選択肢の正誤を判定します。
正解です。競合企業を上回る市場シェアを獲得することで、累積生産量を伸ばし、それによってトータルコストを低減できます。
経験効果は累積生産量の増加によって得られる効果ですので、ある一時点の規模の大きさで評価される規模の経済とはメカニズムが異なります。したがって誤りです。
サービス業でも作業の習熟による経験効果はあり得ますので、誤りです。
企業規模が小さくても生産規模が一定以上の場合は規模の経済による競争優位が期待できますので誤りです。
シナジー効果は規模の経済ではなく、範囲の経済が期待できる効果ですので、誤りです。
経験効果と規模の経済に関する問題でした。それぞれの用語の意味とそれぞれが表す内容を正確に理解しておきましょう。
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03
経験効果や規模の経済に関する問題です。両者はよく比較対象として挙げられるため、違いをきちんと理解しておきましょう。
・経験効果
製品の累積生産量が増加すると従業員の習熟度が向上して作業工程や設備の改善が進み、単位あたりのコストが下がる現象です。経験曲線として示されます。
・規模の経済
生産規模を拡大することで単位あたりのコストが低下する現象です。
単位あたりのコストが下がるのは、経験効果は「累積生産量の増加」、規模の経済は「生産規模の増加」という違いがあります。
冒頭の解説より、経験効果は「累積生産量の増加」により単位あたりのコストが下がる現象(コスト優位を享受できる)であるため、競合企業を上回る市場シェアを継続的に獲得することが有効な手段となり得ます。
したがって、正解の選択肢となります。
ある一時点での規模の大きさは「規模の経済」の要件です。
また、冒頭の解説にあるように経験効果が生じる基本的なメカニズムは規模の経済と異なるため、不適切な選択肢です。
冒頭の解説より、経験効果は「累積生産量の増加(※本選択肢では「累積経験値の増加」と読み換えると分かりやすいです)」のため、同じサービスを繰り返し提供することで品質レベルの向上、提供スピードの短縮、ミスの減少といった効果が考えられます。
したがって、生産工程を保有しないサービス業であっても経験効果は競争優位の源泉になるため不適切な選択肢です。
中小企業は企業規模が小さいですが、規模の経済に基づく競争優位を求めることはできないとまでは言い切れないため不適切な選択肢です。
※規模の経済に基づく競争優位を「求めにくい」「求めることは難しい」という記述であれば、正解と判断して支障ありません。
シナジーとは、複数の要素がお互いに作用し合って効果や機能を高めることをいいます。1+1=2ではなく、1+1が5や10になるということです。
具体例としては、鉄道会社が沿線で住宅地開発を行うことで電車を利用する住民が増加します(運賃収入の増加)。
ターミナル駅に百貨店を設置すれば、沿線住民の買い物利用が増加します(百貨店収入の増加)。
このように、本業の鉄道事業に加えて住宅事業と百貨店事業の効果も高まります。
本問と直接関係ありませんが、住宅増加による不動産価値の上昇により地元自治体が受ける恩恵(住民税増加など)や、百貨店収入の増加による各種の税収増加やGDPの拡大による日本経済への波及効果なども考えられるため、1+1=2どころの話ではないことがお分かりいただけると思います。
以上から、「シナジー効果」は規模の経済を構成する中心的な要素の1つであるわけではなく不適切な選択肢です。
【補足】
本問は頻出論点ですが、特にシナジー効果を絡めた問題は理解しづらいためか狙われやすいです。
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